こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。


人間は一度染みついた慣習はなかなか抜けないものです。筆者にご相談に来られる30代~40代のご夫婦で、夫婦共に一定以上の稼ぎがあるにもかかわらず、思ったほど貯められないという方もいらっしゃいます。まず相談者が試みるのは、「生活費の見直し」なのですが、そもそも生活費を見直しても、頑張った割には効果が小さいものなのです。

また、生活費をギリギリまで切り詰めた状態は危険です。ギリギリの家計で住宅ローンを借りると、経済環境が少し悪化するだけで住宅ローンが返せなくなる可能性もあります。「雑巾を絞る」イメージを持つとよいでしょう。すでに固く絞られた雑巾を絞ろうと思っても、ほとんど効果は得られません。むしろ生活費は少し余裕をもたせたほうが、資金繰りが苦しい時期に対応できます。

見直しは金額の大きいものから

そこで、生活費の見直しの前に、もっと大きなお金まわりについて見直しを検討すべきです。優先順位でいうと、(1)住宅、(2)教育費、(3)生命保険、(4)収入を増やす、(5)余裕資金の有効活用(運用)などです。

(1)住宅編

特に、(1)の住宅は節約効果が大きくなります。「頭金なし」で住宅購入するよりも、お金を貯めてから数年後に購入した方が、相当な金額の無駄を節約できます。例えば、物件価格2000万円の住宅を、[1]「頭金なしで購入する場合」と、[2]「5年後に1000万円の頭金を準備して購入する場合」を比較してみます。

すると、[2]を選んだほうが、少なく見積もっても400万円程度のお金を節約できます。5年で1000万円貯めるのは、夫婦共働きであればさほど難しくないでしょう。もちろん、お金を貯めている間の家賃は必要になりますが、社宅を利用するなど安く抑えることは可能です。また、頭金を1000万円入れると、住宅ローンの返済期間を10年程度短縮できます。子どもの大学進学までに住宅ローンを完済することも可能で、そうなると将来のキャッシュフローが楽になり、老後資金も相当貯めやすくなります。共働きの夫婦なら、短期勝負で一気にお金を貯めてしまうのがコツです。

(2)教育費編

教育資金については、幼稚園から大学まで全て公立の教育機関に通わせた場合、一人あたり約1000万円の費用がかかります。全て私立に通わせた場合は約2000万円の費用がかかります。お金の面だけで考えると、公立と私立では1000万円以上の差がありますので、「まわりがそうしているから」という安易な理由で進路を決めるのは避けたいところです。

(3)生命保険編

生命保険については、日本人の世帯の約9割が何らかの生命保険に加入していますが、そのうち4割が「内容をよく理解していない」と答えています。世帯の年間保険料は平均20万円ですから、40年間保険料を支払い続けると800万円の支出になります。保障内容を見直せば保障を減額したり、不要な特約を外したりすれば、保険料を大幅に下げられる可能性もあります。保険料を1割削減するだけでも80万円の節約になります。会社の共済制度などで割安なプランがないかどうかも確認してみましょう。

家計簿の注意点

さて、生活費を見直す場合は、家計簿をつけるのがよいのですが、今回は家計簿をつけるときの注意点を3つほど紹介します。

(1)目的をはっきりさせておく

家計簿をつける目的は「貯金をふやす」ことであり、「細かく記録する」ことではありません。家計簿をつけてもお金が貯まらないのであれば時間の無駄です。ですから、家計簿だけでなく、「貯蓄残高」を常に意識をするようにしましょう。

家計簿をつける目的が曖昧だと、家計簿にたくさんの機能を求めてしまいます。結果として手間が増え、管理も複雑になってしまいます。例えば、支出項目をやたら細かく分けてしまうと、「この支出はどの項目に入れるか?」と悩んでしまいますし、家計の全体像を掴みにくくなりますので、支出項目は10項目くらいに仕分けし、月末に円グラフにしてみましょう。

数字はグラフ化にしてみると、何にどのくらい使っているのか「サイズ感」が把握しやすくなります。例えば、図表1の場合、食費、住まい、通信、医療・保険が、家計に占める割合が高いのがわかります。であれば、割合の小さい水道光熱を見直すよりも、食費や通信、保険を見直した方が、節約効果は高そうだとなるわけです。次に「食費」の内容をみていくのです。

図表2のケースだと、食料品、夜ご飯(外食)、おやつ、昼ご飯について、見直しの余地がありそうです。最初から支出項目を細分化して家計簿をつけるのではなく、まずは大きな支出項目で傾向をつかみます。その中から割合の多い支出について、詳細をみていった方がストレスがなく、うまく節約できます。節約も「選択と集中」で効果がアップします。

(2)毎日欠かさず記録しようと考えない

家計簿をつけるうえで最大のハードルは「つけ忘れ」ではないでしょうか? 1日も欠かさず家計簿をつけることは至難の業ですし、昨日の支出を思い出そうとしても、すべては思い出せるものでもありません。記録出来なかった日は無理に思い出そうとせず、その日は無視して今日の支出からつけ始めてください。当然、月末に収支差額と貯蓄残高があわなくなりますので、「支出調整金」として処理します。

例えば、旅行先でいくらお金を使ったかなどは、いちいち覚えておくのは難しいので、そんな時も「支出調整金」として処理してもかまいません。旅行に行く前のお財布の金額から、旅行後のお財布の金額を差引けば、旅行でいくら使ったかはわかります。その金額を「支出調整金」として処理すればOKです。

(3)夫婦で別々に家計や財産管理をしている場合、無理に1つにまとめない

「家計や財産管理は1つにまとめなさい」という人もいますが、必ずしもそれが正解ではありません。家計や財産はまとめたほうが管理は確かに楽ですが、30代や40代で結婚された方であれば、夫婦それぞれに収入があり、「私の稼いだお金は私のモノ」という意識が少なからずあるために、「お金の使い方や貯蓄額について、あまり干渉されたくない」という意識も強いものです。無理にひとつにまとめたせいで、なんとなく夫婦間がギクシャクするようになった、という声も聞きます。

また、夫婦別々に管理することのメリットも少なからずあります。夫婦まとめて管理するより、夫婦別々に管理したほうがお金は貯まりやすいという統計もあります。理由は、預金口座をたくさんお持ちの方のほうが、お金が貯まりやすいのと同じです。例えば、夫にも妻にも200万円ずつ貯金があるとしましょう。夫が「自動車を買いたい」と思った時、夫の自分の貯金200万円が購入予算になります。夫婦でまとめて管理していたら、世帯の貯蓄額は400万円という認識になるため、300万円が予算となってしまうかもしれません。このように、夫婦それぞれでお金を管理することで、大きな出費への抑制につながり、結果としてお金が貯まりやすくなります。

ただし、家を買うときや教育資金などは夫婦でよく話し合い、共通の目標をもってお金を貯めることが大切です。住宅を購入する際に、「相手もこれぐらいは貯めているだろう」と思っていても、実際に聞いて見ると、趣味や習い事に相当なお金を使っており、ほとんど貯金をしていなかった」というケースもあります。ですから、夫婦で「最低でもお互いに、年間100万円は貯めること」など、ルールを決めておくのがよいでしょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)

株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。

セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/

『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/