今回の選書

お金をかけずにマスコミにとりあげられるユダヤ式PR術(立川光昭) 東洋経済新報社

お金をかけずにマスコミにとりあげられるユダヤ式PR術(立川光昭) 東洋経済新報社

選書サマリー

宣伝代行と通信販売の会社を起ち上げ、3年で約20億円の会社にした。急成長の秘密は、独自の宣伝手法を用いたことだ。決して難しいことではない。原理さえわかれば、誰にでもできることだ。

数年前までは、宣伝など"ど素人"だった。しかし、以前在籍したユダヤ系の商社で培った考え方や、法則をベースに考えたところ、わずか数年で結果が出たのだ。

ユダヤ系ビジネスから学んだことで、最も大きなことは、すべてを数値化することだ。そして、物事すべてに、原因、結果、対策、実行のロジックを求め、数値が減ったら、早急に対策と実行をする。

メディアに関しても、このロジックはあてはまると考えた。もし、相手が提案を取り上げてくれないとしたら、それなりの原因がある。対策・実行があれば、相手は必ず動いてくれると考えたのだ。

特に、ユダヤ式ビジネスでカギになるのは、対価を揃えるという感覚だ。交渉時に相手が動いてくれないのは、こちらが相手に提示する対価が不足しているからだと考えるのだ。

メディアを動かす時も同じだ。相手を動かしたければ、相手が動きたくなる対価を示せばいいのだ。ユダヤ式に相手が求めている対価を考えるようにすれば、斬新な発想も出てくるはずだ。

もう一つ、ユダヤ式ビジネスで気づかされたことがある。それは、「一見無価値と思われているものの中にも、価値があることがある」ということだ。

それを発見したのは、中古バイクのビジネスを通してだ。ただで手に入れた廃品バイクが8000円になったのだ。それまで無価値と思われていたものにも、価値があるものが存在することを知ったのだ。

私の宣伝手法では、この事実を必ず活かす。まだ、お金になっていなくても、潜在的価値のあるものを発見し、有効利用できれば、お金をかけなくても良い宣伝ができるからだ。

個人商店の宣伝でも同じだ。街のラーメン屋で、どれほどいい広告を打っても、美味しくなければ、二度とその店には行かないはずだ。逆に、美味しいラーメン屋なら、また来てもらえる。

どちらも流行らないラーメン屋だが、美味しいラーメン屋には可能性がある。つまり、美味しいということは、お金になっていない潜在的な価値があるのだ。

ところが、それを普通に宣伝しようとすると、どうしてもお金がかかってしまう。個人商店は、お店の情報を伝える手段が乏しいため、せっかくの価値を無駄に終わらせやすいのだ。

価値が埋もれた業界は他にもある。まずローカル・メディアだ。地元の情報を集め、発信するなら、中央のメディアより、地の利のあるローカル・メディアのほうが有利だ。

ところが、現実にはローカル・メディアは利点が活かせていない。台所事情が苦しいところが多く「地元の人々への宣伝力」という"報われていない価値"が眠っているのだ。

もうひとつはタレント業界だ。有名なドラマやCMに出演しているタレントでも、アルバイトをしなければ生活できない人がいる。彼らも使える素材を持ちながら、その価値を眠らせているのだ。

個人商店、ローカル・メディア、タレント、この3つに埋もれている報われない価値を互いに利用し合えば、お金をかけずに宣伝ができる。

たとえば、個人商店は商品を提供するだけでお店の宣伝になる。タレントは、生活が助かるし、メディアにも露出できる。メディアは面白いネタが手に入る。こうして三者とも満足できるわけだ。

このようにして、私たちは独自の宣伝手法を生み出してきた。これこそが、すべてを数値化して対価を揃えるユダヤ式ビジネスの手法だ。だから、これを「ユダヤ式PR術」と呼んでいるのだ。

選書コメント

創業3年で売上を20億にした独自の宣伝手法を詳しく解説する本です。ユダヤ系の会社で働いた経験を活かして開発した宣伝手法で、飛躍的に業績を上げ、各方面から注目されています。

「ユダヤ式」とは、数値を把握する、価値の埋もれたものを使う、相手の対価を提示することなどです。そこから発想したPR手法は、大変ユニークかつ強力なものです。

この宣伝手法を導入したところ、著者の会社は急成長、今では仕事を断らざるを得ないほどだといいます。代わりに自分でやってもらうために、ノウハウを開示したのが本書というわけです。

小さな会社のPRの本として、よくできている本です。十分、実用に耐える内容です。

たとえば、売り出し中のタレントを使います。テレビで見かける人が、タウン誌や地元の商店街のポスターに載っているのは「そういうカラクリだったのか!」と思わず納得できました。

また、埋もれた価値を活用するという発想は、広告業界だけでなく、色々と応用ができそうです。たとえば、不動産業界では、コインパーキングや駅中の店舗などが遊休資産の活用の例です。

タイトルに「ユダヤ式」とありますが、残念ながら「ユダヤ式」に関する言及は、ほとんどなく、いわゆる広告宣伝手法の本です。ただし、読めばアイデア発想を豊かにしてくれるはずです。

自社のPRに悩む経営者や個人事業主はもちろん、広告やPRに従事する人、そういう世界に興味がある人も、ぜひ読んでみてください。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー