今月、北京にある関連会社に出張に行ってきた。現地採用の中国人社員のうち、日本側とコンタクトする必要のある人は日本語が話せたので、言語の問題はなかった。これまで欧米への出張時に経験した連戦連敗の歴史のような、英語にまつわるストレスとは無縁の3日間だった。

米国企業に勤める米国人が、日本の現地法人に出張すると、きっとこんな感じなのだろう。現地の人、つまり日本人は皆、一生懸命に英語を話してくれる。

中国人の彼らが日本語を上手に話せるようになったという点に注目した私は、その上達のコツは何だろうと思い、どうやって日本語の勉強したのか聞いたら、

「一生懸命勉強しました。大学の先生も厳しかったし、日本人の留学生とも話をしました」

とのこと。その人は大学の日本語学科で日本語を学んだそうだが、日本への留学経験はない。はたして日本の大学で英語を勉強した人のどれだけか英語で仕事ができるレベルになっているだろうか……と北京ダックを食べならが思った次第である(ちなみに中国では北京ダックの肉も食べるのだ)。

私達は英語学習を果たして「一生懸命」やっているだろうか。

巷でよく見かける英語学習についての学習者の質問の多くに「英語が簡単に上達する学習法を教えてください」「忙しくて英語学習の時間がありません。短期間で上達する方法はないですか?」「英語学習のモチベーションを維持する方法はないですか?」など、甘いとしか言いようのない戯言のなんと多いことか。

まあ、わからないわけではない。私自身、そういう魔法のような教材や学習法、モチベーションの維持方法があるかもしれないと思いつつ、いろいろな方法を試してきたのだから。

しかし、もはや外国語の習得が簡単ではないのは常識であり、そこから目を背けてはいけない。もし、モチベーションが続かないのなら、それはあなたにとって実は英語は必要ではないかもしれないので、無理に勉強しなくてもよいのでは?とも思う。

今回の北京出張を終えて今思うことは、英語学習の方法論はいろいろあるにせよ、何のために英語を学習しているのかという目的の明確化が、モチベーションの維持に有効に働くのではないか、ということだ。以前、本コラムで紹介したように、グーグルの村上名誉会長も「英語を使うどのような機会があるかを想像し、そのための準備をしなさい」とおっしゃっている。

そのような英語を使う機会をどれだけリアリティを持って想像し、感じることができるか、これが英語学習のモチベーションのエンジンとなるのだ。

話は変わって、スモールトーク(small talk)という言葉をご存知だろうか。世間話という意味だが、日本人は英語でスモールトークをやるのは苦手だ。仕事の英語は何とかなるにしても、仕事の後に食事を一緒にとる時は要注意だ。ディナーのときは仕事の話ではなく、人と人のつながりを深めるための会話をすべきなのだ。

今回も、中国人と食事の際にスモールトークをする機会があった。その人は日本語が話せず、英語での会話となった。その人の出身地が昔、項羽が処刑された街の近く、ということが漢字の筆談を交えながらわかったのだが、私は項羽を名前だけしか知らなかったので盛り上がらなかった(中国人が大好きな『三国志』についてもほとんど知らない)。逆に、私の苗字の「本多」について、「日本の戦国武将にそういう名前の人(徳川家の家臣)がいましたね」とゲームで得た知識を披露するマニアックな中国人もいて驚いた。

ということで、世界の歴史を知っておくことはスモールトークの良い準備となるかもしれない。それは仕事のことしか話すことのできない仕事人間から、話題の豊富な人間味豊かな人へとあなたを変えてくれる一助となるだろう。

そこでお勧めしたい本が、『世界の歴史の知識と英語を身につける(CD BOOK)』だ。

この本は世界史と英語を同時に学べてしまうという優れもの。

私は高校で日本史だったので、世界史がそもそもわかっていない。世界のニュースを見ても、背景知識としての歴史が欠けているので理解できないことが多い。

たとえば、イスラエルはなぜあれほどもめているのかがわかっていないので、いつも戦争をしている、というイメージしか持てない。もっともイスラエル問題はスモールトークには不適切だろう。

本書は、ヨーロッパ、中東、アメリカ、アジア、アフリカ、オセアニアの歴史と文化をカバーしているので、主要な世界史の大部分をカバーできる。

また、この本は各項のタイトルが読む気を誘う。たとえば、

  • 「民主主義の意義」を理解するには、「古代ギリシャ」を知らねばならぬ!
  • 「EU」を真に理解するには、「フランク王国」を知らねばならぬ!
  • 現代のヨーロッパの秩序を真に理解するには、第一次世界大戦を知らねばならぬ!

どうだろう、読みたくなってきただろうか?

付録の「絶対覚えておきたい! 世界の固有名詞600」はカタカナ発音との違いを発見できるし、付録CDに収録されている世界遺産の旅は、その土地土地に興味を抱かせてくれる。

本文のところどころに"英語でこう言う"という説明がちりばめられているので、世界の歴史と英語を学びたい方におすすめである。

スモールトーク対策の一助としても有効な本であるので一読をお勧めしたい。

空き時間に北京の西北郊外にある世界遺産の頤和園(いわえん)に行った。ここは歴代皇帝の夏の離宮で、中心には広大な人口池と、掘った土で作った山がある。万里の長城をほうふつとさせるスケールだ

頤和園は中国の人にとっても観光地のようで、多くの観光客がいた。グループ旅行の集団は迷子にならないように同じ色の帽子をかぶっている。赤や黄色の帽子の集団があちこちに見られた

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる