まずは、複製した原型を塗装するための準備です。湯口を含めたバリ(※複製時に生じた余剰部分)を取り除きます。

ニッパーでバリを切ります

あまり太いバリをニッパーで切ろうとすると、キャストが割れてしまうことがあるので注意が必要です。こういう、湯口のランナーを切り取って綺麗にする事をゲート処理といいます。

次に、バリやシリコン型を合わせた時のつなぎ目である「パーティングライン」を耐水ペーパー(※水で濡らして使う模型用の紙やすり)で処理して行きます。丁寧にシリコン型を作っておくと、このパーティングラインや段差が少ないので、楽になります。

複製時に空気が溜まった部分にはパテ詰めて、硬化したら整形します。今回はエポキシ樹脂のパテを使用しました。

色の違う部分がパテで整形した場所

複製のために、原型の背広の裾とズボンの間の隙間は粘土で埋めてしまいました。この部分を彫り直します。この作業は複製品を量産する為には不適切な方法ですが、今回は、完成度を上げるために、あえて行っています。

複製のために省略したモールドを復元する

細かい処理が終わったところで、耐水ペーパーを当てた部分とそうでない部分の印象を馴染ませるために、全体に400~600番の耐水ペーパーを軽くかけます。その後さらにスポンジ状のヤスリを全体に軽くかけるのも効果的です。

数種類のヤスリを使い分けて表面処理。これがフィギュアに表情をつける

表面処理の注意点ですが、あくまでも軽めにしておかないとスカルピーで繊細なモールドを作った意味がなくなってしまいます。表面処理がひと通り終わったら、複製品の表面に着いた油分と仕上げ作業で出た削りカスを除去するために、洗浄します。油分除去用の専用の溶剤は色々売っていますが、今回それほど油分が強くない事もあり、ハブラシに中性洗剤と磨き粉(クレンザー)をつけて表面を洗浄します。

表面の油分を除去する

磨き粉で表面が多少荒れますが、それは問題ではありません。塗装前の表面が少し荒れていたほうが、実は塗料の食い付きが良いのです。表面を洗い、すすいだ後、表面が水を弾いていない(水玉ができない)ようなら、終了です

表面処理はこれで終了

ついに複製したフィギュアの表面処理が終了しました。次回こそ、いよいよ塗装に突入です。

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。現在は『S.I.C』シリーズ最新作の原型を製作中。某ゲームのキャラクターデザインもやってます

神業発動準備完了。次回、複製フィギュアが安藤賢司のキャンバスに!!