Nexus 4が日本国内でも販売開始されました。しかし、タイミング的にはちょっと遅すぎる感じです。というのも、Nexus 4は、LTEに対応しておらず、現時点の新製品としては、スペック的に不利だからです。ここまで待った理由は、android 4.3に搭載された、各国の規制情報の電子表示でしょう。4.3から、アンドロイドは、日本で言う技適マークなどの表示を電子的に行うことが可能になりました。Appleと違って、多数のメーカーが、多数の端末を提供しているため、規制情報の電子表示の優先度はあまり高くありませんでした。メーカーや機種によっては、特定の地域でのみ販売されることが多かったからです。Appleは、全世界での販売に対してごく少数のモデルを提供するため、部品が変更になる従来の物理的な規制表示は、コストアップにしかなりません。電子表示を行うことで、完全に同一の部品を使う同一モデルを複数の国や地域で共有が可能になります。これに対して、アンドロイドで、電子規制表示のメリットがあるのは、フラッグシップモデルなどを複数の国で展開するサムソンなどごくわずかなメーカーしかありません。

Nexus 4

ただ、問題として、これまでの電池交換が可能だった機種では、電池室のシールで対応が可能だったのに対して、最近のバッテリ交換が不可能なモデルでは、この対応ができないことがあります。電子表示のメリットは、どちらかというと、バッテリ交換が可能かどうかという点のほうが大きいかもしれません。ですが、人件費の安い国で製造するような場合、シールを貼るという手は残っています。

筆者も、遅ればせながら、Nexus 4を入手しました。でも、買ったのは米国のGoogleが直接販売しているもので、米国の知人宅に配達してもらい、先週の米国取材の際に受け取りました。なぜ、米国でわざわざ購入したのかというと、すでに米国では安売りが始まっていて100ドル(100円換算で1万円!)も値段が下がったからです。もう1つは、前記の規制情報の電子表示が可能になったため、米国で買っても、国内で堂々と使えることです。

ただ、安売りが始まったということは、在庫処分を意味し、通常なら、次世代機種の登場が近いことを意味します。すぐに旧機種になってしまうことが分かっていて買うのはどうか? と思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、筆者のような仕事をしていると、そろそろ次の機種を購入しておかないと仕事に差し支えることになるのです。

アンドロイドの次のバージョンであるKit Katが登場したとき、いち早く入手できるハードウェアとしてNexusシリーズが必要になるからです。筆者は、これまで、Galaxy NexusとNexus 7をそのために利用していました。しかし、これまでの経過を考えると、Galaxy Nexusのシステムバージョンアップは、現在のJelly Beanで最後になりそうだからです。Nexus 7があるじゃないかと思われるかもしれませんが、Nexus 7は、Wi-Fi専用なので、モバイルネッワーク関連の機能がなく、これに関係する機能を調べることができません。このため、タブレットとスマートフォンの両方が必要になるわけです。

(表01)は、これまでに登場したNexusシリーズスマートフォンの登場時期や最終システムバージョンなどをまとめたものです。これを見ると、2つあとの世代の機種が登場した時点の成熟バージョンで更新が止まっています。これから予測するに、Galaxy Nexusの最終システムは、現在のandroid 4.3 Jelly Beanか、その最終版になる可能性が高いのです。

表1 (クリックで拡大)

一般に、システムのメジャーアップデートの直後のバージョンには、多くの不具合が発見され、バージョンアップ間隔が短くなります。このため、システムアップデートを打ち切る場合には、最新版の手前の段階の成熟したバージョンで打ち切るのが普通です。このようにすることで、新バージョンの対象機種を減らし、開発リソースを有効に使えることになります。これを考えると、Galaxy Nexusには、次世代版のKit Katが載らない可能性が高いわけです。

一週間つかってみた

先週の米国取材では、Galaxy Nexusに代えて、このNexus 4をメインのアンドロイドデバイスとして使ってみました。当初、バッテリ交換ができないことが不安でしたが、Galaxy Nexusと同等かそれ以上で、少なくとも朝7時ぐらいから夜10時すぎまでの外出などの間十分バッテリが持つ感じです。現地のSIMなどを入れてみましたが、Galaxy Nexusよりは、スタンバイ状態の電力消費が少なく、さらにモバイルネットワークの電力消費(セルスタンバイ)は少なくなっている感じです。

体感速度的には、Galaxy NexusとNexus 4で大きな違いは感じませんが、アンドロイドデバイス全般に感じる、ときどき動作が引っかかるような動きは、少ないような気がしますが、具体的に計測したわけではないので、「気のせい」の範囲かもしれません。ただ、カタログスペック上は、クロック周波数やデュアルコアとクワッドコアといった違いがあり、基本性能的にはアップしています(表02)。体感速度に大きな違いを感じないのは、おそらくハードウェアスペック的には十分な領域に達しているからでしょう。

表2 (クリックで拡大)

ディスプレイサイズがほとんど同じで、サイズも重量もほとんどかわりません。このため手に持ったときの感覚もほとんど一緒です。ただ、Nexus 4は背面がツルツルした素材なので、ちょっと手触りが違います。

米国の販売店などをまわった感じでは、Nexus 4に関しては、あまりアクセサリ類が出回っていない感じでした。Galaxy Nexusのときには、米国のBest Buyなどの家電量販店でケースを入手することができましたが、Nexus 4に関しては、サンフランシスコ近辺の3カ所のBest Buyやフライズエレクトロニクスあたりでも扱いがありませんでした。同じような売り方になっているNexus 7は、2012年版のほうならば、ケース(カバー)を見つけることはできましたが、2013年版に関しては、同じように店頭での扱いがありません。米国の店頭のアクセサリの扱いは、7インチクラスのタブレットは、iPad MiniかKindle Fireや同HDがほとんどを占めています。もちろん、通販でなら探すことは可能ですが、店頭で扱いがないということは、Nexusシリーズは、サードパーティビジネスが成立しにくい状態にあるのかもしれません。

本稿は、2013年9月20日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。