今回の選書

ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと(ビル・マーフィー・ジュニア 藤原朝子 訳) 阪急コミュニケーションズ

ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと(ビル・マーフィー・ジュニア 藤原朝子 訳) 阪急コミュニケーションズ

選書サマリー

起業して成功したい、ダイナミックで社会の役に立つ、すごいものを作り上げたい、その過程でリッチになれたらなおいい。起業に憧れる人は、誰もがそんな風に考える。

だが、はじめてのベンチャーはたいてい失敗する。理由はいろいろあるが、最初のベンチャーの成功確率は極めて低い。しかし、失敗は、成功のもとだ。

多くの起業家の失敗談は、成功のヒントになる。まず、起業の方法を自分で一から考える必要はない。すでに誰かが答えを出してくれているのだから、それを探し当てればいいだけだ。

第2に、たいていのベンチャー企業が失敗するからといって、自分も失敗するとは限らない。失敗するのはライバルかもしれない。問題は、参考にする起業例をどうやって見つけるかだ。

基準は、3つある。まず、成功していること、次にその成功が長期間続いていること、最後に正直であることだ。私は、これらの基準を満たす3人の起業家の10年間を見つめてきた。

その結果、成功するルールを導き出すことができた。そのルールを紹介したい。

「あの人は生まれながらの起業家だった」という話をよく聞く。しかし、それは嘘だ。ハーバードビジネススクールのスタンスは「起業は教えられるし、学べる」というシンプルなものだ。

重要なことは、個人のスキルより「どうやるか」というプロセスだ。そして「やってやるぞ」という信念とその目標に向けて全力投球するコミットメントだ。

起業家が自分の夢を実現したいと思う以上に、社会が起業家を必要としている。リスクを怖れず冒険して、世界に新しいモノや価値をもたらし、雇用を創出してくれる野心的な人間を必要としている。

難しい問題を解決し、まったく新しい産業を作り出せる起業家は、世界を変えることができる。どんなに優れた起業家も、最初の一歩は同じだ。「起業家として絶対成功してやるぞ」と決意することだ。

「会社を立ち上げて莫大な利益を得たい」と思うだけでは成功できない。生活のためとか、事業を始める手段としてでなく「起業家になる」と決意することが非常に重要なのだ。

起業を夢見る人なら、誰もが考えておくべきことがある。まずは、起業以外に時間や資金を要する責任はないかだ。どんなに将来性が高くても、ビジネスを立ち上げるにはリスクが伴うものだ。

第2に、メンターや手本になる人はいるかだ。起業は、厳しくて、孤独な作業だ。誰かのサポートと励ましがなかったら、成功はさらに難しくなる。

第3に、機会費用を見極めることだ。起業後に直面しうる最悪のシナリオを考えておくべきだ。不安を書き出しておけば、不安を軽減できるはずだ。

第4に、これまでの実績をリストアップすることだ。そして、起業家として成功できそうかどうか考えてみることだ。最後に、自分のリスク許容度を知ることだ。

まず、問題を見つけ、それから解決策を考えることだ。重要なことは、自分が解決したい問題から考えるべきだ。解決策を考えから、問題を探すべきではない。多くの起業家はここで間違える。

チャンスは、常に個人的なものだ。どんなアイデアがうまくいくかは、起業家によって違う。自分が興味のあること、あるいは、自由時間をどう過ごすかを考えてみるべきだ。

そして、それについて、常々不満に思っていることを考えてみることだ。自分が関心のあることに焦点を絞れば、問題を見つけることはずっと簡単になる。

成功する起業家の多くが、解決したい問題を見つけ、その解決策をビジネスにするか、自分がよく知っていて、情熱を感じる業界で起業しているのだ。

選書コメント

起業で成功するために大切なことを学ぶ本です。ハーバード出身の3人の起業家の実例を学び、そこから起業で成功するために必要なことを「成功の10のルール」として抽出し、教えてくれます。

ハーバードビジネススクールと言えば、ご存知、超一流のビジネススクールで、ベンチャー研究にも定評があります。そして、彼らを特徴づけるのが、ケースメソッドです。

本書も、そんなケースメソッドを再現する形で書かれています。3人の軌跡を追うことで、起業というコンセプトに慣れ、自信を持つことができるように工夫されています。

起業大国と言われるアメリカも、リーマンショック以降、起業家が華やかさを失っています。長い不況のトンネルから抜け出せない日本に至っては、起業という言葉さえ忘れ去られたかのようです。

それでも、起業は、私たちビジネスパーソンの心をひきつけて止まない魅力があります。実際、起業を志す人も、起業で成功する人も、いつの時代も確実にいます。

私も「週末起業」という書籍を書いて以降、起業に関して十年以上携わっており、当然、思うところがあります。そんな私の経験に照らしても、本書の成功法則は、いちいち納得、共感できます。

起業家向けに書かれた本ですが、ビジネス全般の成功法則としても応用できます。いずれ起業したい人、起業したばかりの人はもちろん、すべてのビジネスパーソンに一読をお勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

この記事は藤井孝一氏が運営するビジネス書を読みこなすビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」」の過去記事を抜粋し、適宜加筆・修正を行って転載しています。