外見の良し悪しは、恋愛において非常に重大な要素である。いくら人間は外見だけでは判断できないと言っても、やはり男は本能的に美女を求め、女は美男を求めてしまう。なんだかんだ言っても、美男美女は恋愛において圧倒的に有利なわけだ。

したがって、たまに街中で美女と野獣のカップルや、美男と"あまりお顔がよろしくない女性"(女性の場合は気を遣うなあ)とのカップルを見ると、なぜか僕は胸がときめいてしまう。「ああ、この男性(女性)は相手の本質をちゃんと好きになっているんだなあ」と、 月並すぎる感想を口の中で呟くのである。

大学時代の友人・Hもそんな男だった。

Hには高校時代から付き合っている同い年の彼女がいたのだが、その彼女はあくまで一般論として、多くの殿方が美人とは思わないであろう個性的な女性だった。ほんと、女性の場合は細かな表現に神経を遣う。これが男だったら、野獣だとかブサイクだとか、めちゃくちゃ書いても平気なのにと思うのは僕が男だからか。

とにかく、Hはそういう彼女と長年付き合っており、心ない一部の男子から「おまえの彼女、ほんとブ○イクだなぁ」などとネタにされまくっていた。Hもそう言われることにすっかり慣れてしまっているためか、怒るどころか「そうなんだよね~」とにこにこ笑うばかりだった。

男同士というのは、一旦気のおけない仲になると、結構辛辣なことをはっきり言い合うものである。僕も大学時代にかけたパーマを男友達に「似合ってねえ!」と馬鹿にされまくったことがあった。これが女子だったら、みんな嘘でも「かわいい」って言ってくれそうなものなのに、つくづく男とは無神経な生き物である。

しかも、Hは男の僕から見ても、なかなかのイケメンだった。中学からサッカーをやっており、大学でもサッカーサークルのエース格として活躍。俳優の坂口憲二に似た端正なマスクと明るい人柄で、クラスの女子からも人気が高かった。

だからして、余計にHの彼女は槍玉にあがった。男子だけじゃなく女子からも「なんで、Hくんはあんなブ○と付き合っているの? ほんとにあれでいいの?」と疑問の声があがっていたほど。余計なお世話であることは充分わかっているのだが、それでも何か言わずにはいられないほど、そのカップルは注目を集めていたのだ。

そんなある日、クラスの飲み会でHが泥酔したことがあった。大学生のC調ノリで無茶な一気飲みを連発し、完全にベロンベロンになってしまったHは、例の彼女に電話をして、居酒屋まで迎えに来てもらうことになったのだ。

途端に飲み会の話題は例の彼女のことで持ちきりになった。みんな酔っぱらっているためか、いつもより激しい暴言がテーブル上を飛び交う。さらにクラスで一番かわいいと評判の女子が「そんな彼女とはさっさと別れて、あたしと付き合ってよ」と略奪愛を宣言したから、さあ大変。男子は一斉に「羨ましい!」の大合唱となり、「ブ○と別れて、美人と付き合え」とHの背中を押し始めたのだ。

最初、Hも満更ではなさそうだった。

「そうなんだよなあ。俺、なんであんな女と付き合っているんだろう……。自分でもよくわかんないんだよね……」

そんな独り言をぶつぶつ呟き、Hの心は激しく揺れているように見えた。

しかし、それでもHは途中で顔をあげ、はっきりした口調でこう言ったのだ。

「けど、しょうがねえんだよ。だって、あいつのこと好きなんだもん。周りからブ○って言われているのも知ってるし、自分でもそう思っているけど、それでも俺はあいつのことが好きなんだ。離れたくないって細胞が叫んでんだよ」

その瞬間、クラスのみんなはシーンとなり、誰も例の彼女のことを口にしなくなった。きっと今までのHはクラスの笑い話に空気を合わせていたのだろう。けど、本音ではずっと彼女に対する強い愛情を主張したかったんじゃないか。

離れたくないって細胞が叫んでるんだ、か――。本気で愛してないと、絶対に出てこない台詞だ。愛とはつくづく無形の絆である。

それから数年後、Hはその彼女と結婚した。現在は二児のパパである。

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