もし生まれ変われるとしたら、就職活動をしたいと思っている。

なにしろ僕は大学1年のときに縁あって文芸稼業に進んで以降、33歳になる今年までずっと経済の末端で拾い食いしているような状況である。ちなみに昔から文芸に強い志があったわけではない。たまたまバイト感覚で始めた仕事を卒業後も見つめ直すことなく、「まあ、食えてるからいいやぁ」ってな感じで継続しているだけだ。就職活動をした経験などなく、実にのんべんだらりとした人生を歩んできたのである。

もちろん、心残りはある。就職活動をしなかった後悔というより、若い頃に自分自身について深く考えるという行為を一切しなかったことに対する後悔だ。

僕が思うに就職活動の最大のメリットは結果ではなく、過程にある。自分の特性を分析し、どんな仕事をしたいのかと自己問答することが、人生において非常に有意義な行為になるはず。就職活動とは自分と正面から向き合う絶好の機会なのだ。

そんなことを考えているとき、タイミング良く本連載を担当していただいている編集のT女史から、こんな連絡が入った。

「山田さん、婚活に向けて自己分析してみませんか?」

なるほど。考えてみれば、婚活も自己分析がキーになってくるじゃないか。

よく結婚のことを「永久就職」と表現したりするが、あれは婚活と就活が似通った課程を踏む行為であるからだろう。就職する企業を結婚する異性に置き換えると、改めて共通項が多いことに気づかされる。ころころと転職を繰り返す男には浮気者が多いと聞くが、そんな言葉にも妙な説得力が沸いてくるというものだ。

かくして僕は婚活に向け、初めての自己分析に挑むことになった。

T女史が勧めてくれたのは『ソフィアヒューマンインテリジェンス』という会社が開発した特性分析ツールである。10問ほどの設問に答えるだけで、その結果をもとに僕の特性を分析し、結婚に向けての対策やアドバイスをしてくれるらしいのだ。

早速僕もチャレンジしたところ、ほどなくして以下のような分析結果が出た。

「山田さんは非常に相手のことを考えて行動し、人とのコミュニケーションは上手にとります。ただし、相手のことを考えすぎて、踏み切れないこともあるかもしれません。草食か、肉食かでいうならば草食ですね」

さらに資料に目を通すと、僕の特性は「周りと協調したいという思いが強い」や「思いやりがあり、自分と異なる意見を受容できる」といったものばかりで、自己中心的なマイペース野郎と評判のB型男子のイメージからは程遠い結果である。

心当たりはある。確かに僕はマイペース魂が旺盛なB型のくせに、周りのことを必要以上に気にかけてしまう傾向がある。ただし、それは「他人への思いやり」というより、「他人に嫌われたくない」というチキンな理由からなのだ。

嫌われたくないから、とりあえずは同調しているように見せるのだが、腹の中では自分の考えをテコでも曲げなかったりする。草食系男子って今風に言ってくれているけど、ぶっちゃけ雑草さえも敵に回したくない。世の中の生きとし生けるものすべてから嫌われたくないし、嫌われるのが怖いのである。

従って、資料にあった「苦手なタイプは好き嫌いがはっきりしていて、何かをするときに自分の思い通りに進めようとする人」という文言には深く納得させられた。

そうなのだ。僕みたいな草食というより、ドライフード系(嫌われようがない)の男子は「自分の思い通りに進めようとする人」と付き合ったら、その人にさえも嫌われたくないと思うため、本心とは裏腹に相手に従ってしまう。しかし、それでも内心は自分の考えがしっかりあるものだから、本意ではない行動を取り続けるストレスが積み重なっていき、やがて精神を壊してしまうことがあるのだ。

さて、そんな自己分析結果を受け、次週はいよいよ婚活対策である。

果たして、自分と相性のいい女性は一体どんなタイプなのか?

まあ、僕の婚活なんて誰も興味ないだろうけど、そういうツッコミは御容赦いただいて、次週もしばしお付き合い下さい。

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出版社 : ぶんか社
著者 : 山田隆道
発売日 : 2009年2月3日
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