グランド・キャニオン第2回目は、トレイルでのトレッキングのお話をします。トレッキングとは歩くことで、ハイキングとほぼ同じ意味ですが、ハイキングより少しハードなものを指します。

"エンジェル"とは名ばかりの過酷な、ブライト・エンジェル・トレイル

トレイルビューオーバールックからのブライト・エンジェル・トレイルの眺め

グランド・キャニオンには、3本のポピュラーなトレイル(ハイキング用の道)がある。1本はリム・トレイルといって、サウス・リムビレッジのビューポイントに沿って敷かれているもので、前回お話したマーサー・ポイントやホピ・ポイントなどにも行くことができる。これは、一般的な観光ルートで、舗装もされており、トレッキングをするという感じのものではない。それこそ、ハイキングという感じだ。あと2つが、ブライト・エンジェル・トレイルとサウス・カイバブ・トレイル。

ブライト・エンジェル・トレイルは、サウス・リムビレッジにある、ブライト・エンジェル・ロッジの裏から出発するトレイルで、谷底のファントム・ランチまで続いている。最初は、スイッチバックを繰り返しながら下っていくので、ある程度歩いても「歩いている割には標高が下がらない」と感じるかもしれない。ブライト・エンジェル・ロッジは、トレイルの出発・到着地点付近に位置しており、どの観光ツアーでも必ず立ち寄る。なので、もし1時間ぐらい時間があれば、5分だけでもトレイルを下ってみるとよい。5分程度では、まだオレンジの壁にはならず、白い壁しかないのだが、それでもすぐ横から迫ってくるような壁の迫力に圧倒される。ちょうど5~10分の場所に、数メートルのトンネルがあるので、時間のない人はそこで引き返すといいだろう。

1.5マイル(2.4km)の地点に最初のレストエリア(休憩所)があり、トイレと水(夏期のみ、冬期閉鎖)がある。体力に自信のない人は、そこを目安に下りて行くといいだろう。体力が人並み以下の私たち(笑)では、そこまで1時間かかった。ほとんど日陰はなく、休憩するポイントもない。しかし、ここまで下りてくると、オレンジの壁が目の前にそびえ立ち、「グランド・キャニオンを下りてきたー」という感じがする。

私たちが下りたのは夏だったので、日差しも強く、帰りが大変だった。暑いし、疲れるし、10歩も歩かないうちに、休憩をしたくなる。といっても、日陰はないし、座れるような場所もほとんどない。加えて、水もあまり持っていなくて、非常に辛かった。結局、上りとなる帰りは、倍以上の2時間半もかかり、なんとか上までたどり着いたという感じだった。夏のトレイルは、準備をきちんとして行かなければいけないと身に沁みた。ちなみにファントム・ランチまで下りるのは、約8時間かかる。

下り始めてすぐの所にあるトンネル。時間がない人はここを目安に

簡単・絶景・オススメ! サウス・カイバブ・トレイル

サウス・カイバブ・トレイルは、イースト・リムのヤキ・ポイント近くから出発するトレイルで、シャトルバスでしかアクセスできない。谷底のファントム・ランチまで続き、さらには、ノース・カイバブ・トレイルへと続き、コロラド川を挟んでサウス・リムの逆側、ノース・リムの上まで続いている。

ブライト・エンジェル・トレイルは、1.5マイル下っても、視界が開けることがないのだが、このトレイルは、たった約0.8マイル下るだけで、東側のグランド・キャニオンが全て見渡せ、それ以降はその絶景を見ながら歩くことができる。0.8マイル地点は、ウーアー・ポイント(Ooh Aah Point)と呼ばれ、ここに来ると誰もがその絶景に、「うーーー! あーーー!」と叫ぶことから、その名前が付けられた。地図上では名前が付けられているが、看板などはなく、「みんなが休憩しているから、ここがウーアー・ポイントなんだな」という印象だった。ここまでは所要約30分。

さらに、0.7マイル下ったところに、シーダー・リッジという休憩ポイントがある。ウーアー・ポイントからシーダー・リッジまでは、先ほど開けた景色を見ながら歩くので、どんどん足が進む。このポイントには、トイレも飲み水(夏期のみ)も日陰もある。せっかくトレッキングをするのなら、ここまでは下りてくるといいだろう。写真を撮りながら、ゆっくり下って約50分。帰りも1時間かからないぐらいで上りきることができる。

国立公園の達人達は、みんな、「どちらか1つ歩くのだったら、サウス・カイバブ・トレイル」と言うし、私たちも2つ体験して、そのように思う。景色のこともそうだけれど、サウス・カイバブ・トレイルの方が比較的楽な気がした。もしかしたら、ブライト・エンジェル・トレイルは夏7月、サウス・カイバブ・トレイルは、3月に下ったからかもしれないが……。

日帰りではなく、数日滞在する人は、トレイルを下るという楽しみを覚えて、グランド・キャニオン滞在をエンジョイしてください。それでは、次回はなんと、今話題のスカイ・ウォークのあるグランド・キャニオン・ウエストのお話です。お楽しみに~。

ウーアー・ポイントでくつろぐ人々

シーダー・リッジまで下りてくると、木もトイレも平地もある

ずっとこんな風景を見ながら歩く、サウス・カイバブ・トレイル

(写真:フォトアーティスト飯富崇生)

芦刈いづみのミニコラム:
Double your calorie. Double your fun!

これは、「カロリー2倍で、楽しさ2倍」という意味。グランド・キャニオン発行の新聞、「The Guide」のトレイルのコーナーに書かれていることで、「トレイルを下る時は、エネルギーを使うので、いつもよりたくさん食べて行くと、バテずに楽しいことがたくさんあるよ」という感じのキャッチコピー。これを読んだとき、なるほどなぁと感心し、いつもよりたくさん食べて出発し、飲み物&食べ物を十分すぎるぐらい持って行った。 トレッキングをする際の他の注意点は、以下だ。
  • 履きなれたスニーカーで行くこと
  • 半日のトレッキングで水は最低1リットル
  • 何が起こるか分からないので、十分な食料(「トレイルミックス」という、乾燥のフルーツやチョコレート、ナッツ類が入ったセットが売っている)
  • 帽子・サングラスを持っていく
  • 日差しが強くても風が冷たいことがあるので、長袖パーカーなどを持っていく
それでは、Have Fun!

アクセス情報

最寄の国際空港:マッキャラン国際空港(ラスベガス) 日本からの直行便は2007年4月現在なし。
アメリカ西海岸まで約10時間それから乗り継ぎで約1時間。ラスベガスからセスナツアーで45分。バスツアーで片道5時間。車の場合:ラスベガスからUS93→I-40→AZ64で約5時間。セドナまたはフェニックスからI-17→US180で、セドナから約2時間半、フェニックスから約5時間。

周辺観光地

グランド・キャニオン・ウエスト(スカイウォーク)、セドナ、モニュメント・バレー、アンテロープ・キャニオンなど。