今回の選書

働かずに1億稼ぐ考え方(小池則雄) アチーブメント出版

働かずに1億稼ぐ考え方(小池則雄) アチーブメント出版

選書サマリー

私は、和歌山や大阪を中心に、アイスクリームの「サーティワン」や、中古釣具専門店の「タックルベリー」のメガフランチャイジーとして計32店舗のフランチャイズ加盟店を経営している。

特に、この10年は多店舗展開を加速させて、売上がぐんぐん伸びてきた。2010年1月には、大阪府岸和田市の店舗が、サーティワン全国1037店舗中で1店だけを表彰する全国最優秀店舗に輝いた。

「日本一」になったというと「社長はすごい」「偉いのは社長だ」と思われることが多い。しかし、私には自分が何かをやったという実感がまったくない。

日本一という快挙は、若いアルバイトやベテランのスタッフといった現場の人々が、実際に手を動かして取り組んできたからだ。その結果が日本一なのだ。

私が経営者として目指してきたことは「寝ている間に稼ぐこと」だ。それを地で行っている。拠点は、和歌山、大阪、東京。マイペースに3拠点を行き来するのが、私の勤務形態だ。

店舗運営は、スタッフや店長たちに一切を任せている。店に顔を出すのは、ごくまれだ。店舗のみんなが朝の準備で忙しい時間帯に、自分はゆっくり家でくつろいでいることさえある。

だから、現場のことはまるで知らない。1000種類以上あるアイスクリームのことを聞かれても、満足に答えられないくらいだ。

それでも年商20億円超の会社をやっている。それができるのは、社員やアルバイトに安心して任せられるように、相応の仕組みと仕掛けを用意しているからだ。

マクロの視点から経営環境を分析し、自分が勝てる分野や事業を選ぶ。その事業の肝を確実に抑える。さらにすべてを数字で見られるようにして、適材適所で力を発揮してもらう。

そういうことをきちんとやって「任せる技術」を体得し、実行すれば、「寝ている間に稼ぐ」ことができる。何より、トップに余裕があれば、社内の風通しがよく、会社が勝手に成長して行くのだ。

「私たちはアイスクリームだけを売っているのではありません。楽しみを売っています」「町に小さなテーマパークをつくります」これらが、サーティワンのビジネスをやる上で重視してきたことだ。

前社長の松山和夫さんから言われたことは「サーティワンでは、カリフォルニアの明るく、陽気で、はじけたカルチャーを打ち出しましょう。商品でなく、カルチャーを売りましょう」だ。

「モノを売るのではない。カルチャーを伝えることが大切だ」という発想は、私にとって新鮮で、しっくりときた。なぜなら、飲食はカルチャーそのものだからだ。

飲食、住居、服などは、いずれもカルチャーに根差している。そうした商品を扱うなら、それぞれのカルチャーをベースに、どう商品に説得力を持たせられるかがビジネスの本質であり、醍醐味だ。

しかし、ほとんどの店が、モノで勝負している。だが、店のデザインや接客など、ソフトの部分で、カルチャーの訴求方法は、もっと工夫できるはずだ。

成功要因の一つは立地だが、立地がよくても苦戦することはある。それは、業種・業態のポジショニングに問題があるときだ。たとえば、飲食業の中でも、焼肉屋や居酒屋はライバルが多い。

このような時は、他と差別化できるポジショニングを探すことだ。特に、飲食でも、ライバルが少ないものを探す。市場規模は小さくても、市場を独占できれば長続きするビジネスが可能なのだ。

他業種・他業態・多店舗との違いを明確にし「強み」とすることだ。それにより、競合相手のいない「ブルー・オーシャン」を自ら作り出すことができる。

違いを出すことで「勝てる要素」を付加し基盤を固める、あとは「任せる技術」を発揮し「寝ている間に稼ぐ」を実現する、これがビジネスで成功する上で、極めて重要なことなのだ。

選書コメント

創業者で、ビジネスオーナーの社長が「起業したい」「ビジネスで成功したい」と考える人に、経営者が何を考え、どう判断し、どう行動すべきかを教える本です。

著者は、アイスクリームの「サーティワン」と中古釣り具の「タックルベリー」の二つに加盟し、どちらも売上ナンバーワンフランチャイジーに育て上げたスゴい経営者、小池則雄さんです。

そんな卓越した実績を持つ経営者が、ビジネスモデル発想法や、若手育成術など、ビジネスで成功する秘訣を、自らの経営体験をベースに語ってくれます。

本書は、タイトルもそうですが、本文中にも、売上や利益など、お金の話が満載です。ビジネスパーソンの中には、この手の言い回しに、拒絶反応を起こす人も少なくないようです。

そのせいか、最近は起業の本でさえ、精神論や理想論ばかりを語りがちです。特に、実業経験の乏しい「自称コンサルタント」、実態は「著述家」という人が書いた本に、その傾向が強いようです。

しかし、著者のいうように「ビジネスはキャッシュを生んでナンボ」です。お金を生むから、雇用を生み、納税でき、社会貢献ができるのです。

このあたり、大企業の経営者や、コンサルタントが書いた本にも、あまり書いてないことです。だからこそ、本当に起業したいなら、本書のような本を読むべきだと思います。

いずれ起業したい人、起業したばかりの人、フランチャイズに加盟したいと考えている人はもちろん、マネジメントに携わる人にも、お勧めしたい本です。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー