今回は、軍用機の話。ただし軍用輸送機は民間輸送機と事情が似ているので割愛して、主として機体外部に兵装などを搭載する戦闘機・爆撃機の話を中心にする。最近のステルス機は、レーダー反射を抑制するために機内兵器倉に兵装を搭載するが、ここでは外部搭載を前提として話を進める。

兵装搭載量を決める要因

軍用機、なかんずく戦闘機や爆撃機の仕事は、爆弾やミサイルなどといった兵装を搭載して出かけて行き、それを投下あるいは発射して、敵の航空機・艦艇・車両・地上目標などを破壊することにある。

戦闘機にしろ爆撃機にしろ、機体外部に兵装を搭載する際は、兵装架が必要になる。それは胴体の下面や側面、あるいは主翼の下面に設置するのが普通だ。たまに、場所がないという理由でやむにやまれず主翼上面に兵装架を設ける機体もあるが、揚力に影響する可能性が高そうだから、できれば避けたい。

日本や欧米諸国の機体は大抵、兵装架を取り付ける場所、すなわち兵装ステーションに「Sta.○」という形で番号を振っている。Sta. は Station の略で、番号は左舷側から順番に振る。同じ位置で前後に並んでいる場合、前側が先だ。

例えばF-35Aの場合、左主翼下面にSta.1~3、左側の機内兵器倉にSta.4~5、胴体下面中心にSta.6、右側の機内兵器倉にSta.7~8、右主翼下面にSta.9~11、という配分になっている。

これらの兵装ステーションにはそれぞれ許容重量の上限が定められており、それより重い兵装を搭載することはできない。また、完全ステルス形態にする場合、レーダー電波の反射を増やしてしまう外部搭載は不可能なので、使えるのは機内兵器倉内部のSta.4~5とSta.7~8の合計4カ所に減る。この辺の話はまた、回を改めて取り上げてみるつもりだ。

兵装によっては、兵装架に直接取り付けるのではなく、別のアダプタや発射レールを介する場合がある。兵装の重量だけでなく、そのアダプタや発射レールの重量も含めて、許容重量内に納めるようにしなければならない。

搭載できる場所を制約する要因

ところが、何をどこに搭載するかを決めるのは、兵装ステーションごとの許容重量だけではない。

例えば、ミサイルや爆弾に加えて、増槽(使い捨ての燃料タンク)も兵装ステーションに搭載するアイテムの1つだ。増槽を搭載したら、そこから燃料を取り出せなければ仕事にならないので、増槽を搭載する兵装ステーションには燃料の配管を引いておく必要がある。

言い換えれば、「Sta.××は許容重量の面で問題がなくても、配管が来ていないので増槽を搭載できません」ということも起こり得るわけだ。

また、赤外線誘導式ミサイルの中には、探知能力を高めるために、シーカーを冷却する仕組みを備えているものがある。シーカーの冷却に使う、例えば液体窒素のボトルをミサイルの内部ではなく兵装ステーション側に設置すると、その分だけミサイルを小型軽量化できるが、液体窒素のボトルを組み込んだ兵装ステーションにしかミサイルを積めない、という話につながる。実際、MiG-25ではそういう制約があった。

ドラッグインデックス

これも重量の話からは外れるのだが、兵装の外部搭載に際して避けられない話をもう1つ。

旅客機や貨物輸送機の積荷は、基本的にすべて機内に収容している。だから重量は増えるが、空気抵抗は増えない。しかし、戦闘機や爆撃機が兵装を外部搭載すると、空気抵抗が増える。

「満載」とはいえないが、かなりいろいろと兵装を搭載した状態のF-15Eストライクイーグル。勇ましいが、抵抗は大きそうだ

そこで、兵装架や兵装の種類ごとに、ドラッグインデックス、つまり「これを搭載すると空気抵抗がこれだけ増えますよ」という数字を、事前に測定あるいは計算してマニュアルに載せておく。兵装と所要燃料の搭載に関する計画を立てる際には、そのドラッグインデックスを考慮に入れる必要がある。

なぜなら、空気抵抗が増えるのだから速度が落ちるし、燃料の消費が増える。その分を見込んで飛行計画を立てたり、燃料の搭載量を計算したりする必要があるのだ。

外部兵装を搭載するのに、何も搭載しないクリーン状態と同じ抵抗値に立脚してスケジュールを立てれば、実際には計画よりも速度が落ちて遅刻する。クリーン状態と同じ抵抗値に立脚して燃料搭載量を計算すれば、実際には計画よりも燃料を食って、途中でガス欠になる。

昔みたいに非誘導爆弾を大量にぶら下げて飛べば、それだけ抵抗が増えて、速度にも燃料消費にも響いたはずだ。実機でもプラモデルでも、胴体や主翼の下に積める限り大量の兵装をぶら下げている方が「画になる」のは確かだが。その点、最近は精密誘導兵器を少数だけ搭載するスタイルが多くなってきた分だけ、事情は「ややマシ」になったかもしれない。

兵装満載にするための秘策

民航機では「まず、目的地に到達できるだけの燃料を搭載すること」が最優先だが、軍用機だと話が違う。搭載できるペイロード、すなわち兵装の量を優先することがある。

民航機では行わないが、軍用機だと空中給油という手を使える場合がある。使用する機体が空中受油装置を備えていて、かつ、そこに燃料を補給するための空中給油機を内輪、あるいは同盟国から確保できることが条件だ。

空中給油を使えれば、限度いっぱいの兵装を搭載して、燃料は足りない状態でとにかく離陸してしまう。そして、離陸してしばらく飛んだところで空中給油を受けて燃料を補充する。という手を使える。

空中給油を受けるF-15Eストライクイーグル Photo : USAF

戦闘機や爆撃機であれば、目的地に行って兵装を投下すると、その分だけ帰路は身軽になる。だから、兵装を投下した後の帰路に空中給油を受けて、足りない燃料を補うこともできる。こうすれば、兵装の搭載量を優先することができる。

特にジェット・エンジンは気温による影響を受けやすく、気温が上がると推力が減ってしまい、結果として最大離陸重量にも響く。だから、気温が低ければ燃料と兵装の両方を必要なだけ搭載できるが、気温が高くなるとどちらか一方が犠牲になる、ということもあり得る。

そこでやはり、「燃料少なめで離陸して、後から空中給油を行う」という手でフォローすることになる。