今回の選書

「京大家庭教師が教える やる気が続くシンプル勉強法」(益森直義) 中経出版

「京大家庭教師が教える やる気が続くシンプル勉強法」(益森直義) 中経出版

選書サマリー

天才は、いわゆるモチベーションの塊のような人たちだ。また、自分の「やる気」を自然にコントロールできる人たちだ。

でも、私たちのようなフツーの人は「やりたい気持ち」はあるのに、なかなか「やる気」になれなくて困っている。

そして「何をどうしたらいいか」よくわからないまま、ただ時間だけが過ぎていく。

誰も他人の感情は動かせない。自分の気持ちは自分でコントロールするしかない。しかし、単なる勢いや気合いだけではどうしようもないのだ。

仕事で実績が全然出ないのに、周りはどんどん実績を出し、後から来た人にすら追い抜かれていくとしたら、相当優秀な人でもへこむはずだ。

つまり「順調」「順境」なら誰でも歩むことができ「不調」「逆境」なら、できる人でも折れやすいのだ。「不調」「逆境」の時こそが大きな分かれ道だ。

「仕事がうまくいかない」時は、能力やスキル、やり方の問題より、「その時どうするべきか」「どういう心の持ち方が必要か」といったメンタル面が、事の成否を大きく左右する。

ある有名な経営コンサルタントは、収入7億円を確保したところでセミ・リタイアした。彼は「自分の娘には成功の秘訣を教えたから、彼女は何でもできると思う」と言っている。

その教えとは「何でもできると思ってやれ」というものだ。「できないかな」とか「できたらいいな」ではだめだ。「できると思え」だ。「何でもできる」と思えば、必ず成功するものなのだ。

同様に、東大受験生には共通点がある。それは「どうせやらなくてはならない勉強なら、いかに楽しくやるか」という工夫をしていることだ。これもメンタル面として挙げられるだろう。

反対に「できない子」の共通項が「優柔不断」だ。「とにかく腰が重い」「何となくだらだらと時を過ごす」「あいまいにしたまま結論を先送りする」「小さな妥協が多い」といった具合だ。

いったん決断してしまえば、短期間でいくらでも結果は出せる。それなのに、決断しなければ何カ月でも、何年でも平気で時間は過ぎてしまう。

たとえば、昔話「桃太郎」のおばあさんは、川から桃が流れてきた時、やり過ごすこともできた。しかし、すぐに行動した。その結果、待望の「赤ちゃん」を授かることができた。

桃太郎のおばあさんが優柔不断だったら、考えている間に桃は流れてしまい、何も得ることはできなかったはずだ。いきなり「大きな桃」が流れてきた時、どういう行動を取るか。それが重要なのだ。

ベンチャー・ビジネスの世界では、人に助けてもらうことなく、まったくの独力で成功した人はいない。自分を正しく「コーチング」してくれる存在が貴重なのだ。

ただ、重要なことは「成功者」が「メンター」としてふさわしいとは限らないことだ。「名選手、必ずしも名監督ならず」という。名選手は、できない人がどこで悩み苦しむのかわからないのだ。

だから、それほど苦しむことなしに成功した人の話をいくら聞いても自分の問題解決にはつながらない。結局「この人と私は、別の世界の人間だ」と思うだけなのだ。

要は「自分と同じような状況、課題、問題を抱えて苦しんでいながら、そこから試行錯誤を重ねて、ついに乗り越えた人」だけが、自分にとって「最高のメンター」になりうるのだ。

そして、よいメンターと出会い、自分一人では乗り越えられなかったカベを乗り越えることだ。それができた人は、いつか自分が誰かのメンターになるべきだ。

失敗を重ねた人ほど、人間としての幅が広がる。そして、たくさんの人に道を開いてあげることができる。だから、失敗は、できるだけたくさんした方がいいのだ。

選書コメント

本書は、"勉強法" の本です。といっても、具体的な勉強の仕方よりも、主にやる気の維持や挫折の攻略法、つまり、モチベーションアップの方法に比重を置いて教える本です。

著者は、十数年以上、高卒認定試験の指導を担当してきた、いわゆる「できない子」専門のプロ家庭教師です。「できない子」に最短時間、最小努力で成果を上げさせるプロです。

社会人にとっても、ますます勉強が大切です。それでも、なかなか始められない、続かないという人がいます。そんな人が、やる気を維持し、挫折を乗り越える方法を知るのに最適な本です。

本書には具体的な方法がいろいろと書いてあります。たとえば「部屋をきれいに掃除する」とか「体を柔軟に保つためにウォーキングやストレッチする」などまで書いてあります。

確かに、勉強は、やればある程度、誰でも成果が出ます。それなのに差がついてしまうのは、やる気を維持することが難しいからです。それができるか、できないかで、大きな違いになります。

もちろん、勉強のやり方についても触れています。「テキストのポイントをまとめる」とか「一回目の通読をできるだけ早く終わらせる」などが紹介されています。

やる気の維持や挫折の攻略法は、子供たちからビジネスパーソンの勉強はもちろん、勉強以外、仕事やスポーツなどにも広く応用できます。

ビジネスパーソンで、何か新しい勉強を始めたい人、勉強を始めても続かない人、学齢期のお子さんがいらっしゃる方で、勉強法にお悩みの方にもお勧めです。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

この記事は藤井孝一氏が運営するビジネス書を読みこなすビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」」の過去記事を抜粋し、適宜加筆・修正を行って転載しています。