宮台真司インタビュー「自分はイケてるぞアピールからは腐臭がただよう…“見るに耐えない”コミュニケーション 」

  [2012/11/02]


 社会学者・宮台真司さんへ「脱いいね!」に関するインタビューを行いました。第一回はFacebookをはじめとするソーシャルメディアの状況について、また日本人のオンラインでの見るに耐えないコミュニケーションのとり方のお話が中心です。
脱いいね! への道のベースとして、ぜひお読みください。あなたも腐臭ただよう「自分イケてるぞアピール」していませんか?

オランダ、アメリカで始まるFacebook離れの原因は
自分の情報がコントロールできなくなるから


――“脱いいね!”のそもそもは、もちろんFacebookの“いいね!”から来ているのですが、そういう“いいね!”だけで承認欲求を満たしてしまったりする人たちは本質的な付き合いができているのだろうかというところから始まった企画です。
まず、そもそもFacebook含めるソーシャルメディアは世界的にどんな状況なのでしょうか?

宮台氏(以下宮台):二年くらい前から、最初はオランダからですが、今はアメリカでもヨーロッパでも、Facebook離れが進んでいます。上場以降に投資家が離れたっていう話とは関係なく、単にFacebookが面倒くさいというだけの話です。

 少し細かくいうと、プライバシーを維持するのが難しい。プライバシー概念は「自己情報制御権」と言い換えられます。
元は「住居不可侵権」から派生しました。要は「自分が見せたくない自分を見せなくてもいい、自分の見せたいところだけ見せていい」権利です。

 特に女の子にとって致命的なのが、写真をタグ付けされてしまうこと。
過去の醜態や、知られたくない男との関係がバレてしまいます。
そういうことがないように自分自身の情報をちゃんと制御しようとすると相当面倒なので、公開範囲を狭めるしかありません。

 結局、公開範囲を昔からの親しい友人に限るか、それだったらFacebookやっている意味がないのでFacebookをやめるか、どちらかという選択肢になってしまいます。実際、僕の周りでもどんどんFacebook離れが進んでいます。

 リーダー/フォロワーという言葉を使えば、リーダー層からFacebook離れが進んでいます。
コミュニケーションが下手くそなフォロワー層とか、あまりセンスのないフォロワー層が、相対的には残っているという状況です。あくまで「相対的には」ですがね。

 その意味で、昨今のFacebookで「いいね!」と言われても、感度のいいユーザーが相対的にいなくなっているので、「承認」とは何の関係もありません。よくいえば「暇つぶしの戯れ」、悪くいえば「馬鹿の気休め」です。

 実際、何の足しにもなりません。
それよりも、あんな希薄な場所で知らない連中に「いいね!」といわれても、普通は嬉しくないはずで、あれが嬉しいっていうことは、毎日よっぽど希薄な関係を生きているという事実を、満天下に知らしめていることになります。

――そうですね。「いいね!」を喜んでいる人はリーダー層ではないということですか?

宮台:リーダー層ではありません。少なくとも、リーダー層は、Facebookをやっていても「いいね!」からは離脱しています。
それどころか、Facebookをやることの意味自体がないんじゃないか、というようなところまで、反省的観察が進んでいるということです。

 何ごともそうですが、最初は新奇性があります。つまり新しくて珍しい感じがある。
だから、感度の高い「新し物好き=アーリーアダプター」たちが飛びつきます。それを見て、フォロワー層がどーっと入ってきた結果、メディアが劣化する。「例の展開」ですね。

 フォロワーが参入することによるメディア劣化と、劣化に嫌気がさしたリーダー層が新メディアに飛びつくという「例の展開」について、僕は「3年周期説」を唱えてきました。
Facebookについては、3年周期説より早い。さっき申し上げた実害が出るからでしょう。

オンラインのコミュニケーションには絶対に超えられない壁がある


――現在日本でソーシャルメディアを使っている人は、コミュニケーションとろうとして使っていると思いますが、それはあんまり意味がないことなのでしょうか。宮台さんから見るとなんでそんなことをしているんだろう、という感じですか?

宮台:それに答えを出すためには、まず、オンラインのコミュニケーションとオフラインのコミュニケーションが、今の段階で、どの程度同じで、どの程度違うのかが、ポイントになります。

 3.11の震災のあとに、僕はよその子とかも連れて自分の別荘に疎開させましたが、そういうディープな助け合いは、今のオンラインのコミュニケーションを見る限り、まったくありません。ただし、オンラインで成功した助け合いが二つありました。

 第一は、被災地での情報のやりとり。マスコミがまともな情報を出さず、しかも音声電話が通じないという状況で、3G回線のインターネット文字情報が通じて、最低限の情報をやりとりしていました。

 第二は、東京近辺ではギークハウスというシェアハウスをしている人たちが、インターネットで情報を発信して、帰宅困難者たちにお金をとらずに場所を提供する活動をしていました。
僕も帰宅困難でたいへんな思いをしましたから、この活動の意義を評価します。

 その二つは特徴的でした。一つは救難情報。もう一つは「ここにくれば助かるぞ」という救難情報と併せた場所提供。
オンラインのコミュニケーションは、救難情報と場所提供という災害時の便益を提供できることがわかりました。

 でも、知らない誰かをおんぶしてどこかに連れていくとか、知らない誰かを車に乗せて自分の家や別荘に連れていくとか、そういうことまではとてもできません。
なぜかというと、答えは簡単で、「信頼できないから」です。

――そうですね、信頼という部分は簡単には越えられない壁ですね。

宮台:はい。少なくとも今のところ、オンラインのコミュニケーションで形成できる信頼は、オフラインで形成できる信頼の足元にも及ばないことが、はっきりしました。
もちろん、そのことを踏まえても、役に立つオンラインのコミュニケーションはあるのですが。


自分はイケてるぞアピールからは腐臭がただよう…
“見るに耐えない”コミュニケーション

宮台:今お話したオフラインとオンラインのコミュニケーションの違いを踏まえていうと、ツイッターのフォロワー数を競うとか、Facebookのお友達が何人いるかを自慢するなんていうのは、僕にとっては何を意味するのかまったくわかりません。

 嫌なのは、「自分は友達多いぞアピール」や「自分は知的だぞアピール」や「自分はイケてるぞアピール」の浅ましさです。
要は「自分はすごいぞアピール」。人を幸せにすることじゃなく、自分が幸せになることだけ考える連中から漂う腐臭が、嫌なんです。


 僕ががとりわけツイッターよりもFacebookが嫌なのは、個人のプライバシーを開陳する形をとるFacebookのほうが、腐臭が漂いやすいからです。
日本人のリーダー層、つまりイノベーター層とアーリーアダブター層がFacebookを嫌う理由も、そこにあると思います。

――その「自分はイケてるぞアピール」は、世界でも行われているのですか?

宮台:ヨーロッパやアメリカの人たちには、元々は貴族文化に由来する社交の伝統があります。
知らない人たちの間で互いの尊厳を保ちつつ関係を深める作法です。だから、知り合いしか前提にできない日本人の大方がやるような、杜撰なアピールをしないんです。

 三年前にアメリカの大学で連続講演をしたとき、日本の2ちゃんねるに似たサイトがあるものの全然広がらない理由を尋ねると、「逆にアメリカ人の我々から見ると、なんで2ちゃんねるにああいう書き込みができるのかわからない」と問い返されました。

「アメリカだと、匿名性に守られて居丈高に誹謗中傷すると、友達がいないか、頭が悪いか、性格がチキンか、どれかだというふうに思われるので、とてもじゃないが2ちゃんねるのような書き込みはできない」と言われました。
本質的なコメントだと思いませんか。

 Facebookも同じことです。Facebookの使い方を見ると、日本はとりわけ杜撰なアピールが多くて、腐臭が漂うので見るに耐えません(笑)。
こうした独特の腐臭と、先に話した自己情報制御コストの高さゆえに、情報感度の高い人は日本ではFacebookをやりません。


さみしいからアピールしてしまう…
代わりのもので“埋め合わせ”する行為が日本では繰り返されている

宮台:アメリカやヨーロッパでFacebook離れが起きたのは、写真のタグ付けとかFacebookで浮気の証拠を握られてしまうなどの実害が大きな原因でした。
日本でも一部がFacebookを離れましたが、実害コストに加えて、日本独特の腐臭が理由です。

 日本では優勢なツイッターでも事情は同じです。浅ましい「俺はすごいアピール」がたくさんあって、見るに耐えません。
そういう浅ましいアピールは見るに耐えないっていう感受性自体は、徐々に広がってきているだろうとは思います。

 ただ、一方で、もともと2ちゃんねるのようなものが発展しやすい、社交文化からかけ離れた土壌があります。
浅ましいアピールを嫌う感受性がどんなに拡がっても、そうした拡がりが及ばない膨大な「釣られ層」が今後も存続するだろうとも思います。


――日本人のそのような層は具体的にいうと、どんなタイプの人々なのでしょうか? またその層はなぜ日本で多くみられるのでしょうか?

宮台:政治学者の丸山眞男によれば、共同体が空洞化すると「釣られ層」「クレージークレーマー層」が増える。
第一の理由は、自分がうまく行っていないとか認められていないという鬱屈。オフラインでうまくいかない人生を、オンラインで埋め合わせるのです。

 第二の理由は、「そんな浅ましいアピールをするとこんなふうに思われちゃうぞ」と忠言する友達がいないということです。
だから馬鹿だと思われていることに気付かない。気付いたとしても、欠落を埋め合わせたいという気持ちが強すぎて、我慢できないんですね。

 こうした「埋め合わせ動機」は宗教社会学で古くから注目されてきました。
現実社会でうまく地位達成できない人が、宗教教団で代替的な地位達成をしようとする営みです。現実社会で承認を獲得できない人が、宗教教団で代替的な承認を獲得しようとします。

 日本では社会文化の伝統がないので、周囲からは「埋め合わせ動機」がバレバレなのに、本人が気付かないというケースが多いようです。
だから、浅ましいアピールが周囲に腐臭を漂わせまくるという日本的状況が展開するのだと思います。

 だから日本にはステイタス・サブスティチューション(地位代替=埋め合わせ)が到るところに見られます。
1960年代末から性的解放が進むと、「白いお城と花咲く野原」的なロマンチックな繭に籠る「乙女ちっく文化」が展開しました。これも地位代替の典型です。

 1970年代末からナンパ・コンパ・紹介的なデートカルチャーが上昇すると、デートカルチャーに参入できない若者が「オタクのうんちく競争」で上昇しようという動きを見せました。これも地位代替の典型です。

 1990年代半ばには援交ブームやコギャルブームが盛り上がりましたが、これに参入できない少女たちが篠原ともえ的な「不思議ちゃんブーム」を盛り上げました。
これも地位代替の典型だと言えます。日本ではこうした地位代替が何度も繰り返されてきました。

 繰り返し起こるたびに、「これは埋め合わせだ」という指摘が一部先端層からなされてきました。
オタクについては、1983年に『漫画ブリッコ』の連載を担当する中森明夫が、埋め合わせの揶揄という文脈で、オタクという言葉を発明したのが、有名でしょう。

 でも、インターネットは、「見たいものしか見ない、見たくないものから目を背けるコミュニケーション」です。
浅ましい「自分はすごいアピール」が漂わせる腐臭はうんざりだ、という指摘が、視界に入ったとしても一瞬後には見なかったことにされるでしょう。



宮台真司
社会学者。首都大学東京都市教養学部教授。東京大学助手、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。近著に『日本の難点』(幻冬舎)、『きみがモテれば社会は変わる。』(イースト・プレス)など。
ツイッター:@miyadai

 代わりのものでさみしさを“埋め合わせ”する行為というのは、どんな人も身に覚えがあるのではないでしょうか。 現在進行形で「自分イケてるぞアピール」をしている人を見かけたら、ぜひこちらの記事のURLを紹介してあげてください。次回以降は、恋愛に関することにも迫っていきます! 


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宮台さんの格言はこちら→社会学者・宮台真司さんが考える「ブスとは…」


Text/AM編集部


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