今回の選書

最短距離でセンターに立つ仕事術(上田勝啓) WAVE出版

最短距離でセンターに立つ仕事術(上田勝啓) WAVE出版

選書サマリー

29歳で半導体メーカーを辞め、配置薬販売会社に転職した。4年後に子会社の社長に就任し、転職から15年が過ぎた今は、グループ企業7社の経営に携わり、うち2社の代表取締役を務めている。

ここまでできた理由はシンプルだ。「最短距離で仕事をする」、それだけだ。結果、経営という会社のセンターポジションにいち早くたどり着くことができたのだ。

武器になったのは「会社アタマ」だ。これは「仕事最優先で必死に働くこと」ではない。常に「会社はこの仕事に何を求めているのか?」を考えて行動することだ。

最近、よく「会社から評価されない」といった相談を受ける。彼らの多くが間違っている。いつも「どうすれば評価されるか」ばかり考えて仕事をしているから、評価されないのだ。

この自己中心的な「自分アタマ」でいる限り、無駄に遠回りをしている。だから、評価が上がらないのだ。

経営者が評価するのは、「能力がある人」でも、「努力している人」でもない。会社が求めていることに応えてくれる人だ。それができない限り、評価されないのだ。

あなたが若手社員だとする。そして、上司に「新規事業に関する市場調査のデータを会議までにまとめておくように」と指示されたとする。この場合、次のどちらの作業をするべきか。

第一は「すぐにデータを取りまとめ、期日よりも早く提出する」だ。第二は「期日までの時間を使って、より詳細なデータを追加し、自分なりの意見を補足する」だ。

「自分の実力を評価してもらいたい」と考えるなら、与えられた仕事だけでなく、プラスαして後者を選ぶかもしれない。しかし、普通は、前者の人を高く評価するはずだ。

上司が若い社員に求めるのは、まず「指示したことをきちんとやること」だ。それ以外は余計な作業だ。だから、頼まれた市場調査のデータを「迅速に」集めて整理し、できるだけ早く提出すべきだ。

そのデータを元に、どんな判断をするかは、上が行うことだ。20代の社員の意見を参考にしようと思うようケースは、少ないはずだ。

もちろん、与えられた仕事に、自分なりの工夫を加えることは悪いことではない。だが、それは上司に求められた時に披露すべきだ。

会社としては、データがすぐ用意できたなら、もっと早く欲しかったはずだ。そうすれば、上層部はもっとじっくり検討できたかもしれない。勝手な判断で、その機会を逃したかもしれない。

「会社が何を求めているか」を考えて作業していたら、データを迅速に集めて提出するほうが重要だと気づいたはずだ。それが、会社の経営的な思考に同調できる「会社アタマ」なのだ。

ところが、この作業を「自分の評価を上げるため」と考えてしまった。それは、自分のためにする思考=「自分アタマ」だったのだ。

「会社アタマ」で行動できない人は、どんなにがんばっても「あー、この人は必要以上にがんばっているな」という評価しか下されない。ここを正しく理解しないと、勘違いの努力で終わる。

ステージのセンターに立つメインのメンバーと、後方のひな壇に収まっているその他大勢との違いは意外と小さい。だが、その違いに気づかなければ、がんばっても報われない。

無駄な頑張りを繰り返していても、いつまでたってもひな壇から前に出ていけないし、やがて後から入ってきたメンバーにも抜かれてしまう。

会社が評価するのは、ただ頑張っている人でなく、成果を上げる人だ。どんなに一生懸命でも、明確な数字が伴わなければ、評価しようがない。

それができないうちは、まず「言われたことを的確にこなす」こと、聞かれたことに答えることだ。余計なことをする必要はないのだ。

選書コメント

最低限の時間と労力で最大限の成果を上げる、効率な仕事の仕方を教えます。職場で、ひな壇からセンターに躍り出るための仕事のコツが紹介されます。

著者は、老舗配置薬販売会社に転職後、スピード出世し、34歳で代表取締役に就任した方です。今では、7社の社長や役員を務めるに至っています。

一言で言えば、社長が教える仕事術ですが、社長に向けではありません。一般の社員に向けて書いてあります。管理職の方から平社員、アルバイトやパートなど、すべての立場にいる方に役立ちます。

上司に認められてスピード出世する人がいる一方、誰よりも頑張っているのに認められず、評価されない人がいます。どこが違うのでしょう?

それは、会社の期待する役割を担い、成果をもたらしているかどうかです。成果と頑張りは、必ずしも比例しないため、頑張らなくても出世できる人はできるのです。

中には「出世に興味がない」という人もいるかもしれません。しかし、仕事の醍醐味を知るなら出世です。出世抜きでは、成長もできませんから、やがて居場所さえ無くなります。

出世にあたり必要なことは、会社の期待を正しく知ることです。そして、会社目線で考えることです。何を期待されているかは、社長に訊くのが一番です。本書はそれを形にしています。

というわけで、会社で働くすべての人にお勧めします。特に、これから仕事をはじめる人や、始めたばかりの方など、若いビジネスパーソンに一読をお勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー