前々回にカスタマイズされたレノボ「K900」を紹介しましたが、どうやら、中国外で販売される「国際版」は、ちゃんとPlayストアなどが入るようです。また、rootを取る方法などもあちこちで紹介されはじめました。

とりあえず、前々回の記事で、オリジナルの中国版K900の紹介は終わったので、インターネットからの情報を元に、K900を国際版化してみることにしました(写真01)。ついでにrootをとり、システムの言語を「日本語」に変更してみることにします。

写真01: 国際版化したK900。LENOVOのオリジナルのスタート画面やウィジェットに加え、GMailなどのグーグルサービスのアプリも利用できるようになっている

なお、こうしたインターネットないの情報の常として、Webページがなくなっていたり、ファイルがダウンロードできなくなっていることもあります。また、K900の今後のシステムアップデートなどの状態により、ここで紹介した方法が無効になることなどもありますので、十分に注意してください。どのような場合でも、筆者および当サイトは一切の責任を持ちませんのであしからず。

これから説明する手順のなかでK900を初期化するため、必要なファイルはすべて他のマシンなどに待避させておいてください(sdcard領域も初期化します)。これからの作業は、USBケーブルを接続して行いますが、念のため先にK900をフル充電状態としておいてから作業を始めてください。

ADBドライバのインストール

作業を行う前に、利用するPCにADBドライバをインストールしておきます。これは、PC側からアンドロイド機を制御するためのUSBデバッグを使うためのドライバです。万一、ROMイメージの書き込みなどに失敗した場合でも、ADBドライバとアンドロイドSDKのインストールされたPCがあれば、SDKのコマンドにより復旧できる可能性があります(ただしここでは復旧方法については解説しません)。アンドロイドSDKのインストールについては以前の記事を参考にしてください。

アンドロイドSDKをインストールしたPCにK900をUSBケーブルで接続します。通知領域に「USB Connected」という通知が出るので、これをタップしてページを開きます(写真02)。

写真02: USB接続したのち、通知領域のメッセージをタップするとこのページが開く

ここにUSB debug modeという項目があるのでチェックボックスをオンにします。確認のメッセージボックスが出ますがOKで先に進みます。

すると、PC側のエクスプローラーからMTPによるドライブとは別にCD扱いのドライブが見えるようになります。PCの設定状態によっては、自動再生のダイアログが開くかもしれません。このドライブをエクスプローラーで開きます(写真03)。

写真03: USB debug modeで接続するとPC側にはこのようにデバイスドライバー用のドライブが見えるようになる

ここに「LeDrivers.msi」というインストールパッケージがあるので、これを開いてADBドライバのインストールを開始します(写真04)。

写真04: LeDrivers.msiを実行するとドライバインストールウィザードが起動する

これでADBドライバがインストールされました。念のため、テストしておきましょう。アンドロイドSDKのコマンドであるADBを使い、adb shellコマンドをコマンドプロンプトから実行してみます。「shell@android:/ $」というプロンプトが表示されれば成功です。exitコマンドでシェルから抜けておきます。

国際版ROMイメージの書き込み

K900のROMの差し替え方法などについては、いろいろなやり方があるようですが、いちばん単純なやり方だったのは、こちらのリンク先のXDA Developersの記事です。

投稿したolegfusionという方が国際版のROMイメージやroot取得に必要な差し替え用のsystemイメージをインターネット上のストレージサービスに置いてくださっているようです。ただし、こうしたファイルはいつまでもあるとは限らないので、ここでは、記事中のURLは記載しません。上記記事にあるリンクを使って必要なファイルを取得してください。

国際版化自体は、ROMイメージを転送したあと、fastbootモードでK900を起動、SDカードからのアップデートを行いフラッシュメモリを書き換えるというものです。特に難しい手順ではないので、簡単にいくでしょう。

まずは、記事のURLを参考にK900の国際版ROMイメージファイルを入手し、ファイルをK900の「/sdcard/SDFUSE」ディレクトリに転送します。

ファイルが転送されたことを確認したら、K900の電源をオフにします。バイブレータが動いて電源がオフになったことを確認したら、ボリュームキーの「+」(上側)を押したまま、電源キーを押して電源を入れます。LENOVOロゴが出たらキーから指を離してかまいません。これでK900がfastbootモードで起動します。fastbootモードとは、PC側などからイメージファイルを書き込んだり、SDカードからROMイメージをアップデートするなどの特殊な起動方法です。PCでいえばBIOS画面のようなものです。

起動すると(写真05)のような画面になるので、ボリュームキーを使い「SDUPDATE」を選択し、電源キーで実行させます。下のほうに経過が表示され、正常に動作している間は、一番下のラインの上をドットが動きます。止まったまま反応がないようなら問題ですが、ドットが動いてるようならしばらくメッセージが表示されなくても問題ありません。

写真05: ボリューム+キーと電源ボタンを同時に押してK900を起動するとfastbootモードになる。ここでは、ボリュームキーの+と-を使ってメニューを選択し、電源キーで実行させる

終了したら、またボリュームキーと電源キーで今度は、POWER OFFを選択し、一旦電源を切ります。その後、普通に電源を入れ、立ち上げるとシステムが初期化状態になっているはずです。

システムを初期化

これでエラーがなければいいのですが、筆者の場合、これだけではうまくいかず、内部ストレージを完全に消去する必要がありました。というのは、Playストアからのアップデートがすべてエラーになってしまっていました。最初、内部ストレージのみを初期化して、SDカード相当の部分を残してみたのですが、それでもエラーになり、SDカード部分もあわせて完全に初期化したところ、エラーが解消されました。なので、初期化作業を行うため、再起動後の初期設定を適当に終わらせます(Googleアカウントも登録しないで言語は英語のまま)。

「Setting」の「Backup & reset」にある「Factory data reset」を選択します(写真06)。表示されたページの一番下にある「Erase SD Card」のチェックボックスもオンにして「reset Phone」をタップして初期化を実行します。

写真06: ROMイメージの書き込み終了後、一回初期設定を済ませたら、「Setting」→「Backup & reset」のページで「factory data reset」を行う

その後、再起動されて、また初期設定の言語選択状態に戻るはずです。ここから通常のやり方で初期設定を行います。ただし、Google側にバックアップされた情報のリストアは行わないほうがいいでしょう。これで国際版化は終了です。基本的にはこれだけで普通に使えるようになりますが、言語設定を「日本語」にできるようにしておきます。

日本語設定

K900側でPlayストアから「More Locale 2」というアプリをダウンロードしてインストールします。しかし、まだ実行はしません。

次にK900とAndroid SDKがインストールしてあるPCをUSB接続し、adb shellコマンドでシェルに入り図01のコマンドを実行します。このコマンドはMore Locale2をインストールしてないと無効です。pmはパッケージマネージャコマンドで、これは、More Locale 2(パッケージ名はjp.co.c_lis.ccl.morelocale)に設定を変更可能にする権利を与えるものです。

■図01

pm grant jp.co.c_lis.ccl.morelocale android.permission.CHANGE_CONFIGURATION

これで、More locale 2が正常に実行できるようになったので、K900側でMore locale 2を起動し、言語として日本語を選択します。ただし、日本語化しても、日本語メッセージなどが含まれていないため、設定などは英語のままになります。一部のメッセージのみ日本となります。

rootの取得

最後に記事にあるrootの取得方法についても解説しておきましょう。ただし、通常の使用では、rootを取る必要はありません(と言われてもやらないと気がすまない人がいるんですよねぇ)。

rootを取るためには、インストールしたROMイメージのうち/system部分を差し替える必要かあります。最初に示したolegfusionさんの記事によれば、そのためのイメージファイルを作成してくれたとのことなので、これをフラッシュメモリに書き込みます。これでrootを取得できます。なお、この作業を行うためには、前述したようにPC側にADBドライバの組み込みが必要です。

なお、この/systemのイメージは、最初の手順で書き込んだシステムイメージ(国際版ROMイメージファイル「K900_ROW_1_S_2_009_0047_130603.inb」)に対応するもので、他のイメージファイルを使った場合には利用できない可能性が高い注意してください。この/systemイメージは、ROMイメージファイルから抽出したものに変更を加えたものなので、他のROMイメージファイルでは、/systemイメージが異なる可能性があるからです。ですが、後述するコマンド自体は/systemイメージを検証しているわけではないので実行できてしまい、間違って書き込むと最悪、K900が起動できなくなり、俗に言う「レンガ」になる可能性もあります。リスクのあることなので、rootを取る必要がなければやらないほうがいいでしょう。そもそもこのfastbootコマンドは、適当なファイルを指定しても接続したアンドロイド機のフラッシュメモリに書き込んでしまうので注意の必要なコマンドなのです。

まずは、PC側で、最初に紹介した記事の「Part Three」にあるURLからsystem.img.gzファイルをダウンロードします(system img rootedのところのURL)。

次にK900をfastbootモードで起動したのち、USBケーブルでPCと接続します。その後、アンドロイドSDKにある「fastboot.exe」コマンドを使い図02(fastbootへのパス設定とsystem.img.gzのパスに注意)の2つのコマンドをコマンドプロンプトから実行します。最初のコマンドは、システム領域のイメージファイルを消去するもので、次のコマンドで新しいシステムイメージを書き換えます。この作業を途中でやめたり、コマンド終了前にK900の電源を落とさないように注意してください。いわゆる「レンガ」になってしまう可能性があります。

■図02

fastboot erase system
fastboot flash system system.img.gz

コマンドがエラーなく終了したら、K900を再起動します。これでrootが取得できたはずです。確認のため、adb shellでログインして、「su」コマンドを実行してプロンプトの最後の文字が「#」に変わればOKです。

やはり、標準的なアンドロイドのツールがあるほうが安心して利用できます。ですが、K900には、主なLenovoのツールも残っています。また、スタート画面などはカスタマイズされたままです。標準とは違う部分もありますが、画面切替に3Dのアニメーション(写真07)が指定でき、かなり快適に動作します。rootを取れば、元に戻すことも可能だとは思いますが、このままでも特に問題はなさそうです。

写真07: 国際版化してもレノボのオリジナルの機能は残っており、たとえばホーム画面ではページ切替に3次元アニメーションを付けることなどが可能になっている

しばらく使って見ましたが、やはりClover Trailの性能は高く、アプリの起動や利用が軽快です。いまのところ特にアプリ利用での問題はなく、Googleのサービスも問題なく使えています。

本連載は、2013年7月26日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。