今回の選書

フォローの技術(田中イデア) WAVE出版

フォローの技術(田中イデア) WAVE出版

選書サマリー

「こんなに努力しているのに認められない・・」「上司はこの成果の凄さがわからないのか」「自分より劣るあの人が、なぜいつもうまくいくの?」こんな不満や疑問を持つことはないだろうか?

少しでも思い当たるなら、注意が必要だ。なぜなら、あなたの思いや考え、感じていることと、現実にズレがあるからだ。そのため、現状への不満や今後の不安が生まれるのだ。

私もこのズレを抱えていた。上京した当時は、夢と希望に満ちあふれ、放送作家という仕事を始めた。自信もあった。「早く成功したい」といつも考えていた。

しかし、アマとプロは全然違った。出す企画やネタが不採用の毎日。会議でも上手く発言できない。「自分はできる」と思っていたのに、甘くなかった。結果を出せずに悶々とし、ひどく落ち込んだ。

そこで、活躍している先輩方を徹底的に分析した。一体、自分と彼らは何が違うのか?それを知るために観察し続けた。そしてわかったことがある。

それは、活躍している先輩は「自分が、自分が」となっていないのだ。自分の思いではなく、相手のニーズに応え、相手の気持ちになって仕事をしていたのだ。

私はそんな大事なことを知らず、自分のことばかり考え、自分を認めてほしいあまり、自分を否定する人を敵のように考え、きちんと向き合えていなかった。

さらに、突き詰めて考えた結果、1つの結論にたどり着いた。活躍している先輩方がやっていて、自分ができていないこと、それは、相手のことを思いやって「フォロー」することだった。

フォローの大切さはわかったが、やり方がわからない。そこでまずは先輩方の真似をして、盗むことにした。その後、自分なりのフォローの技術を磨いていけばいいのだ。

そんな時、仕事場やテレビなどでお笑い芸人を見ていて、彼らのフォローの上手さにビックリした。そこで、彼らを徹底的に観察し、分析してみた。

その結果、凄腕の芸人は、次のような「フォローの技術」を持っていることがわかった。それは、

「自分の居場所を確保する『ポジショニング力』」

「一目置かれ、信頼される『会話アシスト力』」

「みんなから好かれる『気配り力』」

「重要な存在になれる『世渡り力』」

の4つだ。彼らが無意識にやっているこれら4つの力を、自分なりにまとめ実践することで、ビジネスで求められる「フォローの技術」を身につけることができた。

「フォローの技術」を学んだおかげで、私は自分の思いと現実のズレを修正することができ、飛躍的に成長することができた。任される仕事の質や条件もグンと良くなっていった。

他にも、たとえば上司や取引先との会話が怖くなくなり、苦手だった人に話しかけられるようになった。また自分がするべきことが鮮明にわかるようになり、周りから信頼されるようになった。

「自分は大丈夫だ」と思っている人は、想像してみてほしい。「フォローの技術」を身につけないままいくと、今後、どうなっていくだろうか。

想像しにくい人は、周囲の残念な上司や先輩を思い浮かべてほしい。彼らは、自分のことしか考えず、会社や上司の愚痴を言い、責任逃れをし、向上心を育てなかった。その結果、今の残念な姿になった。

あなたは、彼らと同じ道を歩むべきではない。もし、将来、上司や同僚、部下から「残念な奴」と思われたくないと思うなら「フォローの技術」を身につけることだ。

「フォローの技術」を身につけるだけで人生が変わる。それは、ビジネスの世界でも変わらない。ぜひ、凄腕芸人たちの持つ「フォローの技術』を修得し、実践してほしい。

選書コメント

フォローすることの大切さを学び、その技術を教える本です。特に、お笑い芸人のフォローの技術に学び、それをビジネスに活かすことを目指します。

テレビを見ていても、芸人たちのフォローは絶妙です。特に、ひな壇芸人と呼ばれる人たちのフォローは、でしゃばり過ぎず、静かすぎず、当意即妙のフォローには頭が下がります。

あんな風にフォローされたら、司会者もゲストも本当に助かると思います。だから、フォローのうまい人は、安定的に仕事が来ますし、長生きできるのです。ビジネスでも、ぜひ応用したいものです。

「できる人」というと、何でもこなすスーパーマンのような人をイメージします。だから、誰もが「スキルアップ」と称して、知識やスキルで武装するのでしょう。

しかし、出世している人は「俺が、俺が」という人ではありません。お客さまや、職場の上司、同僚、はたまた後輩まで、立てて、助ける人です。彼らは周囲に引き上げられて、出世していくのです。

もちろん、フォローとは、歯の浮く「ヨイショ」や「ゴマすり」ではありません。組織における自分の役割を客観的に理解し、組織のために臨機応変に対応することです。

考えてみれば、仕事とは、スポーツと同じでチームワークですから、スタンドプレーよりも、チームプレーができる人に価値があり、評価されるのです。

仕事を始めたばかりの若いビジネスパーソンや、仕事のやり方を模索中の方で、ちょっと趣向の変わったビジネス書をお探しの方に、お勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー