【コラム】

日本のミサイル防衛体制の実体を探る

2 日本のミサイル防衛体制(2)迎撃編

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日本におけるミサイル防衛の体制をさまざまな観点から探る本連載。前回は、弾道ミサイルの発射を探知して、その後の追尾によって飛翔経路と着弾地点を予測するところまでだった。今回は、その後の迎撃のフェーズについて解説する。

迎撃は多層防禦が基本

弾道ミサイル防衛は多層防禦(layered defense)が基本である。なぜかというと、相手は飛翔速度が速く、サイズが小さいからだ。つまり、一発で必ず叩き落とせるという保証はないので、複数の段階(フェーズ)に分けて、次々に迎え撃つようにしている。

多層というが、正確にいうと以下の三層である。

  • ブースト段階(boost phase) : 発射の直後、上昇中
  • ミッドコース段階(midcourse phase) : 弾道飛行の頂点とその前後
  • 終末段階(terminal phase) : 目標に着弾する直前

前回に取り上げたC2BMC(Command, Control, Battle Management and Communication)システムが、このすべてを一元的に統括する。だから、例えば「ミッドコース段階で撃ち漏らしが出た」となれば、その次の終末段階で迎撃を担当する資産に対して迎撃の指示を飛ばす。

それぞれの層で利用可能な迎撃手段はいろいろあるが、日本とアメリカが関わるものに限定して取り上げると、こうなる。

ブースト段階(boost phase)

なし。発射地点(つまり敵地)に近いところに展開しなければならないという運用上の問題と、上昇・加速するミサイルを追いかけなければならないという技術上の問題があるため。

ミッドコース段階(midcourse phase)

まず、洋上ではイージス艦とSM-3ミサイルの組み合わせ。陸上では、アラスカとカリフォルニアに配備しているGBI(Ground Based Interceptor)があるが、これは位置からいってアメリカ本土防衛専用である。

終末段階(terminal phase)

THAAD(Terminal High-Altitude Area Defense)とPAC-3(Patriot Advanced Capability 3)。

日本の場合、西方の洋上にイージス艦を展開させてミッドコース防衛を担当させた上で、それで撃ち漏らした場合の最後の盾としてPAC-3がある。PAC-3でカバーできる範囲は半径20km程度と言われているが、改良型のPAC-3 MSE(Missile Segment Enhancement)の導入が決まっており、これが加わるとカバー範囲の拡大と破壊力の強化を見込める。

イージス艦の陣容

海上自衛隊には現在、イージスBMD改修を実施した「こんごう」型護衛艦が4隻あり、いずれもSM-3ブロックIAを装備している。

さらに、「あたご」型護衛艦が2隻あり、これらはイージスBMD改修を進める途上にある。こちらは改修を終えると「こんごう」型よりも新しい最新のイージス戦闘システムを持つことになり、日米共同開発中の新型ミサイル・SM-3ブロックIIAの運用が可能になる。

また、建造計画が進んでいるイージス護衛艦2隻も、当初からSM-3ブロックIIAに対応できる最新システムで登場する。

イージス護衛艦「あたご」は2017年秋の時点で、戦闘システムの更新とイージスBMD対応のための改修を実施中

SM-3はミッドコース迎撃用のミサイルで、赤外線センサーによって目標を捕捉して、それと正面衝突するコースに乗せるように軌道を調整して、最後は直撃によって破壊する。

ブロックIよりブロックIIのほうがロケット・モーターを大型化している分だけ運動能力が向上しており、限定的なICBM迎撃機能を持つとされる。

射程が長い弾道ミサイルほど高く上がり、速く飛び、しかも目標が小さいため(下の段を切り離してしまうから)、迎撃は難しい。その分だけ高性能の迎撃ミサイルを必要とする。

このほか、米海軍は横須賀基地に、BMD対応のイージス艦を配備している。その陣容は以下の通りで、そのうち「シャイロー」は、指揮下のイージス艦に対する目標割り当ての機能を備える、特に高機能のBMD対応イージス艦である。

  • 巡洋艦シャイロー(CG-67)
  • 巡洋艦アンティータム(CG-54)
  • 駆逐艦バリー(DDG-52)
  • 駆逐艦カーティス・ウィルバー(DDG-54)
  • 駆逐艦ステザム(DDG-63)
  • 駆逐艦ベンフォールド(DDG-65)
  • 駆逐艦マスティン(DDG-89) ※追尾能力のみ

このほか、駆逐艦のフィッツジェラルド(DDG-62)とジョンS. マケイン(DDG-56)もいたが、いずれも商船と衝突する事故に遭って戦列を離れている。

イージス・アショアとは?

最近、何かと話題になっている「イージス・アショア」については、以前に「軍事とIT」で書いた。詳細はそちらを参照していただくとして。

もしも日本でイージス・アショアを導入することになれば、最新のSM-3ブロックIIA対応型になるだろう。SM-3ブロックIでは、日本全土をカバーするために2~3隻のBMD対応イージス艦が必要になるとされる。一方、SM-3ブロックIIでは、1~2隻のイージス艦があればよいとされる。

すると、イージス・アショアの所要も2カ所ということになる。日本に向かう弾道ミサイルは西~北にかけての向きから飛んでくるだろうから、中部地方と九州の日本海側に1つずつ据え付ければ良さそうだ。

イージス・アショアを配備するとイージス艦の運用に余裕ができるので、イージス・アショアのカバー範囲外に派遣するとか、イージス・アショアに加勢させるとかいった柔軟な運用が可能になる。

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インデックス

連載目次
第3回 日本のミサイル防衛体制(3)PAC-3とTHAAD編
第2回 日本のミサイル防衛体制(2)迎撃編
第1回 日本のミサイル防衛体制(1)探知・追尾編
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