Android Wareのアップデートが開始されました。以前、この連載で解説したように当初搭載されていたAndroid Wareは、KitKat(Android 4.4)ベースの暫定版とでも言うべきもので、当初の予定では、Android Wareは、Lollipopベースになる予定でした。

ですが、開発が間に合わなかったのか、これまで出荷されたAndroidWareデバイスでは、KitKat AndroidWareが搭載されていたのです。

AndroidWareの最新版であるLollipop AndroidWareのバージョンは5.0.1になっています。なお、スマートフォン、タブレット用のLollipopもほぼ同じタイミングで5.0.1になりました。すでにNexusシリーズ向けにOTAも開始されています。現状、Lollipopを使ったシステムイメージには、まだいろいろと問題があるようです。たとえば、5GHz帯無線LANの扱いなどにまだ不備があり、すべてのチャンネルを利用できないようです。このため、アクセスポイント側の設定によっては、5GHz帯の無線LANが使えなくなったように見えます。

だいたい、5.0になって、すぐに5.0.1の配布が行われているのですから、おそらく致命的な障害もあったのだろうと想像されます。

そういうわけで、Lollipopはしばらく落ち着かない状態が続きそうです。だとすると、Nexusシリーズ以外のハードウェアでLollipopへのアップデートが行われるのは、まだまだ先になりそうです。通常、SIMフリー版などの事業者が扱わないハードウェアの場合、比較的早期にシステムアップデートが行われますが、障害などが多い、初期段階のものはスキップされることが少なくありません。というのは、システムのアップデートでは、OTA配布のためのコストや、アップデート作業やアップデート後のユーザーサポートが発生するために、ある程度までシステムが安定するまでは、待つことがほとんどなのです。そして事業者扱いのハードウェアに関しては、アンドロイド自体が落ち着いてから最終的な検証などが行われるため、さらに時間がかかります。来年の夏ぐらいになってしまう可能性もあります。

そういう状態なので、AndroidWareのほうも、また、アップデートなんてことになる可能性もあります。

Android Wareのアップデートが行われ、バージョンは5.0.1になった

Lollipop Android Wareの変更点

Lollipop Android Wareでは、目立った大きな改良点はありません。どちらかというと内部的な改良が多く、使い方はほとんど変わりません。ハードウェアによっては、追加機能などがあるようですが、筆者が利用しているLGのG Watchでは特に機能追加はありませんでした(機能追加があった機種もあるようです)。

ただ、デザインがちょっと変化するなどの細かな改良点はあります。便利になったと感じるのは、スマートウォッチ側で起動するWatchアプリが起動した順にリストの先頭に並ぶようになったことです。「OK Google」や画面のタップで「音声入力待ち」になったとき、すぐ下に過去に起動したアプリや設定などの標準機能が起動した順に最大3つ表示されるようになりました。このため、一回起動したWareアプリは2回目からは、リストのいちばん下にある「開始」を使う必要がありません。利用頻度が高いアプリならずっとリストに残ることになり、起動が簡単になりました。

「設定」 ⇒ 「端末情報」が少し変わっています。まず、モデル名をタップすると、BluetoothのMACアドレスが表示されるほか、ソフトウェアバージョンの項目をタップすると、Android WareのバージョンとGoogle Play開発者サービスのバージョンが表示されるようになりました。ただし、このために、俗に「イースターエッグ」と呼ばれるアンドロイドのバージョンにちなんだアニメーションの表示はできなくなりました。

また、バッテリ駆動時間がKitKat Android Wareに比べると伸びたような感じです。購入直後にバッテリ消費を見たときにはほぼ1日という感じでしたが、Lollipop Android Wareでは、1日半から2日ぐらいは動作するようになり、少なくとも購入当初よりは長い時間利用できるようになりました。ただ、実用を考えると、3日ぐらいの寿命が欲しいところですが、一回充電を忘れても翌日の午後ぐらいまではなんとか動いてくれるので、少しは安心というところでしょうか。

「設定」 ⇒ 「端末情報」で「モデル」をタップすると、BluetoothのMACアドレスが表示される。MACアドレス先頭の番号は、ベンダーコード、CIDなどと呼ばれ、割り当てを受けた組織、企業に固有のものになる。「2C:54:CF」から始まるMACアドレスは、LG社に割り当てられたもの

ソフトウェアバージョンをタップするとAndroid Ware(おそらくスマートウォッチ側のモジュール)やGoogle Play開発者サービスのバージョン番号が表示される

音声入力画面に表示されるリストには、「設定」などの標準項目に加え、Android Wareアプリ(スマートウオッチ側で動作するアプリ)の最近起動した項目が3つまで表示されるようになった

Watch Face APIが利用可能に

KitKat AndroidWareは、基本的な機能は搭載されていましたが、いくつか欠けていた機能もありました。その1つが時計の表示を開発するための「Watch Face API」です。Watch Faceは、日本語でいえば「文字盤」なのでしょうが、実際には、針やカレンダー表示など時計の見た目そのものをさします。

KitKat Android Wareは、正式には、時計アプリの開発ができませんでした。しかし、標準添付のWatch Faceがいくつかあり、出荷された製品やソースコードなどを解析することで、時計を表示するWatch Faceアプリが作られていました。Googleとしては、正式なAPIが登場するまで控えるようなアナウンスをBlogで行っていましたが、最新機器であるスマートウォッチで、安物時計のような文字盤にユーザーが満足できるはずはなく、数多くのWatch Faceアプリが作られました。

しかし、正式な方法でないことなどから多少の不具合などがありました。たとえば、インジケーター(バッテリや未接続などの表示)や「Hot Word」(OK Googleという音声認識が可能になったときに表示されるメッセージ)と文字盤上の情報が重なるなどの問題がありました。また、聞くところによると、消費電力で大きな問題があったWatch Faceアプリもあったようです。

Watch Face APIの核心部分は、アンドロイドのサービス(バックグラウンドで動作し続けるプログラム)です。Watch Face専用のサービス(オブジェクト)が定義してあり、必要なタイミングで画面描画を行うプログラムコードを起動します。この部分などをプログラムとして記述することで、簡単にWatch Faceアプリを作ることができます。また、このとき、時刻や日付以外の情報を描画することも可能で、たとえば、スマートフォン側のバッテリ残量などを表示することも可能です。

さて、Playストアには、さまざまなWatch Faceが登場していますが、安全性を求めるなら、正式なWatch Face APIに対応したものがいいでしょう。グーグルによれば、以下のカテゴリに登録されているのは、Watch Face APIのみを利用しているものだといいます。

https://play.google.com/store/apps/collection/promotion_3000f68_wear_watch_faces

1つの目安は、Watch Face APIは12月10日にリリースされたとのことなので、アップデートがこの日以降になっているものは、Lollipop Android Ware用に対応がされている可能性があります。ただし、Lollipop Androidでも動作するように改良されただけで、Watch Face APIを使っているかどうかまでは分かりません。

バッテリやバイブレーションオフといった状態を表す「インジケーター」や音声入力が可能なことを示す「OK Google」の文字(これをHotWordといいます)の位置が他の表示と重なっていたり、色などの関係で見えづらいといった場合は、Watch Face APIに正しく対応していない可能性があります。

インジケーターやHot Wordの表示位置は、画面上の固定された9カ所の位置を選択するしかなく、自由な位置に表示させることができません。Watch Face APIを使えば、少なくとも、この9カ所のうちどこに表示させるかを指定することはできますが、Watch Face APIを使わないとデフォルトの位置にしか表示できません。また、インジケーターとHot Wordは表示するときに、輝度を落とした半透明の背景のオンオフを指定できるのですが、何もしないと背景なしのままになってしまいます。

つまり、インジケーターや"OK Google"が時計の表示と不自然に重なって見づらくなっているようなアプリは、Watch Face APIを使っていない可能性があります。

Watch Face APIに対応していない可能性のあるWatch Faceアプリの場合、ときどきバッテリの消費状態を監視するといいでしょう。とつぜん動かなくなるなどの現象が起きれば、誰でも、アプリに問題があることがわかりますが、バッテリを大きく消費しているような現象はなかなかわかりにくいものです。

スマートウォッチ側のバッテリ消費はAndroid Wareコンパニオンアプリ(スマートフォン側のAndroid Wareアプリ)で、画面右上の歯車アイコンから設定に入り「時計の電池」を開けば、スマートウォッチのバッテリ消費状態がわかります。スマートウォッチに最初から付属してきたWatch Faceを使ったときとグラフの傾きなどを比べてみるといいでしょう。

Lollipop Android Wareのみに対応している正式アプリは、Playストアの「ウォッチフェイス」カテゴリに表示される

アップデート日が2014年12月10日以降になっていれば、Watch Face APIに対応している可能性は高い

Android Wareコンパニオンアプリの「設定」 ⇒ 「時計の電池」を開く

と、スマートウォッチ側のバッテリ消費情報が表示され、消費電力の多いコンポーネントがリスト表示される

本連載は、2014年12月22日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。