【コラム】
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前回までのあらすじ
超マイペース且つ大雑把なB型男子である僕の彼女は、あろうことか超几帳面なA型女子だった――。このエッセイは独身B型作家・山田隆道が気ままに綴る、A型彼女・チーとの愛と喧嘩のウェディングロードです。
普通、結婚式前夜の新郎新婦は緊張と興奮のあまり、寝つきが悪いらしい。
実際、僕もそうだった。どうせ酒を大量に飲まされるだろうから、たっぷり睡眠をとらなければと夜12時には布団に入ったのだが、見事に一睡もできなかった。
ちなみに、一方の新婦・チーはというと、布団に入るや否や、ものの5分ほどでグースカピーである。なんという図太さだ。いつも以上に寝息が荒く、寝相も実に豪快だった。寝る直前まで、披露宴で朗読する予定の「母への手紙」の内容で悩んでいたとは思えない。基本的に、女は胆が据わっているのだろう。
というわけで、結婚式当日の僕は一睡もできないまま、朝8時にチーと二人で家を出た。まず向かったのは役所である。式に先んじて、婚姻届を提出するのだ。
この婚姻届に関して、今後結婚を予定している方に言っておきたいことは、事前チェックをしてもらっておいたほうがいい、ということだ。
役所とはご存知の通り、あまり融通の利かない機関であるからして、ぶっつけ本番で婚姻届及び必要書類を提出すると、思いもよらない不備が指摘され、あえなく不受理になってしまうケースが多いらしい。だから事前に「これで受理できますか? 」と役所で確認してもらうと、当日はスムーズに事が運ぶ。僕らの場合もそれをしておいたから、ものの10分程度で無難に婚姻届を受理してもらうことができたわけだ。
婚姻届を提出して晴れて夫婦となった僕とチーは、その後、役所近くのコンビニに立ち寄った。披露宴が始まるまで何も飲み食いできないので、おにぎりやサンドィッチを買っておく必要がある。泥酔対策や眠気対策のドリンク剤も欲しいところだ。
買い物が終わり、午前9時半に式場に入った。ドレスなどの衣装類はあらかじめ衣装屋が式場に届けてくれているので、僕らは手ぶらでいい。ここからは二人それぞれ別々の担当者が付き、着替えからヘアメイクまで懇切丁寧にお世話をしてくれる。王子様とお姫様にでもなった気分とは、決して大袈裟じゃない。僕ら新郎新婦が今日の主役であるということを、あらためて実感する瞬間だ。
新郎の着替えとヘアメイクは、当然ながら新婦のそれより早く終了する。したがって、僕は一気に暇になった。その時点で午前10時を回ったぐらい。式の開始は昼の12時45分のため、2時間以上も空き時間ができたのだ。
しかし、ちょうどその頃、両家の親族連中がガヤガヤと式場入りしてきたため、一転して忙しなくなった。僕の親族はいいとして、チーの親族にはきちんと挨拶しなければならない。中でも気になるのは、沖縄からはるばるやってきた88歳になるチーのオバア(祖母)だ。聞けば、早朝の飛行機で数年ぶりに内地の土を踏んだらしい。
対面するなり、オバアは早くも泣いていた。付き添いの親族たちに「オバア、泣くの早いよー」などと笑いながら茶化されていたが、僕は胸に迫るものがあった。その後、着替えが終わったチーのもとに連れて行くと、オバアはまたもや号泣。この時点でこれだけ涙が流れるとは、式が始まったら一体どうなるんだろう。
新郎新婦両方の着替えとヘアメイクがすべて終了すると、お次は二人だけの写真撮影である。カメラマンの指示にしたがい、式場のいたるところで記念写真を撮影するわけだが、これが意外に疲れる。僕は普段からそれなりにメディアに出る仕事もしているだけに、写真を撮られるのには慣れているはずなのだが、ここまでポーズを指定されながら膨大な量の写真を撮られるのは初めてだ。イケメン俳優やグラビアアイドルの気持ちが少しわかってきた。彼ら彼女らは、言わば肉体労働者だ。
そうこうしていると、あっという間に昼の12時を回り、いよいよ式直前に行われる親族紹介の時間になった。ここからは怒涛の忙しさ、タバコを吸う隙もないほど分刻みのタイムスケジュール。結局、暇な時間なんて一切なかったのだ。
我が父の仕切りにより、親族紹介が和やかに進んだためか、僕は不思議なぐらい緊張感がなかった。普通、これぐらいの段になると新郎新婦はいよいよガチガチになってくるものだと聞かされていたので、少し拍子抜けである。
だからして、まもなく式が始まるという直前になっても、僕とチーはチャペルの扉の前で終始リラックスムードだった。世話役の方に聞いたところ、チャペルの中はすでに100人ぐらいの出席者で超満員状態だという。ありがたいことですね。
そして、ほどなくして管弦楽器が高らかに鳴り響いた。チャペルの中から聖歌隊の美しい唄声が聞こえてくる。「それでは入場です」と呟いたのは、元巨人の上原浩治激似の世話役男性。扉がゆっくり開き、その隙間から眩い光が差し込んできた。 その瞬間、さっきまでのリラックスムードは一転した。今頃になって、極度の緊張感が大股歩きで襲ってきたのだ。
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