前回までのあらすじ

超マイペース且つ大雑把なB型男子である僕の彼女は、あろうことか超几帳面なA型女子だった――。このエッセイは独身B型作家・山田隆道が気ままに綴る、A型彼女・チーとの愛と喧嘩のウェディングロードです。

結局のところ、モテる男とはなんなのだろう。確かにルックスが良くて、経済力があって、ステータスもある男は、往々にしてモテる。あまりに下衆な法則なので活字にするのも少々気が引けるが、それが事実であることは論を俟たないだろう。

だからして、それら三項目を兼ね備えていない男は自ずと女に対して気後れし、ましてや誰もが羨むような高嶺の花の美女になってくると、その美女にアプローチする気力さえ湧いてこなくなる。「自分なんかにあんな美人を落とせるわけがない」「どうせイケメンの彼氏がいるに決まっている。それどころか、もっと大勢の男を手玉にとっているはずだ」などと勝手に決めつけ、最初から諦めてしまうわけだ。

しかしそんな絶世の美女も、実際は意外なほど恋愛に苦労していたりするから不思議である。僕の知人の某モデル女子(もちろん一般的な美人)も昔から恋愛運が悪いと嘆いており、彼女曰く「なぜか今まで馬鹿な男ばかりと付き合ってしまい、その挙句暴力を振るわれることが多い」という。自分の男性遍歴の傾向を大雑把に振り返ると、デリカシーがない無神経タイプの鈍感男子が多いらしいのだ。

最初、僕は彼女の好みのタイプがそういう男なのだと思っていた。彼女は確かに美人だが、恋愛に関する性癖はいわゆる"だめんず"の部類に入る女性なのだろう。だから、いくら男で失敗しても自業自得、同情の余地なしと断を下していたわけだ。

だがしかし、彼女の次の言葉でその考えが変わった。

「わたしは自分から男の人にアプローチすることがあまりなくて、男の人から言い寄られて付き合うケースがほとんどだったんだけど、自分に言い寄ってくる男はなぜかそういう粗暴なタイプが多いのよね~」

これを読んでいる御婦人方、どうか抑えて抑えて。(どうどう!)彼女は典型的なモテる女なのです。活字にすると厭味ったらしい台詞なのは百も承知だが、実際それが事実なのだから仕方ないと、堂々と書くことにしたのです。ごめんなさい。

さて、話を戻す。

彼女のこの台詞、女性が聞いたらたちまち嫌悪感を覚えるかもしれないが、男性側にしてみれば思わず膝を打ってしまうところがある。最大のポイントは彼女のような美女に言い寄ってくる男が、みんな無神経な鈍感男子という点である。

確かに普通の神経の持ち主なら、彼女のような美女を目にした途端、前述したように気持ちが一歩引いてしまい、最初から口説くのを諦めてしまうだろう。だが、そういう気後れと縁遠い鈍感な神経の持ち主なら、「美女がいる→ラッキー→口説くぞ」というシンプルな思考回路しか働かないため、ためらうことなく行動に移すはずだ。だからして、彼女は必然的に無神経な鈍感男子ばかりに口説かれることが多くなり、彼女も彼女でその中から付き合う男を選ぶしかなくなるというわけだ。

そう考えると、こういった鈍感な神経もモテる男の条件かもしれない。たまに「どうして、こんな男がこんな美女と?」と首をかしげたくなるようなミスマッチカップルを見かけることがあるが、そのカラクリのほとんどは鈍感男子ならではの猛烈アプローチの賜物だと思う。要するに、身のほど知らずの馬鹿(失礼)のほうが空気を読まずに美女を口説けるため、結果として攻略するケースも増えてくるのだ。

僕の友人のSくんもそうだ。彼はアメリカ旅行から帰ってきたとき、「アメリカの子供って、みんな英語喋れるんだぜ。すげえっ」と感心していたぐらいの馬鹿なのだが、どういうわけか今まで数々の美女を口説き落としてきたザ・モテ男である。

以前、そんなSくんと街を歩いていたとき、たまたまプライベートの叶美香を見かけたことがあった。当然、僕は野次馬気分で眺めることしかできなかったが、一方のSくんは鈍感というか馬鹿というか、いきなり叶美香をナンパしだしたのだ。

「お姉さん、綺麗だよね~。これからどこ行くの? 暇なら俺と遊ぼうよー」

結果から書くと、そのナンパはあえなく失敗に終わった。(当たり前だ)叶美香さんもさぞかし驚かれたことだろう。街でサインや握手を求められることは多いと想像できるが、デートと電話番号を求められたのは初めてじゃないか。叶さん、思い出しましたか? あれ、僕の友達なんです。(読んでいないだろうけど)

しかし、それにしてもSくんはすごい。普通、街で叶美香を偶然見かけたからといって、迷わずナンパできますか。なんという大胆な男だ。きっとSくんには空気を読むとか羞恥心とか、そういう繊細な神経が欠如しているのだろう。

だから、Sくんは相手がどんな美女であっても、あまり深く考えることなく、シンプルに口説くことができる。その結果、多くの美女を落とせるわけだ。

結局のところ、モテる男とは(たぶん)ちょっと愚鈍なのだ。(と思う)

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