【コラム】

塩田紳二のアンドロイドなう

114 Android Wearを再評価してみる

塩田紳二  [2016/03/18]

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僚誌AndroWireからの移籍で、今回からマイナビニュースを本拠地に連載することになりました(連載バックナンバーはこちら)。Androidに関する様々な旬の話題を、興味の赴くままに紹介しています。以後、お付き合いいただけると幸いです。

さて、今回の話題です。Android Wearのスマートウォッチに関しては、2014年の発売時にLGのG Watchを入手し、評価してきました。しかし、昨年の夏頃を最後に腕につけるのをやめてしまいました。というのは、便利ではあるものの、常に腕につけておくほどの価値がなかったからです。筆者は、もともと、自宅では、腕時計をしないで過ごしているため、常に付けておくのはちょっと負担だったのと、G Watchは、無線LANがないためにスマートフォンも一緒に持っていないと、利用することができなかったからです。

Bluetooth LEの通信範囲は見通し範囲で10メートル程度、このために、マンションなどのコンクリートや鉄筋のある住宅では、距離的には10メートル以下でも間に壁や柱があって、通信できないところが多く、スマートフォンは置いたまま、Android Wearのスマートウォッチだけ身につけておくという使い方ができなかったのです。スマートフォンも持つならば何も腕時計を見る必要はなくて、スマートフォンの画面を直接みればいいだけのことだからです。

写真01: 購入したZenWatch2は、本体がガンメタル色で茶色の革バンドが付いたもの。右側面にリューズのようなボタンがある

しかし、先月、Android Wear 1.4が発表され、筆者が記事で最後に評価した1.1に比べるとかなり機能が追加されたようです。そこで、スピーカーや無線LAN対応しているZen Watch2(WI501Q。写真01)を入手して再度評価してみることにしました。購入したのは色々と事情があって、米国のBestBuyですが、ハードウェアは国内で販売しているものと共通のため、ちゃんと技適マークがあります(写真02)。価格は、149.99ドル(1ドル113円換算で1万6948円)。しかも、今回は、オレゴン州での購入だったため、消費税がかかっていません。

写真02: 安心してください、ついてますよ。というわけでお約束の技適マーク

Android Wearのこれまでを振り返る

Android Wearは、2014年に発表されました。最初のバージョン4.4W(2014年6月)は、KitKat上に構築されましたが、さまざまな情報を見ていくと、本来は、Lollipopベースになる予定だったみたいです。この4.4Wには、4.4W.1や4.4W.2といったマイナーバージョンアップがあり、2014年末にようやくLollipopが登場して、Lollipopベースの「Android Wear 1.0」が登場しました。このとき、正式に文字盤アプリの開発などが可能になりました。それ以前にも文字盤アプリは登場していたのですが、販売されたAndroid Wear機などに搭載されていた文字盤アプリなどを解析して作られたもので、正式なSDKを利用して作られたものではありませんでした。このあたり、立ち上がり時期の混乱が見られます。アンドロイドやAndroid Wearは、「アプリ実行のプラットフォーム」であり、そのために開発者による「市場」(あるいはエコシステム)が形成されています。そこに、ソフトウェア開発の準備が整っていないハードウェアを投入してしまったわけです。Google側には、Lollipopの開発が遅れたという事情があるものの、少なくとも最初からSDKなどの環境は整えておくべきでした。

現在のAndroid WearのGUIのベースは、この次のAndroid Wear 1.1で作られます。このとき、現在のように時計表示から右側にスワイプしていくことでアプリラウンチャーや音声コマンド画面などが表示され、下にスワイプすることでクイック設定画面が表示されるという現在の画面構成の基本が作られました。また、このとき、手首の回転でスクロールするなどのジェスチャー認識機能も搭載されます。また、無線LANやGPSに対応したのもこのときです。すでに前年の発売となっていた一部の機種には無線LANが搭載されていました。逆にいうと、初期に登場したスマートウォッチの中には、無線LANを搭載しながら、ほぼ1年間も使えないままの機種があったのです。

本格的なAndroid Wearの機能発展はこのときがスタートだったといえるでしょう。その後、地図アプリの投入やずっと利用できる低消費電力のアプリの導入などが行われたのち、2015年の8月には、Android Wear 1.3が登場します。機能的にはタッチ操作が可能な文字盤アプリや文字盤のペア設定となる「Together」機能などたいした機能がないのですが、iOSのサポートが開始されます。Android Wear 1.2が飛ばされたのは、何か理由があるのでしょうが、Android Wearの最初となる1.1のあと1.3は3カ月後に出荷されています。

なお、昨年11月には、Android Wearで直接モバイルネットワークをサポートするという発表が公式ブログにあったのですが、対応する予定のLG製のハードウェアが出荷されなかったため、いまのところモバイルネットワーク機能を使うAndroid Wearは登場していないようです。

1.4が来た

その上で、今年2月には、Android Wear 1.4が登場しました。機能としてはスピーカーへの対応ですが、実際に利用できる機能としては、「音声通話」や「ビデオメッセージの再生」、「音声メッセージの送信」などわりと大きな機能が追加されています。また、ジェスチャーも追加されて、スクロールだけでなく、選択や取り消し(前に戻る)といった機能をジェスチャーとして実行できるようになりました。また、システムのベースが、Lollipop(Android 5.0)からMarshmallow(Android 6.0)に変更になっており、実質的にメジャーバージョンアップと言ってもいいぐらいです。

そういうわけで、とにかく、再評価するため、スピーカーと無線LANが着いた機種を捜していたところZenWatch2が価格的にも安く、入手可能だったために、これに決めました。残念ながら、スペックやデザインが良かったというわけではないので、その点は誤解なきよう。なお、購入した時点では、1.3だったのですが、帰国後に1.4へのアップグレードが行われました(写真03)。

写真03: 購入直後は、Android Wear1.3だったが、その後1.4にアップデートされた

1.4になって1週間触った感じ、バッテリが以前使っていたG Watchよりももつ感じがあります(これについては別途検証します)。また、専用ケーブルを装着すると充電専用の時計表示画面(写真04)になるのですが、1.4にアップデートしたら音が鳴るようになりました。やはり、要所要所で音が鳴るというのも確認という意味では必要なことだと思います。スピーカーのない機種では、バイブレーターの振動が音代わりで、「音」として認識できないわけではなかったのですが、「ブーッ」という感じで何かが震えている音よりも、「澄んだ音」が聞こえるほうが、心地がいいのは確かです。身につけていつも使うものなので、こうした心地よさというのも重要かと思います。

写真04: 充電を開始すると、時計と充電状態を示す画面が表示される。このとき1.4では音がするようになった

実際に音声契約のあるSIMを入れたスマートフォンと組み合わせて、音声通話をためしてみたのですが、ちょっと籠もった音がするものの、通話は可能でした。着信だけでなく、電話帳やダイヤルパッドから発信することも可能です(写真05)。ディックトレーシーかウルトラ警備隊かという感じですが、複雑な話をしなければ、これでもいいかという気はします。逆に、周囲に丸聞こえなのでビジネスなどの込み入った話では使いたくない機能といえます。「腕時計型電話」みたいで、格好はいいんですけど、実用性は、Bluetoothのヘッドセットのほうがあるような感じです。

写真05: 1.4には電話アプリが組み込まれており、着信可能で、直接番号を入力したり、スマートフォン側の電話帳を使って発信も可能

また、ジェスチャーの種類が追加されました(写真06)。使って便利だったのは、腕を曲げて時計を見る状態にしたとき、手首を下げる動き(腕を下に振る)で、アプリの起動画面に遷移するジェスチャーです。その後、手首を回してアプリ選択、手首を下げてアプリを起動できます。また、手首を上に上げれば、キャンセルで時計表示(ホーム画面)に戻ることもできます。最初力が入って大きな動きになりがちですが、慣れると軽く肘から先を動かす感じでジェスチャーを認識します。もっともうまくいかないこともあって、ついつい力を入れて腕を振ってしまい、タッチ操作やボタン操作(後述)したほうがラクに思えることも少なくはありません。

写真06: Android Wear 1.4で追加された腕を上下に動かすジェスチャー。1.3までは、写真上にあるように手首をひねってスクロールさせるジェスチャーのみだった。Google社のサイトより引用

その他、一部のメッセンジャー系アプリでビデオメッセージを再生出来る機能もあるようなんですが、そういう相手もいなければ、そういう趣味もないので、試していません。ビデオメッセージとか頻繁に使う人(あんまり見たことないんですけど)には便利なのかなぁ? という感じです。

アンドロイドの公式Blogだと、音声認識コマンドが強化されて、「OK Google、××さんに○○(アプリ名)で□□とメッセージを送信」みたいな文章を解析して動作できるとなっているのですが、メッセージの送り先のユーザー認識がうまくできないせいか単なるWeb検索になっちゃうようです。アメリカ人とかだと、ユーザー名がJhonのような感じでちゃんと発音しても認識できるんでしょうが、日本人の名前やローマ字表記で省略した日本人の名前をちゃんと認識してくれません。もしかしたら、アプリ名称のほうをちゃんと認識していないのかもしれません。アプリを特定できれば、対象ユーザーを登録情報などで絞り込めるからです。ただし、「HangOutでメッセージ送信」と言うとちゃんと認識されて送信相手を聞いてきます。

そういうわけで、「音声関係」の強化点は、便利な部分もある反面、これでAndroid Wearが「便利」になったと手放しで喜ぶようなものではなさそうです。

ハードウェアですが、ZenWatch2は、本体右側に「ボタン」(Crown Button)があります。電源オンに使うほか、軽く押せばホーム画面への復帰(キャンセル)、長押しでアプリ画面の起動、2回押しで画面を消すシアターモードへの移行が可能です。タッチ操作するよりはちょっと便利な感じがあります。

次に気になるのは、バッテリ関係です。というのも、以前使っていたG Watchは、外出先で使いすぎると夕方にはバッテリが切れていたし、通知だけを表示させていると、バッテリ寿命は、もっても一日程度でした。Marshmallowでは、Doseモードなど、使わないときの消費電力対策などが組み込まれており、たとえば、仕事中にスマートフォンを机の上に放置しておくだけでもずいぶんとバッテリのもちが違いました。ただ、ZenWatch2は、無線LANも装備しているため、Bluetoothで接続できない場合に無線LANを使います(写真07)。このあたりが消費電力にどう影響するのかなどを含め、次回は、他の機能などについてご報告することにしましょう。

写真07: ZenWatch2には無線LANが搭載されており、Bluetoothで接続できない場合に無線LANを使う。アクセスポイント設定はスマートフォン側で登録したものを利用する

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インデックス

連載目次
第118回 「Android N」プレビュー その2、Nの改良点
第117回 「Android N」プレビュー その1
第116回 「ZenWatch 2」の充電動作を調べて見た
第115回 Android Wearのバッテリ関連機能を検証してみる
第114回 Android Wearを再評価してみる
第113回 Nexus 7をカーナビにしてみた(その3)
第112回 Nexus 7をカーナビにしてみた(その2)
第111回 Nexus 7をカーナビにしてみた(その1)
第110回 画面キャプチャに便利なシステムUI調整ツール
第109回 2016年の注目はタブレット
第108回 「Nexus 5X」と「USB Type-C」
第107回 「Nexus 5X」と「LTE」
第106回 Android 6.0 ストアとアプリ
第105回 Nexus 5XでみるAndroid 6.0 Marshmallow
第104回 「Nexus 5X」を買いました
第103回 「Android Mのプレビュー3」を試す(前編)
第102回 Android M プレビュー2 (準備編)
第101回 「LG G Watch」のその後
第100回 「Zenefone 2」買いました
第99回 ちいさくてかわいい「LG L20」、イギリスで買ってみました
第98回 「Google日本語入力」アップデートで何が変わった?
第97回 どのアプリで開く? 「インテント」の仕組み
第96回 「OneNote」をつかってみた
第95回 ロリポップのマテリアルデザインをまとめてみる
第94回 「Email Markup」って何?
第93回 Outlookは来たけれど
第92回 Office Previewつかってみた
第91回 Google INBOXを使ってみる
第90回 AndroidWareの文字盤を自作する
第89回 Android Ware Lollipop版
第88回 「Nexus Player」を試す - ソフトウェア編
第87回 「Nexus Player」を試す - ハードウェア編
第86回 「Nexus 9」ファーストインプレッション - ソフトウェア(Lollipop)編
第85回 「Nexus 9」ファーストインプレッション - ハードウェア編
第84回 充電しながらUSBデバイスが使えるホストケーブル
第83回 Android "L"プレビューとAndroidWareがアップデート
第82回 ちょっとイケてる「Kyocera Hydro Vibe」
第81回 Android "L" バッテリ消費を監視する
第80回 アクセスポイントの基本を知る
第79回 OneDriveとGoogleドライブ
第78回 シェルのネットワーク関連コマンド
第77回 "L"の中身
第76回 アンドロイドウェア(Android Wear)は暫定バージョン?
第75回 LGのスマートウォッチ「G Watch」
第74回 "L"がくる
第73回 次は「Lollipop」か? その前にKitKatが4.4.3に
第72回 VPNを使う その3 「VPNをアンドロイドから使う」
第71回 「Chromecast」とは?
第70回 VPNを使う その2 「VPNサーバーを立てる」
第69回 VPNを使う その1 「基礎編」
第68回 アンドロイドのストレージ
第67回 「NVIDA SHIELD」のソフトウェア
第66回 「NVIDA SHIELD」のハードウェア
第65回 HDMIとMHL、SlimPort - ディスプレイ接続端子を整理してみる
第64回 「LG L1 II」を買ってみた
第63回 アンドロイドに音楽を「聞かせる」
第62回 住所録の秘密
第61回 Outlook.comをカレンダーに表示する
第60回 ソースコードはどこにある?
第59回 AndroidのBluetoothテザリングとWindows 8.1
第58回 NFCでマニュアル参照を簡単に
第57回 あらためて「ポータブルアクセスポイント」をきちんと試してみる
第56回 「ビルド番号」ってなに?
第55回 画面キャプチャをバッチファイルで実行
第54回 adbコマンドをちょっと解説
第53回 「android 4.4 "Kit Kat"」で画面を録画する
第52回 「android 4.4 "Kit Kat"」の内部的な変更点
第51回 「android 4.4 "Kit Kat"」を解説
第50回 「Nexus 5」を買ってみた
第49回 Google Keepはリマインダーだった
第48回 android 4.2からサポートされた「ワイヤレスディスプレイ」
第47回 画面キャプチャー
第46回 ヘッドセットの秘密
第45回 Nexus 7のLTEモデル
第44回 Nexus 4買いました。アメリカで。
第43回 ブートローダーとfastboot
第42回 Jelly Beans 4.3 Returns
第41回 Chromecast、テレビに刺さる
第40回 デバイスマネージャでAndroidの位置を確認
第39回 新しいNexus 7を買ってみた
第38回 Jelly Beans 4.3
第37回 レノボ「K900」を国際版化
第36回 NFCで遊ぶ
第35回 自宅で簡単ファイル転送
第34回 レノボ「K900」のカスタマイズされたJelly Beansを見てみる
第33回 CloverTrail+のスマートフォン、レノボ「K900」を買ってみた
第32回 AndroidがBluetooth 4.0を正式サポート
第31回 ARMの次世代CPU「Cortex-A12」
第30回 SDKをインストールしよう
第29回 ウィジェットを活用
第28回 QRコードでお手軽設定
第27回 XPERIA Tipoとロンドンアンロック屋事情
第26回 diNovoキーボードを使う
第25回 キーボードをカスタマイズする
第24回 Androidキーボードのしくみ
第23回 2段階認証を使おう
第22回 いらないプリインストールアプリを削除
第21回 64bitなんて必要なのかしら?
第20回 アメリカでアンドロイドの読書端末を買ってみた
第19回 Android 4.2の新機能
第18回 Android Beamって何だ?
第17回 NFCで何ができる?
第16回 Nexus 7をアメリカで買ってみた
第15回 AndroidをPCにつなぐと
第14回 Androidの記憶領域
第13回 Google Nowを使ってみる
第12回 AndroidのUSBホスト機能
第11回 デュアルSIMを使ってみる
第10回 キーボード一体縦型Androidマシン
第9回 Androidの言語設定
第8回 アンドロイドに道を聞く
第7回 Google Playはどうやってアプリの公開を制御しているのか?
第6回 「Acer A100」がICSになった
第5回 つながっているのはACアダプタ、それともUSB端子
第4回 スマートフォンを普通の電話としてつかってみた
第3回 Androidからの通知を表示可能な腕時計
第2回 アームを誤解してませんか?
第1回 MWCで見たAndroid

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