こんにちは、東京都大田区にある3Dプリンタメーカー スマイルリンクの大林万利子です。前回は3Dプリンタってどういったものなのかを説明させていただきましたが、今回はさらに一歩進んで3Dプリンタの"イイところ"を紹介します。なお、文中の3Dプリンタの機能説明などは、当社が開発・販売するパーソナル3Dプリンタ「DS.1000」を例にしております。では、早速ご覧くださいませ。

1. 高価な金型がなくても"ものづくり"ができる

プラスチックを材料とするモノを作ろうとする場合、プラスチックに圧力を加えて金型に押し込み、型に充填して成形する「射出成形(しゃしゅつせいけい)」という方法が一般的です。ペン立てや収納ケース、100円ショップの雑貨など、世で見かける多くのプラスチック製品がこの製造方法です。射出成形のイイところをひと言でいうなら"高品質"なモノを"大量"に作れることでしょう。

一方で、射出成形には弱点があると考えています。部品を少量作る場合、金型を使うとどうしてもコストが高く付いてしまいます。また、製品の設計→金型設計→段取りなどの製造に至るまで多くのステップと時間が必要になるほか、そもそも設計をするのに多くの経験が必要となるのも頭を悩ませる問題の1つです。

それに対して3Dプリンタはどうでしょう。3DプリンタとPCとをケーブルでつなぎ、PCを操作して出力を開始すれば(図1)、約15mmの立方体であれば10分程度で作れます。完ぺきとはいえないかもしれませんが、射出成形の弱点を解消することができるのです。

図1 PCとDS.1000を接続するとこんな感じ

2.自分で3Dデータを設計しなくてイイ!

「3Dプリンタって自分で3Dデータを作らなくてはいけないんでしょ?」という質問をよくいだきます。実は、3Dデータを集めたWebサービスを利用することで、3Dデータを作らなくてもすぐにものづくりを始められます。ここでは、代表的なWebサービスである「Thingiverse」を紹介しましょう。

Thingiverseは、有志が作った10万件以上の3Dデータが登録されている、いわば3Dデータの"大型データベース"です。利用者は好きなものを自分のPCに無料でダウンロードできます。基本的に英語のサービスですが、Art、Fashion、Gadgetsといったカテゴリーごとに分けて3Dデータや写真が登録されているので探しやすいですし、実際に作った人の"3D作品"を眺めるだけでも楽しめますね。ちなみに、図2は3Dデータをダウンロードして3Dプリンタで出力してみました。いかがでしょうか?

図2 Thingiverseの3Dデータを使って出力したアクセサリー

日本でも少しずつThingiverseのように無料で3Dデータをダウンロードできるサービスが増えています。先日、自動車メーカーのホンダがコンセプトカーの3Dデータをダウンロードできる「Honda 3D Design Archives」を公開し(英語サイト)、大きな話題となりました。世界中にいる3Dプリンタの愛好者は、実際にデータをダウンロードして出力したのではないでしょうか。流行りに乗って早速私も試してみました(図3)。

図3 ホンダのコンセプトカー「FUYA-JO」を出力している様子。ほかにも「FSR Concept」「KIWAMI」「PUYO」などが公開されている

Web上には必ずしも自分の欲しい3Dデータがあるわけではありません。ただ、こういったサービスは3Dプリンタが普及するに比例して増えると思っています。誰もが自由にダウンロードできる3Dデータが今後もっと増えるといいですね。

3.材料費が安い

3Dプリンタが利用する材料は、プラスチックの糸をコイル状に巻いたフィラメント(図4)というものです。これは用紙に印刷するタイプのプリンタでインクに該当するのですが、プリンタという名前が付いているからなのか「インクって高くないの?」というご質問をいただくこともあります。

当社はPLAを1kg6000円で販売しています。図5のショッピングバッグに取り付ける持ち手は約20gですので、材料費を計算すると1個につき約120円です。1kgあればかなりの量を作れますので、フィラメントがすぐになくなることはまずありません(3Dプリンタの機種によって使えるフィラメントの種類や価格が異なります。購入時にご確認ください)。

図4(左) このフィラメントはPLA(Polylactic Acid、Polylactide:ポリ乳酸)、図5(右) ショッピングバッグの持ち手

4.意外とエコ

これはあまり知られていないと思うのですが、3Dプリンタって意外とエコなんです。実は、3Dプリンタで出力した成形品の内部は、材料がメッシュ状(図6)になっていて、けっこうスカスカな場合が多いです。材料をどれだけ詰めるかというのは、PC側の出力ソフトでの設定に左右されるので、空洞の大きさを増やせば増やすほど材料を節約できるというわけです。ここは圧力をかける射出成形に比べると大きな違いです。

図6 成形物の内部はメッシュ状となる

また、射出成形のときの金型内でのプラスチックの通り道(図7、スプール、ランナー、ゲートと呼びます)も当然ありませんので、材料の使用量を少なくすることができます。

図7 スプール、ランナー、ゲートと呼ばれるプラスチックの通り道

5.トライ&エラーができる

最初にお話ししたように射出成形をするには、高価な金型が必要です。また。もしも完成した金型が気にいらなければ、もう1度お金をかけてイチから金型を作り直す必要があります。

改めていいますが、1個からでも気楽に作れるというのも3Dプリンタの良さです。「出力したモノが気に入らなければ何度でも作り直す」といったトライ&エラーを繰り返し、少しずつ完成品へと近付けていくことができます。

また小量生産に限られますが、3Dプリンタ出力した成形品をそのまま最終製品にすることだってできます。前回もお話ししましたがDS.1000の部品も一部3Dプリンタで出力したものを使っています(図8)。

図8 3Dプリンタで出力したDS.1000の部品

今後は3Dプリンタを活用することで、これまで温めてきた製品化のアイデアを個人で実現する人も増えてくると思います。次回からいよいよ実践編です。3Dプリンタを入手して使えるようにセットアップするまでの流れをお話しします。