今回の選書

一緒にいて楽しい人・疲れる人(本郷陽二) PHP研究所

一緒にいて楽しい人・疲れる人(本郷陽二) PHP研究所

選書サマリー

「一緒にいて楽しい人」は、常に自分の反省点をチェックし、いいと思われる点は伸ばそうと努力する人だ。そういう人は、他人に対しても思いやりを持って接し、相手の気持ちで考えようとする。

だから、結果的に多くの人から大切にされる。ところが「一緒にいて疲れる人」は違う。自分が人と違う意見になった時は「相手が間違っているからだ」と考える。

そこに、常識が入り込む余地はない。なぜなら、彼らは人から意見されることを嫌うからだ。何より、自分こそが絶対に正しいと思い込んでいるからだ。

そのため、一緒にいる人は、彼らに振り回されたり、常識では考えられないような、彼らなりの正義を振りかざされてしまう。その結果、彼らといることに疲れてしまうのだ。

そうした「困った人」や「残念な人」を他人事だと思うのは早計だ。なぜなら、誰の中にも、ちょっとだけ困った部分や、残念な人の要素は必ずあるはずだからだ。

ただ、それが表に出てこないのは、理性でカバーしたり、良心で抑え込んでいるからだ。

ところが、相手が家族だったり、親しい友だちだったり、または自分が精神的に弱っている時などは、なかなか抑えが利かず、わがままで、自分勝手な一面が顔を出しがちだ。

また、自分では正しいと思い込んでいることが、世間の常識とは一致しない場合もある。

「一緒にいて楽しい人になる」というと、特別なものを持っていなければならないような気がするが、実際は違う。ほんのちょっと、気配りができれば、誰もが「一緒にいて楽しい人」になれるのだ。

「おめでとう」という言葉は、結婚や出産、栄転などの華々しいシーンに限らず、日常的にも使える。

たとえば、大量の伝票処理を終えた同僚に「終わったんですね、おめでとうございます! お疲れさま」と言ってみてはどうだろう。

同僚からすれば、仕事のねぎらいだけではなく、喜びを共有する気持ちの「おめでとう」と声をかけてくれたことがうれしい。あなたを「いい人だな」「感じがいいな」と思うはずだ。

そもそも「おめでとう」の元になる「めでたい」は、喜びに値するさま、物事がうまくいって喜ばしい様子という意味を持つ。だから、フォーマルな祝福シーン限定とする必要はないのだ。

「おめでとう」は誰でも簡単に使えるほめ言葉だ。笑顔とともに相手に届けられれば「一緒にいて楽しい人」と思われるはずだ。

誰でも、話す相手によって言葉の選び方を変えるものだ。お客さまや年上の人には敬語を使うし、友達や家族なら普段着の話し方になる。その使い分けで、話し手の印象は大きく変わる。

たとえば、あるカップルがレストランに入った。ところが、彼女のオーダーした料理が30分も待たされた上、別のものが出てきたそうだ。

彼女は、店員にきつい口調で文句を言った。確かに待たされた上に間違えられたのだ。腹が立つ。しかし、相手は母親ぐらいの年齢だ。彼氏には、その態度が傲慢そのものに移り、結局交際をやめたという。

彼女のようなタイプの人は、自分に直接関わる人は大切に扱いながら、それ以外の人に心配りする意識がない。特に、自分が客の立場なら、何をしても許されるという態度があからさまだ。

人間は、社会の中で、多くの人と関わりあって生きている。今は自分が客の立場でも、状況が変われば簡単に逆転する。

だからこそ、どちらが上だとか、下だとかという考え方はよくない。どんな相手とでも、分け隔てなく、相手を尊重する気持ちで接することだ。そういう人が「一緒にいて楽しい人」なのだ。

選書コメント

人間関係の本です。ちょっとした気配りで、人付き合いを円滑にし、周囲から慕われる人間になることを目指します。そのためのヒントを紹介します。

世の中には、友達が多い人がいます。反対に、誰もができれば一緒にいたくないと感じている人もいます。たとえば「でも」が多い人、自分の話しばかりする人、ネガティブなことばかりいう人です。

怖いのは、本人が気づいていないことです。つまり、もしかしたら、自分も疲れる人になっている可能性があるのです。本書には、そんな自分では気づきにくいポイントが、たくさん書いてあります。

本書は、大きく5つの章に分かれています。はじめに「好かれる一言、嫌われる一言」などを紹介します。たとえば「疲れた」と口癖のようにいう人がいます。そういう人は、相手も疲れさせています。

ついで、職場での注意点、食事でのマナー、友達の増やし方など、シチューエーションごとのヒントを紹介します。

もちろん「こうすれば嫌われる」的なことだけが書いてあるわけではありません。「こうすればいい」など、お勧めの行動もたくさん書かれています。特に最終章では「一緒にいたい」と思われるための行動をレクチャーします。

と言っても、体系的に書かれた本ではありません。思うところを、エッセイ風に、短くまとめたヒント集のような体裁です。気になるところから読んでも、十分ヒントが得られます。

豊かな人間関係が築ければ、必ず人生は豊かになります。本書のいくつか実践するだけで、間違いなく周囲から「感じがいい」と、好感をもたれるはずです。一読されることをお勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー