あちこちで言ってますが、筆者は、画面の大きなスマートフォン(いわゆるファブレット)に対して否定的です。画面が大きいのがよければタブレットを使えばいいし、大きな電話機は、持ち歩きに邪魔で、面倒な感じがしています。もちろん、大型化することでバッテリ容量を増やせるため、長時間動作が可能になるというメリットもあるとおもうのですが、シャツの胸ポケットに入れるとかさばって邪魔な感じがするし、かがもうとするとカラダに当たるとか、ストラップで首からぶら下げると大きすぎて邪魔とか、結果的に取り回しが面倒で、カバンにいれておきたくなる感じがイヤなのです。

だったら、6インチというなら潔く7インチのタブレットでもいいんじゃないかという気がしないでもありません。

昨今の日本の通信事情を考えると、通話とデータ通信を別契約にしたほうが、経済的です。LTEサービスが始まってから、3Gサービスよりも毎月の最低支払額が上がってしまい、筆者は、仕事用に電話番号を公開している契約のほうは3G契約のまま使っています。そうなると、通話用とデータ用の2つの端末が必要ですが、通話用は、スマートフォンである必要はありません。もっとも、電話帳データの転送とかがものすごく面倒だし、自動で同期させることもできないようなので、実際には、2つのスマートフォンを持ち歩いている人も少なくないでしょう。

筆者も、2つのスマートフォンを持ち歩いています。データ用は、Nexus 5を使い、安価なデータ通信専用のSIMを入れています。通話用は、古い折りたたみ携帯電話を持ち出すこともあるし、スマートフォンにすることもあります。ただ、こっちのほうは、通話専用で使うので、できれば、小さい方が便利で筆者としては3インチクラスのものが好みです。手元にいくつか3インチのスマートフォンはあるのですが、SIMロックがかかっていたり、Android 2.3であったりと、ちょっとした不満がないわけではありません。

米国のオークションサイトであるeBayは、いまでは、業者が出店することも多く、アマゾンに近い感じになってきていて、ショッピングプロテクションのような仕組みも提供されています。それで、Xperia Tipoを購入してみたのですが、見事に不良品、交換はできないので、メーカー修理を代行して代金20%引きにするか(ただし時間がかかる)、返金のどちらかと言われ、返金を選択しました。Xperia TipoならわざわざeBayを使わないまでもEU圏の通販で買えるのでは? と思われるかもしれませんが、Xperiaの多くの機種は、インターナショナル仕様(実際にはEU圏仕様で型番の末尾がi)と米国仕様(末尾がa)の2種類あり、日本で利用することを考えると、米国仕様のほうが対応周波数という点で有利なのです。その点で、eBayのスマートフォン販売は、同じものがいくつも出品されている関係なのか、安価なことが多く、米国仕様のものを比較的簡単に入手できます。

とりあえず、eBayで、他の機種をと考えていましたが、スペインでの取材の折、市内の携帯電話の店(事業者の店ではなく純粋に端末だけを売っている店)で、LG電子の「L1 II」(写真01)という機種をみつけました。スペインでは、ほぼ同じで、対応周波数帯が違うL3 IIという機種は大量に売っていたのですが、L1 IIは1つだけしか見つけられませんでした。というのも、この機種、イギリスには出荷されているものの、スペインではどの事業者も販売していない製品なのです。筆者は、この3インチ液晶の機種が一目で気に入りました。

写真01: LG L1 II(E410)は、3インチの液晶を搭載したアンドロイドスマートフォン

バルセロナでは、ほぼ同じサイズのL3 II(E430)という機種は結構売られており、価格的にも同じ程度なのですが、対応する3Gの周波数帯が違います(表01)。L3 IIは、EU圏内で使うには十分なのですが、それ以外の地域では、対応周波数帯が少なすぎます。これに対して、L1 IIは、850や1900という米国でも使われている周波数帯にも対応しています。

■ 表01
LG L1 II E410 L3 II E430
SoC Qualcomm MSM7225 Snapdragon S1
CPU Cortex-A5
クロック周波数 1GHz
GPU Adreno 200
画面解像度 240x320
画面サイズ 3.0インチTFT 3.2インチIPS
ストレージ 4ギガバイト
メモリ 512メガバイト
2G 850/900/1800/1900MHz
3G 850/900/1900/2100MHz 900/2100Mhz
HSPA速度 下り7.2/上り5.76Mbps
無線LAN 802.11b/g/n
スタンバイ時間 400時間 700時間(3G)
通話時間 4時間 10時間(3G)
サイズ 102.9×59.2×12.2mm 102.6x61.1x11.9mm
重量 105g 107g

とりあえず、EU圏にいる間、ドコモのFOMA契約のSIMを入れて使って見ました。海外にドコモの携帯電話を持ち込むと、最初にネットワークに接続したときにSMSを受信します。このメッセージもちゃんと日本語で表示が可能でした。というよりも、この機種はアンドロイドで、言語設定には、「日本語」がない(写真02)のですが、ドコモのSIMを入れて立ち上げると、言語設定が日本語に自動的に切り替わりました(写真03)。ただし、完全な言語設定ではなく、設定やLG独自のアプリなどの表示は英語のままになります。アンドロイドの標準アプリは、日本語に対応しているので、ちゃんと表示が切り替わりますが、設定などはカスタマイズがされているようなので、英語のままになっています。

写真02: 設定にある言語選択のリストには、日本語は含まれていない

写真03: ドコモのSIMを装着したら日本語が自動選択された

着信も問題なく、特に感度が悪いということはありませんでした。実は、以前、海外メーカーの2G/3G対応のスマートフォンを使ったとき、3Gで明かな感度不足を感じました。通話がしにくいほど音声にノイズが乗ってしまい、すぐに2Gに落ちてしまいます。日本から持っていったドコモの端末では、同じホテルの部屋でもさほど音質が落ちなかったことから、機種固有の問題と考えています。もちろん、ちゃんと検査したわけではないんですが。

スペック表にあるように液晶は、240×320ドットの解像度しかないため、画面に表示される日本語の品質はお世辞にもいいとは言いがたいものですが、通話専用として、電話帳を見る程度なら特に問題はありません。小さい文字では漢字表示がかすれてみえるため、ちょっと読みにくいのですが、メールやSNSを使わないので、特に利用中に問題を感じることはありませんでした。

ただ、画面ロックの最中に着信があったとき、操作に慣れないと、切ってしまうことがありました。画面ロック中は、専用の着信画面(写真04)が表示されて、左側の着信アイコン(上がっている受話器)をドラッグでスライドさせて、着信させるのですが、慣れるまでは取り損ねることがありました。周囲に表示される大きな輪に内側の緑の円が達するまでドラッグすると着信(写真05)で、その手前で指を離してしまうと切れてしまうことがありました。

写真04: ロック中に着信があるとこのような画面になる。左側の受話器アイコンをドラッグしてロック解除と着信を行う

写真05: 受話器アイコンに触れると、まわりに緑の円が表示され、これを外側の白い円に触れるまでドラッグして動かすことでロックが解除される

インストールされているのは、Android 4.1.2(Jelly Bean)なんですが、ホーム画面(写真06)や設定画面(写真07)、アプリ画面(写真08)などはカスタマイズされており、また、カレンダーや電話帳、ギャラリーなどもカスタマイズ版に置き換わっています。

写真06: ホーム画面は、標準のものに似ているが、テーマ設定が可能であるなど、カスタマイズが行われている。下のお気に入りバーのアイコンも変更可能

写真07: 設定画面も項目が追加されていたり、アイコンが違うなどカスタマイズされている。システムは、Android 2.1.4である

写真08: アプリ画面は、標準アプリ(Apps)、ユーザーが追加したアプリ(Downloads)、ウィジェットと3つのタブでグループ分けされている

液晶の下には、4つのタッチボタンがあり、解像度の高い上位機種のように画面に表示されるソフトボタンにはなっていません。ボタンは「もどる」、「ホーム」、「メニュー」、「最近使ったアプリ」の4つあり、「最近使ったアプリ」によるアプリリストには、Google Nowの呼び出しボタンがあります。ただし、ソフトボタンのNexusシリーズのようにホームボタンの上ドラッグでGoogle Nowを起動することはできません。

通知シェード(通知領域のドラッグで表示)もカスタマイズされており、ここで設定が可能なほか、組み込みアプリのQuickMemoを起動することもできます。QuickMemoは、画面キャプチャを行い、画像編集状態にするもので、指で線などを書き込んで画像として保存する機能です。また、ここに表示できる設定アイコンの順番やオンオフもカスタマイズ可能です。昨年1月に発表された製品なので、わりとこなれている感じがあります。

本稿は、2014年3月7日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。