【コラム】

航空機の技術とメカニズムの裏側

77 飛行機を巡るさまざまな「○○重量」(3)軍用機の場合

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今回は、軍用機の話。ただし軍用輸送機は民間輸送機と事情が似ているので割愛して、主として機体外部に兵装などを搭載する戦闘機・爆撃機の話を中心にする。最近のステルス機は、レーダー反射を抑制するために機内兵器倉に兵装を搭載するが、ここでは外部搭載を前提として話を進める。

兵装搭載量を決める要因

軍用機、なかんずく戦闘機や爆撃機の仕事は、爆弾やミサイルなどといった兵装を搭載して出かけて行き、それを投下あるいは発射して、敵の航空機・艦艇・車両・地上目標などを破壊することにある。

戦闘機にしろ爆撃機にしろ、機体外部に兵装を搭載する際は、兵装架が必要になる。それは胴体の下面や側面、あるいは主翼の下面に設置するのが普通だ。たまに、場所がないという理由でやむにやまれず主翼上面に兵装架を設ける機体もあるが、揚力に影響する可能性が高そうだから、できれば避けたい。

日本や欧米諸国の機体は大抵、兵装架を取り付ける場所、すなわち兵装ステーションに「Sta.○」という形で番号を振っている。Sta. は Station の略で、番号は左舷側から順番に振る。同じ位置で前後に並んでいる場合、前側が先だ。

例えばF-35Aの場合、左主翼下面にSta.1~3、左側の機内兵器倉にSta.4~5、胴体下面中心にSta.6、右側の機内兵器倉にSta.7~8、右主翼下面にSta.9~11、という配分になっている。

これらの兵装ステーションにはそれぞれ許容重量の上限が定められており、それより重い兵装を搭載することはできない。また、完全ステルス形態にする場合、レーダー電波の反射を増やしてしまう外部搭載は不可能なので、使えるのは機内兵器倉内部のSta.4~5とSta.7~8の合計4カ所に減る。この辺の話はまた、回を改めて取り上げてみるつもりだ。

兵装によっては、兵装架に直接取り付けるのではなく、別のアダプタや発射レールを介する場合がある。兵装の重量だけでなく、そのアダプタや発射レールの重量も含めて、許容重量内に納めるようにしなければならない。

搭載できる場所を制約する要因

ところが、何をどこに搭載するかを決めるのは、兵装ステーションごとの許容重量だけではない。

例えば、ミサイルや爆弾に加えて、増槽(使い捨ての燃料タンク)も兵装ステーションに搭載するアイテムの1つだ。増槽を搭載したら、そこから燃料を取り出せなければ仕事にならないので、増槽を搭載する兵装ステーションには燃料の配管を引いておく必要がある。

言い換えれば、「Sta.××は許容重量の面で問題がなくても、配管が来ていないので増槽を搭載できません」ということも起こり得るわけだ。

また、赤外線誘導式ミサイルの中には、探知能力を高めるために、シーカーを冷却する仕組みを備えているものがある。シーカーの冷却に使う、例えば液体窒素のボトルをミサイルの内部ではなく兵装ステーション側に設置すると、その分だけミサイルを小型軽量化できるが、液体窒素のボトルを組み込んだ兵装ステーションにしかミサイルを積めない、という話につながる。実際、MiG-25ではそういう制約があった。

ドラッグインデックス

これも重量の話からは外れるのだが、兵装の外部搭載に際して避けられない話をもう1つ。

旅客機や貨物輸送機の積荷は、基本的にすべて機内に収容している。だから重量は増えるが、空気抵抗は増えない。しかし、戦闘機や爆撃機が兵装を外部搭載すると、空気抵抗が増える。

「満載」とはいえないが、かなりいろいろと兵装を搭載した状態のF-15Eストライクイーグル。勇ましいが、抵抗は大きそうだ

そこで、兵装架や兵装の種類ごとに、ドラッグインデックス、つまり「これを搭載すると空気抵抗がこれだけ増えますよ」という数字を、事前に測定あるいは計算してマニュアルに載せておく。兵装と所要燃料の搭載に関する計画を立てる際には、そのドラッグインデックスを考慮に入れる必要がある。

なぜなら、空気抵抗が増えるのだから速度が落ちるし、燃料の消費が増える。その分を見込んで飛行計画を立てたり、燃料の搭載量を計算したりする必要があるのだ。

外部兵装を搭載するのに、何も搭載しないクリーン状態と同じ抵抗値に立脚してスケジュールを立てれば、実際には計画よりも速度が落ちて遅刻する。クリーン状態と同じ抵抗値に立脚して燃料搭載量を計算すれば、実際には計画よりも燃料を食って、途中でガス欠になる。

昔みたいに非誘導爆弾を大量にぶら下げて飛べば、それだけ抵抗が増えて、速度にも燃料消費にも響いたはずだ。実機でもプラモデルでも、胴体や主翼の下に積める限り大量の兵装をぶら下げている方が「画になる」のは確かだが。その点、最近は精密誘導兵器を少数だけ搭載するスタイルが多くなってきた分だけ、事情は「ややマシ」になったかもしれない。

兵装満載にするための秘策

民航機では「まず、目的地に到達できるだけの燃料を搭載すること」が最優先だが、軍用機だと話が違う。搭載できるペイロード、すなわち兵装の量を優先することがある。

民航機では行わないが、軍用機だと空中給油という手を使える場合がある。使用する機体が空中受油装置を備えていて、かつ、そこに燃料を補給するための空中給油機を内輪、あるいは同盟国から確保できることが条件だ。

空中給油を使えれば、限度いっぱいの兵装を搭載して、燃料は足りない状態でとにかく離陸してしまう。そして、離陸してしばらく飛んだところで空中給油を受けて燃料を補充する。という手を使える。

空中給油を受けるF-15Eストライクイーグル Photo : USAF

戦闘機や爆撃機であれば、目的地に行って兵装を投下すると、その分だけ帰路は身軽になる。だから、兵装を投下した後の帰路に空中給油を受けて、足りない燃料を補うこともできる。こうすれば、兵装の搭載量を優先することができる。

特にジェット・エンジンは気温による影響を受けやすく、気温が上がると推力が減ってしまい、結果として最大離陸重量にも響く。だから、気温が低ければ燃料と兵装の両方を必要なだけ搭載できるが、気温が高くなるとどちらか一方が犠牲になる、ということもあり得る。

そこでやはり、「燃料少なめで離陸して、後から空中給油を行う」という手でフォローすることになる。

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インデックス

連載目次
第89回 飛行機の燃料(8)燃料をめぐるこぼれ話
第88回 飛行機の燃料(7)空中給油のメカニズム
第87回 飛行機の燃料(6)燃料補給の方法いろいろ
第86回 飛行機の燃料(5)燃費改善と空力対策
第85回 飛行機の燃料(4)変わった燃料タンクいろいろ
第84回 飛行機の燃料(3)機内に設置する燃料タンク
第83回 飛行機の燃料(2)ジェット燃料を巡るあれこれ
第82回 特別編・民航機の非常事態を宣言で注目「2次レーダーとスコーク7700」
第81回 飛行機の燃料(1)燃料の種類とアブガス
第80回 軍用機の兵装搭載に関わる制約
第79回 飛行機を巡るさまざまな「○○重量」(5)戦闘機と推力重量比
第78回 飛行機を巡るさまざまな「○○重量」(4)戦闘機の場合
第77回 飛行機を巡るさまざまな「○○重量」(3)軍用機の場合
第76回 飛行機を巡る「○○重量」を考える(2)
第75回 飛行機を巡る「○○重量」を考える(1)
第74回 トランスミッションに関する補遺とブレード折り畳みの実況
第73回 STOL/VTOL(10)無人機(UAV)の短距離/垂直離着陸
第72回 STOL/VTOL(9)DARPAの実験機「VTOL X-Plane」
第71回 STOL/VTOL(8)スウェーデンのハイウェイは滑走路!?
第70回 STOL/VTOL(7)F-35Bの面白い挙動
第69回 STOL/VTOL(6)VTOLの実現手法いろいろ(3)リフトファン
第68回 STOL/VTOL(5)VTOLの実現手法いろいろ(2)サンダーバードとテイルシッター
第67回 STOL/VTOL(4)VTOLの実現手法いろいろ(1)リフト・エンジンその2
第66回 STOL/VTOL(3)VTOLの実現手法いろいろ[1]リフト・エンジンその1
第65回 STOL/VTOL(2)STOL機の事例
第64回 STOL/VTOL(1)短距離離着陸と垂直離着陸の基本を知る
第63回 ヘリコプター(12)マルチコプターの操縦
第62回 ヘリコプター(11)高温・高標高などへの対処
第61回 ヘリコプター(10)ヘリコプターの降着装置
第60回 ヘリコプター(9)人や貨物の変わった乗せ方
第59回 ヘリコプター(8)オートローテーション
第58回 ヘリコプター(7)速度限界の突破~ティルトローター機
第57回 ヘリコプター(6)速度限界の突破~推進装置を別に持つ
第56回 ヘリコプター(5)エンジンの数と配置
第55回 ヘリコプター(4)ローター・ヘッドとトランスミッション
第54回 ヘリコプター(3)最高速度の限界とローター失速
第53回 ヘリコプター(2)ヘリコプターの操縦
第52回 ヘリコプター(1)ヘリコプターの形態
第51回 操縦室(10)ヘルメット・マウント・ディスプレイ
第50回 操縦室(9)ヘッド・アップ・ディスプレイ
第49回 操縦室(8)グラスコックピット(その2)
第48回 操縦室(7)グラスコックピット(その1)
第47回 操縦室(6)計器の表示方法と配置
第46回 操縦室(5)計器の種類
第45回 操縦室(4)操縦室の場所と配置
第44回 操縦室(3)機体の姿勢
第43回 操縦室(2)高度・針路・方位
第42回 操縦室(1)いろいろな速度と計測の方法
第41回 客室と貨物室(8)客室のあれこれ - オーディオ、ビデオなど
第40回 客室と貨物室(6)ギャレーと機内での食事
第39回 特別編「国際航空宇宙展2016」で見かけたあれこれ
第38回 客室と貨物室(5)扉を巡るあれこれ
第37回 客室と貨物室(4)超特大貨物用輸送機
第36回 客室と貨物室(3)荷物室と貨物室
第35回 客室と貨物室(2)腰掛けと荷棚
第34回 客室と貨物室(1)窓周り
第33回 降着装置(8)しりもち対策
第32回 降着装置(7)空母搭載機の降着装置
第31回 降着装置(6)降着装置を巡るあれこれ
第30回 降着装置(5)タイヤとブレーキを巡るあれこれ
第29回 降着装置(4)降着装置の畳み方いろいろ
第28回 降着装置(3)降着装置の収納方向
第27回 降着装置(2)脚柱と衝撃吸収
第26回 降着装置(1)降着装置の配置
第25回 航空機の動力系統(12)電動式航空機
第24回 航空機の動力系統(11)同一機種にエンジンいろいろ
第23回 航空機の動力系統(10)エンジンの騒音低減
第22回 航空機の動力系統(9)エンジンの配置と架装
第21回 航空機の動力系統(8)推力の向きを変える
第20回 航空機の動力系統(7)2スプール・3スプール・GTF
第19回 航空機の動力系統(6)タービン爆発事故と品質管理
第18回 航空機の動力系統(5)エンジンの羽根を冷やす
第17回 航空機の動力系統(4)アクセサリーいろいろ
第16回 航空機の動力系統(3)エンジンの始動とAPUとRAT
第15回 航空機の動力系統(2)エンジンの動作を妨げる要因
第14回 航空機の動力系統(1)エンジンの種類と動作原理
第13回 飛行機の操縦(6)その他のあれこれ
第12回 飛行機の操縦(5)動翼の作動方法
第11回 飛行機の操縦(4)スポイラーとエアブレーキ
第10回 飛行機の操縦(3)高揚力装置
第9回 飛行機の操縦(2)動翼にまつわるあれこれ
第8回 飛行機の操縦(1)三次元の操縦操作と動翼
第7回 航空機の構造(7)航空機の機体構造材[2]
第6回 航空機の構造(6)航空機の機体構造材[1]
第5回 航空機の構造(5)主翼の配置と翼胴結合
第4回 航空機の構造(4)戦闘機の機体構造
第3回 航空機の構造(3)胴体の構造
第2回 航空機の構造(2)主翼の内部構造
第1回 航空機の構造(1)揺れたり、反ったり、空間が空いたり

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