最近、姉とよく電話で話している。今年、両親が還暦(二人はタメ年)を迎えるため、近々妹も含めて三姉弟妹でお祝いの宴席を催そうと計画を練っているのだ。

で、そのとき話題にのぼったのが亡き祖父の還暦について。祖父は両親が36歳で姉が10歳、僕が9歳のときに還暦を迎えたのだが、あれから24年が経過して今度はその両親が還暦を迎える今年、姉が34歳、僕が33歳と立派な"中年"になるというのに三姉弟妹のうちまだ誰も結婚すらしていないのだ。

そう考えるとさすがに複雑になってくる。三姉弟妹もいて還暦の両親に孫の一人も見せてやれないのはいかがなものか。しかも三人とも音楽や文芸などといったわけのわからない世界で不安定極まりない浮き草生活に陥っており、両親にしてみればかなり計算外のはずである。うん、やばいですよ、これ。せめて、僕だけでも先陣を切って結婚しないことにはっ。

というわけで、僕はキャバクラに行くことにした。目的はただ一つ。女遊びでも何でもなく、ものすごく真剣な彼女探し、いわゆる婚活である。

や、どうか御婦人方、白い眼で見ないでいただきたい。御婦人方はキャバクラにどんなイメージを持たれているのか知らないが、今の僕が新たな恋愛をしようと思ったらキャバクラぐらいしか出会いがないのだ。

大体、会社員じゃない僕はオフィスラブなんてものと縁がないし、同僚さえいないわけだから合コンの誘いなんかあるわけない。ナンパする勇気もないし、出会いを求めて今さらバイトを始めて同僚の女子大生に目を光らせるのもどうかと思うし、若いOLが集う料理教室に30過ぎの男が一人で通いだしたら通報される恐れもある。

……だったら、もうキャバクラしかないじゃん!(真剣!!)

大体、キャバクラって女性に接客してもらいながら酒を飲むだけの店でしょ? エッチなことがあるわけでもなんでもないのに、いまだにキャバクラに通う男性に対して不誠実なイメージを持っている人がどれほど多いことか。確かに彼女や奥さんがいたら不誠実だと思われても仕方ないけど、フリーの男が純愛を求めてキャバクラに活路を見出すのはそれだけ恋愛に真剣な証拠じゃないか。

僕は決して女性の体や心を金で買おうとしているわけではない。あくまで純愛へのきっかけとして、「女性との出会い」を金で買おうとしているだけである。つまり、お見合いパーティーに金を払って参加したり、意図的に合コンを組もうと働きかける行為と何にも変わらないのだ。

というわけで僕は溝の口にある1時間5,000円程度のキャバクラに向かった。新宿や六本木などのキャバクラ激戦区は、僕みたいな恋に飢えた男が行ったら百戦錬磨のプロのキャバ嬢様たちにいいように弄ばれ、スッカラカンになるまで金を搾り取られる危険性がある。僕の場合、あくまでも目的は女性との出会いなわけだから、地元の女の子が自転車で通っていそうな溝の口がベストな気がしたのだ。

ちなみに僕一人での単独行動である。純愛を求める身としては男友達が一緒にいると何かとやりづらい。恥ずかしくて女性を熱烈に口説けなくなる恐れがあるし、モテたいがために発する些細なハッタリにいちいち突っ込まれても困るからだ。本当に真剣なときの男ってここまで考えたりするもんなんですよ、はい。

店に入ると僕の席にやって来たのは、ヒトミ(仮名)という名の里田まいに似た美しい女の子だった。はっきり言って外見的にはストライクゾーンである。これで話をしてみてフィーリングや価値観が合ったり、その他の諸条件が揃っていれば恋愛対象に入るだろう。僕がヒトミに気に入られるかは別としてね。

僕は乾杯をすませると、早速ヒトミに質問攻撃を仕掛けた。真剣に彼女を探している以上、彼氏の有無はもちろん、最初のうちに聞いておかないといけないことが山ほどあるわけなのだが、それはまた次回の話だ。

(次回、後編へと続く)

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