ヨドバシカメラ マルチメディア梅田

ここにきて、Macの売れ行きが上昇している。魅力的な商品が相次いで登場していることは大きな要素だが、その一方で、Mac売り場を拡張する販売店が増加。新たな販売制度や販売店支援制度を背景にした販売機会の創出といった観点も見逃せない。そこで本誌では、注目を集めているMac販売店を取材してみることにした。果たして、Macを取り扱う販売店は、いまどんな取り組みをしているのか。その第1回として、大阪・梅田のヨドバシカメラ マルチメディア梅田を訪れた。

大阪・梅田のJR大阪駅前。すでにオープンから8年目に突入したヨドバシカメラ マルチメディア梅田には、終日、ひっきりなしに人が訪れる。いまや大阪最大規模の売上高を誇る家電量販店だといっていいだろう。

同店の地下1階に、Mac売り場がある。かつては1階にあったMac売り場を、昨年10月に、売り場面積を約1.5倍に拡張する形で地下1階に移動。心斎橋のアップルストアと同等規模の売り場面積を誇るといえよう。量販店のMac売り場としては、関西地区では最大級だ。

地下1階のMac売り場。昨年10月に1.5倍に拡張した

Mac売り場専用のアーチを取り付けることで、専門コーナーを印象づける

Mac売り場の奥にあるキャッシャー。Mac売り場専用のキャッシャーを設けている量販店は珍しい

ヨドバシカメラ マルチメディア梅田 Mac総合チーム マーケットイノベーターである山崎拓也氏は、「Macに関心を持つ人が着実に増えている。そうした人たちに対して、ヨドバシカメラにくれば、Macに触れることができる、周辺機器やアクセサリーもたくさん揃っている、そして、初心者が感じる疑問、専門的な知識が必要な問い合わせにも答えることができると言われる、店づくりを目指している」と語る。

同店には、アップルのセールスプロフェッショナルおよびブロダクトプロフェッショナルに認定された専門スタッフが常駐している。店頭には、認定スタッフとして、6人の顔写真を掲示しているが、同売り場のスタッフ全員が、そのスキルを持っている。それが安心して相談できるスタッフ構成につながっている。

ヨドバシカメラ マルチメディア梅田 Mac総合チーム マーケットイノベーターの山崎拓也氏

アップル製品の認定スペシャリストを配置。専門知識を持ったスタッフが対応する

イベントスペースを用意して、土日、祝日は逐次ミニセミナーを開催。スケジュールはアップルのサイトで確認できる

「関西のお客様は、コミュニケーションを重視する傾向が強い。そのためには、知識を持ったスタッフの数を揃え、どんなことにも的確に回答できることが重要。Mac売り場における認定スタッフの構成比率が最も高いのが、マルチメディア梅田といっても過言ではない」とする。

「触ることができる」という観点に力を入れた展示方法にも、工夫が凝らされている。展示されているiMacやMacBookは、すべてiLifeなどのアプリケーションをデモストレーションできるのはもちろん、一部の展示機では、ネットワークに接続した環境でも操作ができるようになっている。ネット接続環境での展示は、量販店店頭では、あまり数が多くない取り組みだ。

また、多くの人が実際に操作できるように、デスクトップとノートを切り分けて、展示台数を増やしているのも特徴だ。20台以上のMacを触ることができるようになっている。

iMacは利用シーンごとに展示しているのが特徴

実は、最初に店舗を訪れて感じたのは、他店のMac売り場にはない「賑やかさ」である。言い方を変えれば、やや「繁雑」な印象を受けなくもない。

特に、什器の選定や、展示方法などに一定のルールを設けているアップルストアやアップルショップ、Apple Premium Resellerが、本体製品のまわりに配置するPOPを、値札とスペックなどの最小限のものにし、こざっぱりとしていることに比べると、その差を強く感じた。

だが、ヨドバシカメラ マルチメディア梅田では、あえて、この「繁雑さ」を武器に展示を行っている。Mac売り場の最も目立つ場所に配置した「季節ごとのコンセプト展示コーナー」では、売り場としてのお洒落さよりも、自宅でMacを設置した時の雰囲気にこだわった。

現在、展示しているコンセプトは、「新生活」。入社、転勤、進入学などの生活の変化の中で、新たにMacを利用するというシーンを演出してみせた。デジカメで撮影した写真を利用して作成したフォトブック、iTunesでの音楽再生シーン。さらにはプリンタやデジタイザといった周辺機器や、日常使用するボールペンやコップまで取り揃えた、演出のきめ細かさだ。

季節ごとのコンセプト展示コーナーは手作り感を前面に打ち出す。売り場よりも、あえて部屋の様子を再現した

「お洒落に見せるだけでは訴えきれないものがある。そこで、使うシーンを演出し、POPも手作りのものを多用し、来店客に訴えかけるものとした。こうした展示にしたことで、実際の利用シーンをイメージしてもらいやすくなっている」という。

周辺機器、アクセサリーの品揃えを充実

もうひとつ、心がけているのが、周辺機器、アクセサリーの品揃えだ。地下1階に売り場を移動したのに伴い、目に見えた形で展示が充実したのがこの部分である。

周辺機器、アクセサリーの展示はヨドバシ梅田ならではの注力ポイントのひとつ

「MacBookを持ち運ぶためのバッグ、あるいは移動した際に便利なアダプターなどのオプション製品、サードパーティー製のハードディスク、Macを使うために便利な書籍類。こうしたものを品揃えし、ワンストップですべてが揃うようにした。ここにくれば、Macに関するものがすべて揃う売り場を目指した」という。

アクセサリーの展示強化では、特にバッグは女性層を意識した品揃えに力を注いでいる

同時に、ソフトウェアパッケージの展示も、従来に比べて拡張している。Macの購入者の中で、最も増加しているのがWindows PCユーザーからのスイッチだ。

「これまでWindows PCを所有していたユーザーが、Leopardから標準搭載されたBootcampによって、Windows OSが動作するようになったことを知り、Macに移行したいという問い合わせが確実に増加している。感覚的には3割程度増加しているのではないだろうか」とする。

Windowsユーザーからのスイッチを促進。Windows Vistaのパッケージも展示

Windowsを動作させるために必要な製品を紹介

それに対応するために、売り場でもMacBookにWindowsをインストールした形での実演展示を行い、さらに、Windowsを利用するために必要な製品の紹介POP、Windowsのインストール代行サービスまでを用意して、初級レベルのユーザーでも、安心して「MacでWindows」の環境を実現できるようにしている。

MacBookの横には、Windows Vistaのパッケージまで展示しているから、まさに至れりつくせりである。

Windowsの代行インストールサービスも実施している

売り場の拡張とともに強化したもののひとつが書籍。Macに関する書籍を並べた

iPod/iPhone・他店の追随を許さないスピーカーの品揃え

iPod売り場。丸い展示台2つと、右の四角い展示台にそれぞれiPodを展示。多くの人が試用できる

一方、iPod、iPhoneの展示にも目を向けてみよう。iPodシリーズは、2つの丸い展示台と、四角い展示台1つを配置し、そこに本体を展示している。

同店では、3階の携帯オーディオ売り場にもiPodを展示しているが、Mac売り場のiPodコーナーで、特に力を入れているのが、Mac本体同様に、やはり周辺機器、アクセサリーの品揃えだ。なかでも、スピーカーは壁面に約50種類の製品を展示し、ユーザーの利用環境と好みにあわせて選択できるようになっている。スピーカーの品揃えでは他店の追随を許さないといえよう。

iPod用スピーカーの展示は、他店の追随を許さない品数

「iPodを購入するユーザーが最も重視するのが、実は、ケースなどのアクセサリーや、スピーカーなどの周辺機器の品揃え。一緒に購入したり、後で購入するという点で、品揃えの多い店に来る傾向が高い。品揃えは自信を持って誇ることができる」

特に、ポイント制度を導入しているヨドバシカメラの場合、ケースなどのアクセサリーをポイントで購入するというiPodユーザーも多い。その点でも品揃えの多さがリピーターを獲得することにつながっている。

iPhoneの展示に関しては、ソフトバンクモバイルの販売コーナーを、Mac売り場に隣接する形で設置。ここにはiPhoneおよびそのアクセサリー製品だけを展示するという手法をとった。1階の携帯電話売り場には、ソフトバンクモバイルのコーナーが別途用意されており、ここでもiPhoneが展示販売されている。それに加えて、地下1階に、iPhone売り場を配置しているという2重構造での展示だ。

Mac売り場に隣接する形で設置れさたソフトバンクモバイルの売り場。ここではiPhone 3Gだけを扱う

iPhone 3Gは10台が触れる形で展示されている

さらに、地下1階のiPhone売り場の雰囲気を、Mac売り場同様に黒基調としていることから、Mac製品の売り場そのものが、さらに拡張したようにも見える。

「iPod touchを検討しているお客様にも、すぐにiPhoneを比較していただけること、また、iPhoneとMac本体を連動した購入を検討するといった使い方の提案も可能になるので、売り場を隣接している効果は大きい。相乗効果が出ている」と語る。

iPhoneコーナーでも、すぐに触れる環境で展示しているのが特徴だ。Mac売り場を担当する山崎氏は、「もっと体験型の要素を取り込んでいきたい」と語る。具体的な利用シーンを想定した展示を広げることで、自分が使うシーンを、納得した形で検討してもらえる売り場づくりを目指すという。

そして、「日本一のMac売り場を目指したい。ヨドバシカメラの中では、東京・秋葉原のマルチメディアAKIBAに負けない売り場を目指す」と抱負を語る。昨年10月以降の売り場面積の拡張に伴い、それに基づいた売り上げ拡大も果たしているという。

体験型要素を取り込みながら、日本一のMac売り場を目指す同店では、今後、どんな売り場が作られるのか。これからの展開も楽しみである。