人生にはモテ期があるという。どんな男でも多くて3回、少なくとも最低1回ぐらいは恋愛が妙にうまくいく時期があるというのだ。しかし、それが最も恋愛を必要とする10~20代ではなく幼少期や老年期に訪れたり、あるいはせっかく訪れたモテ期を何らかの理由で逃してしまったら最悪。結果として恋に迷える"モテないくん"を生み出してしまうわけである。

かくいう僕もその一人かもしれない。過去に一度だけ訪れた貴重なモテ期をあえなく逃してしまったからこそ、現在のような32歳の恋愛亡者になってしまったのだ。ちなみに先日も「オレンジレンジが何人組かわからない」という理由で女子大生にオジサン扱いされ、なぜか笑いながら振られてしまった。(これで7連敗!)

さて、今回はそんな僕の貴重なモテ期についてである。

あれは20代の中頃。当時の僕は特定の彼女はおろか、気軽に飲めるガールフレンドすら一人もいないほど女日照り状態が続いていた。

しかし、ある日を境に突然、何の前触れもなく4人の女性から同時にアプローチを受けるようになり、果ては交際を申し込まれたのだ。

僕は有頂天を通り越して、かなり調子に乗った。それまで女性から言い寄られた経験なんてほとんどなかったから、「ついに俺にもモテ期が来たっ」とこの世の春を感じた。なんだか、さっきから自慢しているみたいだが、実際に自慢しているのである。

しかし、僕は少し運が悪かった。確かにモテ期には違いなかったのだが、なぜか言い寄ってくる女性が一筋縄ではいかない特殊な姫君ばかりだったのだ。

まずは仕事で知り合った23歳のフリーター女史。

清楚で気立ても良く、最初は好印象だったのだが、よく見ると両手首がリストカットで大変なことになっている。しかもちょっとやそっとの傷じゃない。何が何だかわかんないぐらいシマシマしており、夏でも長袖を着ているぐらいなのだ。当然、僕は彼女に聞いた。

「あのさ、手首すごいことになってるね……それ、どうしたの?」

すると、彼女はあっけらかんとキラーワードを炸裂させた。

「なんか暇なとき手首切ると気持ちいいのよね。今度一緒にやってみる?」

もちろん僕は彼女に深入りするとまずいと思い、せっかくの交際申し込みをやんわりと拒否。すると彼女はその後、血だらけの手首を撮影した写メールを1カ月以上に渡って毎日送ってくるようになった。一体何を伝えたかったのだろうか。

さらに仕事で訪れた仙台のスナックで知りあった25歳の巨乳ホステス。

なぜか彼女は僕のことを異様に気に入ってくれたらしく、その翌週に仙台の店を辞め、いきなり上京してきたのだ。

しかし、あろうことか彼女には5人の子供がいた。何でも16歳から毎年1人づつ御丁寧に出産し、5人目をちょうど産み落とした直後に離婚したらしい。

彼女は何も知らない僕の前にいきなり子供たちを連れてきた。戸惑う僕に9歳の長男は「こんな奴、パパって認めねえよ!」となぜか憤慨した。もちろん僕は丁重にお断りし、一家は仙台に帰っていったのだった。

また、飲み会で知りあった22歳の超ガン黒ギャルに至ってはヒロミという名前なのになぜか「アユって呼んで」と強要してくる不思議な姫君。

そして極めつけは栃木出身の21歳元レディース嬢である。

首元からおどろおどろしい和彫りが顔を出しており、シ●ナーの吸いすぎで歯がボロボロ。しかも、なぜか本名を教えてくれない。誰かに追われているらしいのだ。

このように、せっかく複数の女性にアプローチされたというのに、あまりに個性豊かなラインナップだったため、僕は誰ともお付き合いできなかったのだ。

しかし、あれ以降、女性から言い寄られるなんてことがなくなったと思うと、僕の判断は正しかったのか間違っていたのか。

うーん、二度目のモテ期が早く来て欲しいなあ。