グーグルの「Nexus 5X」を入手しました。仕事柄、最新のAndroidを使う必要があり、昨年は、Nexus 9を購入しましたが、2013年に買ったNexus 5が予定ではAndroid 6.0までのアップデートになる関係で、そろそろNexusシリーズのスマートフォンを買う必要があったからです。とはいえ、Nexus6Pではなく、Nexus5Xにしたのは、実用を考慮してためです。

写真01: 「Nexus 5X」は、Android 6.0を搭載し、指紋リーダーを備えたスマートフォン。対応周波数で北米、香港、その他地域用の3つのモデルがある

筆者は、大きなスマートフォンはあまりスキではありません。というよりも、大きく、そのぶん重量も増えるために、持ち歩きに負担を感じることがあるからです。実際、Nexus 6Pは、178グラムで、縦16×横7.7センチです。これだとシャツの胸ポケットに入らないわけではありませんが上にはみ出し、かなりの重さを感じます。これに対してNexus 5Xは、136グラムで縦14.7×7.3センチで、ポケットからわずかに飛び出す程度で済みます(いろいろ差はあるものの、ワイシャツなどのポケットは13センチ前後の深さがあります)。

今回は、外観やスペックなどの印象をレポートすることにして、次回、中断していたAndroid 6.0ことMarshmallowについての解説に戻ることにしましょう。

Nexus 5の後継となる5X

Nexus 5Xは、Nexus 5と同じくLGエレクトロニクスが製造しています。この点でも、5Xは、5の完全な後継機といってもいいでしょう。Nexusシリーズは、グーグルが企画、販売するスマートフォン、タブレットのシリーズで、いわば「リファレンスマシン」的な位置付けになります。グーグル自身によるアンドロイドの標準的な実装となり、アンドロイド同士で動作に違いがあった場合でも、Nexusシリーズでの動作が「正しい」と考えられ、アプリ開発などでは、これを基準として考えることができます。また、今回のMarshmallowのテクニカルプレビューのように正式公開前にプレビュー版が提供されるのもNexusシリーズの特徴です。

特に独自アプリは搭載されず、逆に、Nexusシリーズのアンドロイドに搭載されたアプリなどは、標準アプリとして他社の製品にも搭載されます。また、2年間は、最新版のアンドロイドが提供されるルールになっていて、他の端末にさきがけて、アンドロイドの最新版が提供されます。

前世代であるNexus 5は、2013年に出荷が開始され、KitKatを搭載しました。その後、Lollipop(Android 5.0)へアップデートされ、現在ではMarshmallow(Android 6.0)の提供が行われています。

まずは、スペックでNexus 5と5Xを比較してみましょう(表01)。こうしてみると、SoC部分以外には、特に大きな変化はありません。ディスプレイサイズがわずかに違い、このために筐体サイズや重量がわずかに変化しています。画面の解像度も同じ、メモリや外部記憶容量の構成も同じです。簡単にいうと、Nexus 5を64bit化したものがNexus 5Xといえます。

表01

外観

Nexus 5Xは、外観的にもNexus5のスタイルを踏襲しています(写真02)。比較的エッジの立った辺やフラットな液晶面、硬質なボタンなどです。しかし、側面に配置されているボタンや端子類の配置は大きく変わりました。電源ボタンは同じく右側(5Xを正面から見た場合の右)ですが、かなり位置が下がり、上から1/3ぐらいの場所に来ています(写真03)。このため、手に持ったときに親指がかかりやすい位置になりました。Nexus 5では、電源ボタンの下にSIMスロットがあり、電源ボタンの位置はかなり上にありました。実際、下からの距離でいえば、Nexus 5Xのほうが下になり、かなり押しやすくなりました。もっもと、5Xでは、指紋センサーを使ってスリープを解除できるため、電源ボタンの利用頻度はへっているのですが。

写真02: Nexus 5X(左)とNexus 5(右)。液晶サイズがわずかに違うため、サイズもわずかに違う。また、Nexus 5Xでは上部、下部のカーブがない

写真03: 右側面。Nexus 5X(左)は、電源ボタンの位置が下に下がっている。電源ボタンの下にあるのは、ボリュームキーで、Nexus 5(右)ではSIMカードスロットになっている

電源ボタンの下にはボリュームキーがあります。Nexus 5では、左側にありましたが、片手での操作(一部のアプリではボリュームキーをページ送りなどに利用している)が親指だけですむようになりました。また、Nexus5で上部にあったヘッドホン端子は、底部(写真04)に移動し、上部には、なにもありません(写真05。マイク用の小穴のみ)。

写真04: Nexus 5Xの底部には、USB TypeCコネクタ(中央)とヘッドホン端子(左)がある

写真05: 本体上部には操作する部分はなく、マイクの小穴があるだけ

SIMスロットは、左側に移動し、こちら側にも何も操作する部分はありません(写真06)。

写真06: 左側面には、ナノSIMカードのスロットがある

背面部分は大きくかわりました。まず、カメラが上部中央にうつり、その下に指紋センサーが配置されています(写真07)。また、オンラインドキュメントによるとカメラの下にNFCのアンテナがあるようです。このためか、レンズ部分は少し高くなっていて、俗に言う「目玉おやじ風」です。ですが、レンズが中央にあるほうが、近接撮影などがやりやすくなります。遠方の撮影は、端でも中央でもあまり違いはないのですが、たとえば、机の上の書類を撮影するような場合、レンズ位置が端にあると、本体を書類中央からずらさねばならず、少し違和感があります。また、持ったときに指がかかりやすいというのも緩和されます。ですが、Nexus5Xの場合、撮影ではいいのですが、レンズの下に指紋リーダーがあるため、ここを手探りで捜すときにレンズにさわってしまいやすいという別の問題もあります。

カメラは、赤外線レーザーによるオートフォーカス機能が搭載されたため、レンズの横にLEDフラッシュとならんで楕円形の窓があります。

写真07: Nexus 5X(左)の背面は、上部中央にカメラ、その下に指紋リーダーがある。カメラレンズの左はLEDフラッシュとオートフォーカス用赤外線レーザーの照射窓。NEXUSやLG ロゴの配置なども似ているが、Nexus 5(右)がレリーフ状なのに対して5Xでは印刷になっている

スペックに関して

前述のように、64bit化した以外、Nexus 5Xは、Nexus 5とスペック上の大きな変化はありません。ただし、体感速度はかなり向上しています。CPUコアが、4コア(32bit Krait)から、Cortex-A57×2コア、同A53×4コアになっています。この構成はbig-LITTLEと呼ばれていて、動作負荷に応じて、高性能なA57と低消費電力のA53を切り替えて使います。64bit化もあり、たとえば、アプリ画面を開いたり、スクロールさせたときの速度がNexus 5と違います。Nexus 5も十分高速なのですが、同時に使うと5Xのほうが速くなっていることがわかるぐらいの速度差があります。

また、使ったときに違いを感じる部分には「指紋センサー」があります。これは、スリープの解除も可能で、このとき、パターンやパスワードを入力する必要がありません。このため、画面がオフになったスリープ状態から指紋リーダーのタッチですぐに使いはじめることができます。実際に使って見ないと理解しにくいのですが、使い勝手がぜんぜん違います。一度指紋リーダーになれてしまうと、パターン入力などが必要になる電源ボタンによるスリープ解除には戻りたくなくなるほどです。解除の手順としては、セキュリティで画面ロックを「なし」にした状態と同じなのですが、セキュリティ的には、パターンなどと同等以上で、安心さと快適さを両立させているわけです。ただ、指紋リーダーと電源ボタンはそれぞれ独立しており、たとえば、手動でロック/スリープにする場合には、電源ボタンを押さねばなりません。これは、指紋リーダーの用途として「Android Pay」が想定されており、支払のときに指紋認証を使うために、間違ってスリープ状態に入ってしまわないためだと考えられます。

USB端子がTypeCとなり、コネクタの向きがどちらでもいい、充電が速いというメリットはありますが、仕様上ケーブルが太くなり固くなるため取扱が少し煩わしくなることと、ケーブルがまだ高いといった問題もあります。筆者は、USB TypeCとAオスコネクタの変換ケーブルを購入しましたが、1,300円弱とUSBケーブルにしては高価でした。ケーブルがあれば、既存のUSB充電器なども利用可能ですが、充電時間が短いというメリットは専用充電器を使った場合に限られます。なお、Nexus 5Xには、充電用として両側がUSB TypeCになったケーブルが1本付属しています。

ざっと使った感じでは、大きな不満もなく、Nexusシリーズであるため、余計なアプリもなく、通知などが煩わしくない(一部のアンドロイドでは、標準添付アプリの通知がうるさいものがあります)といったメリットもあり、おおむね「合格点」といえるでしょう。ただ、ピュアであるために、「面白くない」といったデメリットもあります。

本稿は、2015年10月27日にAndorid情報誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。