先日、『猫の気持ち』という本を読んで、なるほどなぁと思った一文があった。

「猫がなつく人間とは"猫をあまり好きじゃない人間"のことです」

なんだか身も蓋もない言葉ではあるが、幼い頃から猫をずっと飼ってきた僕にしてみれば言い得て妙だと思った。一般的に気まぐれでマイペース、自己中心的でわがまま……と評される猫であるが、確かに奴らは人間にかまわれることを異様に嫌う。常に放っておいてほしい、自分のペースで自由に生きさせてほしいと思っているふしさえあり、人間が近づいただけでさっと逃げていく猫もいるほどだ。

しかし、だからといって猫が人間嫌いか言われると、そうじゃない。意外に寂しがり屋なところがあり、あんまり人間に放っておかれたり、愛情を感じられなかったりすると、急にミャアミャアと文字通り猫なで声を出して擦り寄ってきたりする。このあたりが、猫が「猫嫌いの人間」を好きになってしまうという皮肉な要素なのだろう。

そんなことを考えていると、僕の脳裏に或る仮説が浮かんだ。

「猫って、もしかして僕と同じB型なんじゃないか?」

確かにB型たる僕も猫と同じようなところがある。気まぐれでマイペース、自己中心的でわがまま。以前、同じB型の妹と二人暮らしをしたことがあったが、共同生活というより一つのマンションに二つのテナントが入っているような感じだった。起床就寝の時間はもちろん、食事の時間もバラバラ。お互い何の報告もなしに数日間家をあけることもしょっちゅうだったし、妹が旅行に行っていたことを数ヶ月たって知ったなんてこともあった。まさに家に勝手に居つく野良猫と一緒である。

おまけに、そのとき本物の猫まで飼っていたため、猫が三匹いるのとたいして変わらなかった。実際、腹が減っているのに冷蔵庫に何も入っていなかったとき、買い物に出るのが面倒だったので、猫の缶詰を勝手に食ってやったこともあった。案外いけると思った。まあ、反対に僕の秋刀魚を猫に勝手に食われたこともあったが。

従って、僕は知人の女性などから「B型の彼氏に手を焼いているんだけど、どうしたらいい?」といった相談を受けると、いつも猫を参考にするようにしている。

先日も或るA型女性から「同棲しているB型の彼氏があんまり自己中で協調性がないので、いちいち口うるさく注意したり、生活を束縛したりしたら、だんだん私に冷たくなってきた。最近じゃ家に帰ってくるのも遅いし、なんとなく避けられている気がする……」と悩みを告白されたのだが、僕はその彼氏に対して「ああ、完全に人間嫌いの猫状態になっているな」と推察した。

この場合、彼女が「あなたが好きだから」とか「今後の二人のためを思って言っているのよ」といった愛に溢れた言葉を吐けば吐くほど、彼氏は逃げていくだろう。だからといって放置プレーも厳禁。僕が思うに、この手の男は放置されたら、調子に乗ってどんどん好き勝手な生活を送る気がする。フーテンの寅さんみたく、たまにふらっと現れたかと思うと、飽きたらどこかに去っていくという事態になりかねない。寅さんはあくまで映画だから粋なのであり、現実にあんなのがいたら迷惑だ。そう思うと、つくづく寅さんとはうまく名づけたものだ。トラはネコ科なんだから。

しかるに、僕はそのA型女子に「(彼氏に)あんたのことが少し嫌いになった。しばらく距離を置かない?」と言ってのけることをお勧めした。彼女にしてみれば、かなり勇気がいる言葉かもしれないが、僕はこれが彼氏の態度を改めさせるに一番効果的な方法だと思う。きっと、その彼氏は彼女からそう言われて、「わかった。それでもいいよ」とあっさり言い放てるほど強気な野郎じゃないはず。おそらく「ごめん、嫌いにならないで! 直すべきところは直すから!!」と今までからは考えられないぐらい下手な態度で擦り寄ってくる可能性が高いと思うのだ。

猫は「飼い主に愛されている」という安心があったうえで、初めて自由気ままに振舞う。だから、自分を嫌う人間には敏感に反応し、「ねえねえ、どうしたの?」と態度を一変させることが多い。B型男子の扱い方は、はなはだ猫と似ているのだ。

あ、あくまでこれは個人の見解であって、B型の総論ではないので悪しからず。

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