ノートパソコンの売りが「身軽さ」だとすれば、デスクトップパソコンの売りは「速さ」ではないでしょうか。速さは操作のキビキビ感に直結しますから、日々の作業効率にも影響してきます。今回は、最新型iMacのキビキビ感の理由に迫ります。

"キビキビ感"がもっとも重要

パソコンを使うとき"もっとも気になる"部分はどこでしょうか? ハードウェアデザインやシステムの完成度を置いておくとすれば、意のままに操れるかどうか、キビキビとした反応が得られるかどうかではないでしょうか。その反応のよさが、生産性を向上するだけでなく、操作時のストレスを和らげてくれます。考えてもみてください、キーを1回叩くたびに一瞬待たされるとしたら……そんなパソコン、誰も使いたがりませんよね。

だから、Macを選ぶときに「処理速度」は重要な指標となります。その判断材料としては、CPUの性能(クロック数やコア数)、搭載するメモリの容量、内蔵ディスクの種類(HDDまたはSSD)などが挙げられますが、どれを欠いても速度低下の原因となります。

とはいえ、Webブラウジングやメールの読み書き、iTunesでの音楽再生といった比較的軽めの処理では、それほど高いCPU性能は求められません。数年前に発売されたMacでも、これらの処理は軽々やってのけるでしょう。メモリの容量も、不足するとシステム全体の反応が鈍くなる -- 仮想メモリの一部をディスク上に退避させる「スワップ」と呼ばれる処理が発生するため -- ものの、操作のキビキビ感には直接影響しませんし、いざとなれば増やすことが可能です(MacBook Airのように増設できないMacもあります)。

実際のところ、日常作業でのキビキビ感にもっとも強く影響するのは、内蔵ディスクの種類ではないでしょうか。内蔵ディスクがSSDであれば、システムの起動がスピーディーに完了しますし、アプリケーションもすぐに起動します。ファイルの読み書きも、HDDに比べ圧倒的に高速です。数年前のMacでも、内蔵ディスクをHDDからSSDに交換すれば、最新機種に劣らないほどのキビキビ感で作業できることでしょう。

しかし、SSDは容量当たりの単価が高く、HDD並の大容量をおいそれと手に入れることはできません。HDDの大容量とSSDの高速さがあれば……そんな要求を満たしてくれるのが、最新のiMac(Late 2012)とMac mini(Late 2012)の一部モデルに採用されている「Fusion Drive」。早い話が、HDDとSSDの"いいとこ取り"で、これからのデスクトップ型Macには必須ともいえる機能です。

「このMacについて」で内蔵ディスクを確認したところ、HDDとSSD各1台が搭載されているにもかかわらず、「Fusion Drive」が1台と表示されています

「システム情報」を表示したところ、1TBのHDDと128GBのSSDが内蔵されていることを確認できました

Fusion Driveのしくみ

Fusion Driveは、SSDとHDD各1台で構成される論理ドライブ -- OSの機能であたかも物理的に存在するかのように構成されたドライブ -- です。iMacを例にすると、1テラバイトのHDDと128GBのSSD各1台が内蔵されていますが、Finderや「このMacについて」では1台のディスクとして認識されています。

システム上は1台のボリュームですから、ユーザはSSDとHDDの関係を意識する必要がありません。1台のディスクとして読み書きできますし、どのフォルダに書き込めば速い/遅いか、といった使い方による性能差も生じません。

ただ、読み書きは(独立して存在する)SSDに直接行うときと変わらないほど高速です。システムの再起動は10秒前後で完了しますし、アプリケーションもDock領域でアイコンが1~2回バウンドする程度で起動します。ファイルの読み書きを伴う処理で待たされることは、かなり減るでしょう。

そのしくみですが、おおまかにいうと「SSDを優先的に使い、容量が不足したらHDDに書き込む」という処理がシステムレベルで実行されています。あわせて使用頻度の高いファイルを定期的にHDDへ再配置し、SSDに空き領域を確保することも行われます。

SSDからHDDへファイルが再配置されるときには、外周部から内周部へ向かって書き込まれます。これは、円盤状の構造を持つHDDの特性を考慮したもので、外周部のほうがアクセス速度に優れ、内周部へ近づくにつれ速度が低下するからです。

このように、SSDの高速性とHDDの大容量を組み合わせたディスクとして無意識に使えるFusion Driveですが、一部の機能に制限があります。それは、1台のFusion Driveに作成できるパーティションは最大2つで、第2パーティションはSSDを参照できない、つまり高速性を発揮できるのは第1パーティションだけ、ということです。パーティションを分割して使い分けよう、と考えている場合には注意しましょう。

Finder上では、特に変わりのない1台の内蔵ディスクとして認識されています

Fusion Driveに作成できるパーティションは最大2つ、しかも第2パーティションは高速化されないという注意点があります