今回の選書

リーダーの使命とは何か(フランシス・ヘッセルバイン 著 / 谷川漣 訳) 海と月社

リーダーの使命とは何か(フランシス・ヘッセルバイン 著 / 谷川漣 訳) 海と月社

選書サマリー

私たちが「今いる場所」から「本当にいるべき場所」に向かうには、自分なりの見方、自分なりの言葉で、リーダーシップを定義しなければならない。すべては、そこから始まる。

私は、かつて全米ガールスカウト連盟のCEOを務めた。その時から、長い時間をかけて、苦心して自分を見つめ直し、ようやく、自分なりにリーダーシップを定義することができた。

リーダーシップとは、つまり「どうやるべきか」ではなく「どうあるべきか」の問題だ。私は、これまで多くの場所で講演を行ってきたが、私のリーダーシップの定義は一貫して変わらない。

ことあるごとにテストは繰り返した。その結果、わかったことは、業績や結果を決定づけるのは、リーダーの資質であり、人間性だということだ。

世界中に、リーダーは「どうやるべきか」が溢れている。だがそれを寄せ集めても役立たない。むしろ、リーダーが「どうあるべきか」を決め、行動やコミュニケーションでそれを体現することが重要だ。

同時に、あらゆる組織のあらゆるレベルにリーダーが必要だ。組織全体に、人間性のあるリーダーがいるようになれば、未来の組織やコミュニティを引っ張ってくれるようになるはずだ。

21世紀のリーダーは「どうやるべきか」を学んだ人ではない。そんな小手先のノウハウなど、変化の波にたちまち飲み込まれる。明日のリーダーは「どうあるべきか」に専念する人だ。

すなわち、資質、人間性、価値観、原則などを、どのように高めるかを考え、努力する人だ。これからのリーダーは「自分が掲げる原則と組織の活動とが一致しているかどうか」を問われるのだ。

「どうあるべきか」のリーダーは、組織の最も大切な財産が、人間だと理解している。そして言葉や行動で、あるいは人と人との関係で、そのことを示そうとする。

彼らは、タテ型の階層を禁じ、管理職や従業員と共に新しい組織構造を築く。古い階層から、より柔軟で流動的な同心円状のマネジメント体制に移行し、人々のエネルギーと精神を解き放つ。

また「どうあるべきか」のリーダーは、分散した多様なリーダーシップを築く。リーダーを同心円のあちこちに配し、責任を分担することで組織のメンバーの潜在力を花開かせるのだ。

そして、従業員、取締役、スタッフの構成に、できるだけ地域社会や周辺の環境を反映させる。それは、顧客や従業員がこの新しい組織を見た時「私も仲間だ」と感じられるようにするためだ。

「どうあるべきか」のリーダーは、個人と組織の両方を重んじる。個人と組織の一体感がもてるような、魅力的な組織ビジョンを提示し、ミッションのもとに人々を結集させる。

これにより、困難にも負けない集団ができる。ミッションのもとで団結した職場は強い。従業員もチームも、仕事の中で自分自身を表現し、任務を超えたやりがいを見つけるようになる。

一貫したミッションに結集すれば、組織のあちこちに分散しているリーダーたちも、明確な方向性と、仕事の意義を見いだすようになるはずだ。

リーダーは、顧客の声に耳を傾ける。そして「彼らが価値をおいているものは何か」を知ろうとするべきだ。それこそが、今後ますます重要になるからだ。

また、あらゆるやり取りの中で、メンバーの価値と尊厳を態度で示すべきだ。組織のメンバーの人生はかけがえのないものだ。その実現のために、職場は計り知れない価値があることを示すべきだ。

さらに、リーダーは組織の外にも目を向け、健全なコミュニティを築くことにも精力を傾けるべきだ。コミュニティが衰えれば、企業は、存在すらできない。それを理解し、行動を起こすべきなのだ。

選書コメント

新しい時代のリーダーとは、どんな人物であるべきなのか?稀代のリーダーの一人として、世界的に知られる著者が分かり易く教えてくれます。本物のリーダー論です。

著者は、全米ガールスカウト連盟のCEOを務めた後、ドラッカー財団のトップを10年務めた人です。ビジネス雑誌やビジネスカリスマたちが「稀代のリーダー」と激賞しています。

たとえば、雑誌ではビジネスウィーク誌では表紙を飾り、ドラッカーやピーター・センゲなどが称賛しています。本書の序文も、あの『ビジョナリー・カンパニー』のジム・コリンズが寄せています。

これからの卓越したリーダーの姿を、礼儀やマナー、男女の違い、社会貢献の仕方などから描きます。さらに、リーダーの育成や交代の方法についても教えます。さすがに、含蓄が深いです。

といっても構える必要はありません。本文は、エッセイ風にまとめられており、拾い読みでも楽しめます。もちろん体系的に構成されていますので、じっくり読めばまとまったノウハウが学べます。

リーダーシップは、今後ますます重要になります。個人のキャリアを考えても重要です。リーダーを務めてこそ、仕事のやりがいが得られるものだからです。

ただ、これまでのようなリーダーでは、力が発揮できなくなりつつあります。お手本がないのです。本書で、新しい組織とリーダーのあり方を学ぶべきです。それを、どんどん職場で発揮するべきです。

経営者や起業したい人はもちろん、職場でチームの取りまとめなど、リーダーシップの発揮が求められている人などに、ぜひ読んでいただきたいと思います。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー