【コラム】

編集者と考える一歩先を行くビジネス書籍の選び方

1 世界の最前線を知るには「翻訳書」を読め!

 
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世界では何が注目され、何が動き始めているのだろうか――。グローバルなビジネスシーンのトレンドを、いち早く知る方法のひとつが「翻訳書」だと語るのは、NHK出版の編集者、松島倫明氏だ。年間10冊ほどの海外書籍を手がけ、数多くのベストセラーを世に送り出す松島氏に、ビジネスプロデューサー・書評ブロガーの徳本昌大が「今、ビジネスパーソンが読むべき翻訳書」について聞いた。

NHK出版 放送・学芸図書編集部 編集長の松島倫明氏。〈インターネット〉の次に来るもの / FREE / SHARE / シンギュラリティは近い、など多くの海外書籍を手がけてきた

話題の民泊サービス「Airbnb」をいち早く紹介

冒頭に話題になったのは、私たちにはどんな未来が待っているのか、12の項目から解き明かしていくケヴィン・ケリー著『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』(NHK出版 / 2016年7月発売)だった。「これさえ読めば過去の10年が分かり、今後30年の未来も見えてくると評価する人もいる」と松島氏。いま日本国内には、30年先の未来を見通せる人がどのくらいいるだろうか。見方を変えれば、海外はそれほど進んでいるということらしい。

海外書籍の先進性を語る松島氏。聞き手は、ビジネスプロデューサー・書評ブロガーの徳本昌大氏

海外の先進性を示す好例として、「出版するのが早すぎることもよくあります」と苦笑いをし、次のように語る。「日本でシェアリングエコノミーが大手メディアに取り上げられるようになったのは、この数年のことです。NHK出版では今から7年前になる2010年にレイチェル・ボッツマン他著『シェア 〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略』を出版しましたが、この本の冒頭で紹介しているのが実はAirbnbなんです。その当時は、知らない人に部屋なんか貸すわけない、なんてことも言われました。それがメインストリームになるかどうか、誰にも分からなかったんですね」。

シェアリングエコノミーとは、モノやサービスを他人と共有する新しい経済の仕組み。Airbnbは現地の人が空き部屋を貸すサービスで、海外で導入事例が拡大している。日本でも最近になり認知が広がってきた。

「海外での先進事例の解説を翻訳書に期待する読者の目を意識しています。だから編集者として、日本には早すぎる、もしかしたら根付かないままかも知れない、でも日本にとって大切だと思える、そういったコンテクストをどうやって選び、紹介していくかを常に考えています」と松島氏は語る。

海外の出版社やエージェントとミーティングを重ね、どんな企画が動き出しているかを把握したうえで、読者が次に読むべきタイトルを探し出す。「海外で何千というライツリストを目にすると、そこから未来が見えてくる」と松島氏

翻訳書は世界中のベストオブベスト

翻訳書は、長く"自分の思考の柱"になるようなものが多いそうだ。その理由について、松島氏は次のように説明する。

「ハウツーだけで終わらず、そこに至るバックグラウンド、背景にある哲学を、その歴史から説き起こして丁寧に書いてあるものが多い。だから読んでいるうちに血肉になり、自分自身の世界観を作り上げる助けとなってくれる。日本人の書き手よりスケールが大きいテーマが多いのも特徴と言えそうです」。

著者が書籍の中で引用している本を調べていくことで、また新しい本に出会う。そうして読書をつなげていくのも翻訳書の楽しみ方のひとつだ。

翻訳書の魅力について「単純に言って、世界にはものすごい数の本が出ている。残念ながら、私たち日本人はそのほとんどにアクセスできないでいるが、幸いなことに、そのうちのひと握りの本は翻訳書となって日本語で出版される。だから翻訳書として選ばれて日本にやって来る本は、世界中のベストオブベストと言える。イチバン良い物を、"ハイっ"と手渡されているようなものなんですね」と松島氏は語る。

国内市場とは比べられないほど大きなパイの中から最高のものを選んで翻訳している海外の翻訳書を読めば、高密度で先進的な情報が得られるということだ。忙しくて読書の時間が確保できないビジネスパーソンにも翻訳書は最適ではないだろうか。

人と違う示唆を得るために

ネットやこうしたオンライン記事を読むことで、人間の脳は実際に変化しており、現代人は細切れのテキストや情報をランダムに受け取るのがうまくなった一方で、ロングフォームの文章である本を読むという行為が、ますます苦手になっていると言われる。「だからこそチャンスなんです」と松島氏は言う。

「働き方改革なんて言われますが、これからの仕事はますますクリエイティビティや独創性といったものが求められる。それは人と同じものや、読み捨てできるようなものばかりを読んでいても得られません」。噛みごたえたっぷりの翻訳書を読むことはまさに、人とは違った視点を自分のモノにしていける。冒頭で紹介した『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』も、「これを読めばあと10年は発想のコアとして使える」と松島氏は言う。興味のある方は、手にとってみると良いだろう。

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第1回 世界の最前線を知るには「翻訳書」を読め!

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