【コラム】

塩田紳二のアンドロイドなう

74 "L"がくる

塩田紳二  [2014/07/01]

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6月26日(現地時間)、米国で開催されたGoogle IOで、次世代アンドロイドについての発表がありました。ただし、製品や出荷の発表ではなく、開発者向けのプレビュー開始の発表です。このため、名称は"L"とだけ呼ばれ、Lollipopなどの具体的なコードネームについての言及はありませんでした。ただ、アルファベット一文字、特に小文字表示にしてしまうと数字の1と区別が付きにくい文字なので、ここではダブルクオートで括って"L"と表現することにします。

"L"で大きく変わるのは、ユーザーインタフェースの「コンセプト」です。新しいユーザーインタフェースは「Material Desgin」(あるいは単にMaterial。ここではマテリアルとします)と呼ばれます。「マテリアル」は、「デザイン」であり、おもに見た目の変更が大きくなっています。ただし、アプリケーションに対して、「スタイル」というかたちでユーザーインタフェースの方向性を決めています。

たとえば、Kitkatまでは、機能に応じて画面が切り替わっていくという見え方が、マテリアルでは、アニメーションで画面が変化するという見え方が推奨されます。ただし、これは、開発者が細かくアニメーションを作れ、ということではなく、用意されたGUI部品を使うだけで、基本的なアニメーション動作は勝手にやってくれるという感じです。

デザインガイドによればアニメーションとは「共有しているステージの振り付け」とされていて、「(アプリ内の)すべてのアクションは同じ環境の中で行われ」るとなっています。また、画面内のオブジェクトは「(ユーザー)が変形と認識するような途切れることがない連続した経験として提示され」る、となっています。KitKatまでは、アプリは複数のビュー(画面)を持っていて、必要に応じてこれを切り替えて表示していました。実際問題としては、アプリ内で画面構成が大きく変化せざるを得ない部分はどうしてもあるので、ページ遷移的なアニメーションも含まれるとは思いますが、基本的には、ページ切り替えではなく、アニメーションで画面を変化させていくというのがマテリアルの基本になるようです。

また、色使いも大きく変わるようです。アンドロイドは、GUIにテーマ機能があって、差し替えることで全体的な配色などを変えることができました。ただ、あまり使われておらず、システムのバージョンアップで、ときどき変更される程度、あるいは、メーカーによっては、テーマ機能で全体的な統一感と他社との差別化を行っているところもあります。

マテリアルでは、どちらかというとワンポイント的なものも含めて、色、特にパステル調の色を使うようにするのが基本方針のようです。ユーザーの注目を惹くというような目的で、どこかに色を使い、逆に、さほど注目を集める必要がなければ、白いままにしておくといった感じでしょう。このため、これまでのKitkatなどに比べると、全体的に画面の印象が明るくなった感じがあります。

マテリアルの「物質」らしいところとしては、影による奥行き方向の表現があります。たとえば、画面上の2つの領域を区別するために、片方の領域が上にあるような表現として周囲に影(ドロップシャドウ)を付けるといった使い方がされます。たとえば、電卓のアプリケーションで、結果の表示される部分と、キーの部分は色が違っていますが、結果の表示される部分には、影がつけられていて、キーボードの部分とは奥行き(高さ)が違うことが表現されています。

"L"開発者プレビュー

マテリアルでは、1つのデザインで、多くの解像度に対応するようになっているといいます。そうした実際を公開されたデベロッパープレビュー(Nexus 5および2013年版Nexus 7)で見てみることにしましょう。プレビューに付属する標準アプリのうち、スマートフォン、タブレットに共通なのは、「電卓」アプリのようです。

起動してみると、KitKatとはデザインが違っており、まず気がつく「マテリアル」らしさは、結果表示の部分に「影」が付けられていてテンキー部分とは違った領域であることが示されていることです。

白と緑の間に影が表示されている

スマートフォン(Nexus 5)では、関数キーは、右側に隠れていて、緑のラインが見えています。これを左側へドラッグすると、関数キーが表示されるのですが、このとき、テンキー部分はだんだんと暗くなっていき、関数キーが完全に出ると影に入ったようにテンキーの数字はうっすらとしか見えない状態になります。

スマートフォン版では、関数キーは右側にしまわれた状態で、ドラッグすることで左側に引き出すことができる。このとき、背景になるテンキー部分は段々と暗くなっていく

スマートフォンでは、本体を横向きにすれば、関数キーは画面の右側に表示されます。これに対して、タブレットでは、縦向きのとき、関数キーは、テンキーと表示領域の間に最初から置かれています。ですが、横向きにしたときには、スマートフォン同様、関数キーは右側にテンキーとならんで表示されます。

スマートフォンとタブレットの縦向きと横向きの表示。実際のサイズに合わせて調整してある。"L"ではテンキー部分の高さがほぼ同じになるように調整されている

Android 4.4.4 (KitKat)の電卓は、スマートフォンでは、縦向きの場合、関数キーをメニューを使って切り替えるようになっています。横向きにしても、これは同じです。これに対してKitKatタブレット(Nexus 7)では、関数キーは縦向きでも横向きでも常に表示されています。

KitKatの電卓アプリの縦、横表示。テンキーの高さが違い、また、配列も変わってしまっている

KitKatと"L"を比べると、"L"では、スマートフォンとタブレットで、テンキー部分のサイズがほぼ同じになるように表示されているのに対して、KitKatでは、このあたりがあまり考慮されているようには見えず、さらに横向きでは、テンキー内部の数字の配置までも変化しています。

また、KitKatでは、電卓のキーは区切られて表示されているのに対して、マテリアルでは、テンキーや演算キー、関数キーで背景の色はかえてあるものの、キー自体を区切っては表示していません。このあたりがマテリアルの「シンプル」、「フラット」という感じでしょうか。また、KitKatの電卓は、全体がかなり暗い印象ですが、"L"では、パステル調の緑や青、そして結果表示は背景が白とかなり明るくなった印象があります。

マテリアルでは、用途や目的の違った領域を示すために影を付けるので、できるだけシンプルな表示のほうが影があることがわかりやすい、という配慮なのかもしれません。

本稿は、2014年6月30日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。

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インデックス

連載目次
第118回 「Android N」プレビュー その2、Nの改良点
第117回 「Android N」プレビュー その1
第116回 「ZenWatch 2」の充電動作を調べて見た
第115回 Android Wearのバッテリ関連機能を検証してみる
第114回 Android Wearを再評価してみる
第113回 Nexus 7をカーナビにしてみた(その3)
第112回 Nexus 7をカーナビにしてみた(その2)
第111回 Nexus 7をカーナビにしてみた(その1)
第110回 画面キャプチャに便利なシステムUI調整ツール
第109回 2016年の注目はタブレット
第108回 「Nexus 5X」と「USB Type-C」
第107回 「Nexus 5X」と「LTE」
第106回 Android 6.0 ストアとアプリ
第105回 Nexus 5XでみるAndroid 6.0 Marshmallow
第104回 「Nexus 5X」を買いました
第103回 「Android Mのプレビュー3」を試す(前編)
第102回 Android M プレビュー2 (準備編)
第101回 「LG G Watch」のその後
第100回 「Zenefone 2」買いました
第99回 ちいさくてかわいい「LG L20」、イギリスで買ってみました
第98回 「Google日本語入力」アップデートで何が変わった?
第97回 どのアプリで開く? 「インテント」の仕組み
第96回 「OneNote」をつかってみた
第95回 ロリポップのマテリアルデザインをまとめてみる
第94回 「Email Markup」って何?
第93回 Outlookは来たけれど
第92回 Office Previewつかってみた
第91回 Google INBOXを使ってみる
第90回 AndroidWareの文字盤を自作する
第89回 Android Ware Lollipop版
第88回 「Nexus Player」を試す - ソフトウェア編
第87回 「Nexus Player」を試す - ハードウェア編
第86回 「Nexus 9」ファーストインプレッション - ソフトウェア(Lollipop)編
第85回 「Nexus 9」ファーストインプレッション - ハードウェア編
第84回 充電しながらUSBデバイスが使えるホストケーブル
第83回 Android "L"プレビューとAndroidWareがアップデート
第82回 ちょっとイケてる「Kyocera Hydro Vibe」
第81回 Android "L" バッテリ消費を監視する
第80回 アクセスポイントの基本を知る
第79回 OneDriveとGoogleドライブ
第78回 シェルのネットワーク関連コマンド
第77回 "L"の中身
第76回 アンドロイドウェア(Android Wear)は暫定バージョン?
第75回 LGのスマートウォッチ「G Watch」
第74回 "L"がくる
第73回 次は「Lollipop」か? その前にKitKatが4.4.3に
第72回 VPNを使う その3 「VPNをアンドロイドから使う」
第71回 「Chromecast」とは?
第70回 VPNを使う その2 「VPNサーバーを立てる」
第69回 VPNを使う その1 「基礎編」
第68回 アンドロイドのストレージ
第67回 「NVIDA SHIELD」のソフトウェア
第66回 「NVIDA SHIELD」のハードウェア
第65回 HDMIとMHL、SlimPort - ディスプレイ接続端子を整理してみる
第64回 「LG L1 II」を買ってみた
第63回 アンドロイドに音楽を「聞かせる」
第62回 住所録の秘密
第61回 Outlook.comをカレンダーに表示する
第60回 ソースコードはどこにある?
第59回 AndroidのBluetoothテザリングとWindows 8.1
第58回 NFCでマニュアル参照を簡単に
第57回 あらためて「ポータブルアクセスポイント」をきちんと試してみる
第56回 「ビルド番号」ってなに?
第55回 画面キャプチャをバッチファイルで実行
第54回 adbコマンドをちょっと解説
第53回 「android 4.4 "Kit Kat"」で画面を録画する
第52回 「android 4.4 "Kit Kat"」の内部的な変更点
第51回 「android 4.4 "Kit Kat"」を解説
第50回 「Nexus 5」を買ってみた
第49回 Google Keepはリマインダーだった
第48回 android 4.2からサポートされた「ワイヤレスディスプレイ」
第47回 画面キャプチャー
第46回 ヘッドセットの秘密
第45回 Nexus 7のLTEモデル
第44回 Nexus 4買いました。アメリカで。
第43回 ブートローダーとfastboot
第42回 Jelly Beans 4.3 Returns
第41回 Chromecast、テレビに刺さる
第40回 デバイスマネージャでAndroidの位置を確認
第39回 新しいNexus 7を買ってみた
第38回 Jelly Beans 4.3
第37回 レノボ「K900」を国際版化
第36回 NFCで遊ぶ
第35回 自宅で簡単ファイル転送
第34回 レノボ「K900」のカスタマイズされたJelly Beansを見てみる
第33回 CloverTrail+のスマートフォン、レノボ「K900」を買ってみた
第32回 AndroidがBluetooth 4.0を正式サポート
第31回 ARMの次世代CPU「Cortex-A12」
第30回 SDKをインストールしよう
第29回 ウィジェットを活用
第28回 QRコードでお手軽設定
第27回 XPERIA Tipoとロンドンアンロック屋事情
第26回 diNovoキーボードを使う
第25回 キーボードをカスタマイズする
第24回 Androidキーボードのしくみ
第23回 2段階認証を使おう
第22回 いらないプリインストールアプリを削除
第21回 64bitなんて必要なのかしら?
第20回 アメリカでアンドロイドの読書端末を買ってみた
第19回 Android 4.2の新機能
第18回 Android Beamって何だ?
第17回 NFCで何ができる?
第16回 Nexus 7をアメリカで買ってみた
第15回 AndroidをPCにつなぐと
第14回 Androidの記憶領域
第13回 Google Nowを使ってみる
第12回 AndroidのUSBホスト機能
第11回 デュアルSIMを使ってみる
第10回 キーボード一体縦型Androidマシン
第9回 Androidの言語設定
第8回 アンドロイドに道を聞く
第7回 Google Playはどうやってアプリの公開を制御しているのか?
第6回 「Acer A100」がICSになった
第5回 つながっているのはACアダプタ、それともUSB端子
第4回 スマートフォンを普通の電話としてつかってみた
第3回 Androidからの通知を表示可能な腕時計
第2回 アームを誤解してませんか?
第1回 MWCで見たAndroid

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