「TAKERU」は今

      [2008/06/12]

     パソコンでも携帯電話でも、自宅やオフィスにいながらにしてお好みのソフトが手に入る「ダウンロード」。この先駆けとなったシステムが「TAKERU(タケル)」である。

    斬新すぎるアイデア。あまりにも早すぎた発明

     1985年にデビューした、このゲームキャラクターのような名前のシステムの正体は、パソコン用ゲームソフトの自動販売機。だが、販売機内の商品が取り出し口からゴロンと出てくるわけではなく、オンデマンドでホストコンピュータからゲームが配信されるという画期的な機械だった。
    「流通革命を狙った意欲的なシステムでした。多種多様なパソコン用ソフトを扱う自動販売機ならではのアイデアが凝縮していたと言えます」(株式会社エクシング)

     品切れもなければ在庫の補充も不要。家電量販店やパソコンショップに置かれた「TAKERU」は各所で話題になったが、現在に比べて通信インフラが貧弱だった当時、「TAKERU」にデータを配信するだけでも膨大な通信コストが発生。採算がまったく合わずに、早々に町から姿を消してしまう。

    七転び八起きの精神が次の成功を導き出す

     これだけなら「なつかしのITマシン」というだけなのだが、この話のクライマックスはこれからだ。

     当時、収録できる曲数が限られていたレーザーカラオケが主流の中、その弱点を解消できるものとして、親会社であるブラザー工業が通信カラオケという全く新しいサービスを独自に構想。新事業の運用をビジネスとするエクシングを設立した。そして、今や通信カラオケの代名詞ともなった「JOYSOUND」となって登場。さらにこれを「ポケメロJOYSOUND」として発展させ、携帯電話でも音楽がダウンロード可能なサービスも先駆けた。「TAKERU」が残したものは音楽ダウンロードにとどまらない。市役所などで目にする証明書の自動発行機も、実は「TAKERU」が礎になっている。膨大なデータの中から必要な情報だけを即時に配信する、というコンセプトが、思わぬ形に生まれ変わったという例だ。

     プロジェクトには失敗がつきもの。だが失敗で培ったものは無駄にはならない。「失敗は成功の元」というあまりに有名な格言を見事に体現した「TAKERU」に、サクセスへのヒントが隠されているのではないだろうか。

    文●秋山岳志(エフスタイル)

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