前回は、smart.fmが忘却曲線理論に従って自動的に復習をさせてくれる機能を持った優れものだという話をした。今回はもう少し具体的にsmart.fmの中身を紹介しよう。

smart.fmには3つのアプリケーション -「iKnow!」「BrainSpeed」「Dictation」があるが、iKnow!を日常的に使い、語彙を覚えていくとともに、BrainSpeedというフラッシュカードのようなゲームをたまにやるのがよいと思う。Dictationは個人的には難しすぎるのでおすすめはしない。

で、iKnow!であるが、英語から日本語、または、その逆をマルチプルチョイスで選択させたり、音声からスペルを書かせたり…といった感じで単語を覚えていく。スペルまで書かせるのであやふやな記憶ではパスできない。ただし設定により多少のスペルミスは許容させることができる。私はこの設定にしている。実際に英語を書くときはスペルチェック機能を使えばいいので、厳密には覚える必要はないという理由だ。

みなさんがiKnow!を始めたばかりのうちは、1日に最大30個程度の単語を学習することになる。30個の学習に20分から30分くらいはかかる。

3日目くらいから、前に学んだ単語の復習が加わってくる。覚えていない場合は素直に「わからない」を選択して、最初から覚えなおそう。「わからない」を選択した場合、iKnow!が復習の機会を多くしてくれる。

せっかちな人は、この復習をわずらわしいと思うだろう。実際面倒なのだ。もう覚えてるって!! と言いたくなる。実は覚えている単語も何回も復習として出てくる。

さらに、iKonw!を何日もやっていくと、徐々に新しい単語は減り、かわりに復習の単語が増えてくる。そのうち復習の単語のみの日々が続くようになる。

ここが忘却曲線の真骨頂だ。忘却曲線理論では、忘れかけたころに復習すると記憶の定着がよい。だから、「またこの単語かーーー」と思うのは当然なのだ。知っている単語を何度も復習することにより記憶が確かなものになる。ここはiKnow!を信じて復習に取り組もう。

BrainSpeedについて触れると、フラッシュカードのゲームのようなもので、iKnow!で学んだ単語を脊髄反射的に答えていくゲームだ。幼児教育でフラッシュカードが使われているのを見たことがあるだろう。無心になって遊ぶうちに脊髄に記憶されるに違いない。

BrainSpeedは息抜きするのにちょうどいいゲーム。英語マニアは英語学習の息抜きを英語ゲームでやるのだ!

iKnow!で学習する際の新規単語と復習単語の割合の変化: あくまで筆者のイメージ図です。徐々に復習の単語が多くなり、いつの間にか復習の単語しか学習しなくなるということを示しています

これまでSir Ken Robinson「学校教育と創造性」を生の英語ということでお勧めしてきたが、これは中級者向けなので、smart.fmのコンテンツから読者のレベルに応じたおすすめコンテンツを紹介しよう。

レベル コンテンツ 筆者のコメント
完全な初心者向け Core 2000: 基礎英語シリーズ 中学レベルの基本的な2,000表現を覚えよう
TOEIC 650点以下向け まずは! TOEIC基礎シリーズ 800の表現をマスターしよう
TOEIC 650点以上向け さらに!TOEIC上級シリーズ さらに650表現をマスターしよう。ここまで行けばTOEICは基礎固めは十分
英語上級者向け Erudite Vocabulary 私も知らない単語ばかり…
演説から学ぶ 歴史上のスピーチを学ぶ 今年、オバマ大統領の演説は大流行だった
映画から学ぶ 映画で学ぶ英語 映画のトレーラーや出演者のインタビューが題材

これらは、ほんの一部であり、現在、全部で539個のリストがあるようだ。これらの多くはユーザが作成し、公開しているものだ。

こういうのから好みのものを選んで学習してもよい。ここで、完全に知っている単語は学習リストから除外できるので、そうしよう。知っている単語の学習は無意味だし、時間の無駄だ。

一番のおすすめは、皆さんが今、何か他の教材で英語を勉強しているならば、自分用のプライベートなリストをsmart.fmで作ることだ。知らない単語を紙のノートにまずは書いていき、ある程度たまったらsmart.fmに転記していくのがよいだろう。紙の単語帳よりも効率的に記憶できるに違いない。

smart.fmには、携帯電話で学習する機能や、Podcastの機能もある。さらに、OpenIDも利用可能だ。つまり、mixiやGoogleのIDを使ってユーザ登録ができる。OpenIDに興味のある人は試してみるいい機会だ。smart.fmはAPIも公開しており、自由にソフトを作れるようになっているテクノロジー志向のサイトだ。今後の発展が期待できるので目が離せない。

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる