安藤賢司、青池良輔の『CATMAN』の立体化に挑む

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。アニメーション作品の設定担当など、立体造形に留まらず、その活躍は多岐に渡る。手にしているのは、安藤自身が原型を手掛けた製品をもとにスクラッチ(自作)したサイクロン号

造形作家の安藤賢司です。今回から、マイコミジャーナルにて、僕なりの一生懸命の造形作法を、読者の皆様にお見せしていきたいと思っています。

いきなりですが、お題はマイコミジャーナルの『創作番長クリエイタ』でもお馴染みの青池良輔先生のFlashアニメ『CATMAN』です。これを何も無いところから立体にしようというのが今回の企画です。僕が普段、バンダイさんの玩具の原型製作などの仕事でやっている手順と、同じ様に進めていきたいと思います。連載を重ねるごとに、少しずつ立体造形物が出来上がっていく様子をご覧ください。

まず、立体造形のために、キャラクターのイメージ固めをしなければなりません。最初に悩んだのが、シチュエーションより何より、「『CATMAN』の1~2ndシーズン、3rdシーズンの、どのCATMANを立体化するのか?」という部分です。最新の3rdにするべきなのでしょうが、前シーズンの絵柄もなかなかに味わい深いものです。ただ、立体に置き換えるなら断然、3rdがやりやすいのです。

作品を観続けてイメージを膨らます
(C)Ryosuke Aoike/Fuji TV・Pony Canyon・Creative Artists

繰り返し映像を観てイメージを膨らます

造形のイメージを得るために、DVDの映像を繰り返し見ます。僕の場合、これが数日間に渡り続きます。もちろん、ちゃんと見ていますが、毎回必ず、キチンと見ているわけではありません。BGV的に流しっ放しにしたりもします。とにかく、「見ている時間」を増やして、脳を「CATMAN脳」としていくのです。そんなこんなで、結局3rdの絵柄を立体化することに決定。次はイメージスケッチに移っていきます。

様々なイラストを描いてみる

立体化するなら、屋根から屋根へ飛び移るシーンしか無い! と、思ったのでDVDのパッケージ絵にもなっているポーズを描いてみます。僕が「CATMAN脳」で描いたイラストがこれです。格好イィ……。

●イラスト1

このイラストを元に行きましょう。でも、立体物なので「立たせる」必要があります。足場を足さねばなりません。支えやすい左足の下に足場を……。あれ? 安定しすぎてしまった。では、右足の方に……。これでは不自然。あぁ、一番浮遊感が出ているポーズで、足が接地していたらそりゃ変だよな仕方が無いので、別ポーズで作画してみましょう。

●イラスト2

このイメージイラストも間違ってない。間違ってないけど、何かそれらしくない。ベクトルが作品観と微妙にズレているような気がします。そこで、ベース無しでもう1枚描いてみました。

●イラスト3

「イラスト3」いちばん良いような気がします。でも、やっぱり「イラスト1」も捨てがたいので、足場を何とかして成立させてしまいたい。いつもなら、この位の強引さで、見切り発車して、「イラスト1」で立体造形に取り掛かってしまいます。でも、今回は若干時間があるのでもう少しデザインを模索してみたいと思います。次回以降、決定したデザインに、彩色して実際の造形に突入していきたいと思います。