物騒な事件が多いこのごろ、ひとり暮らしを始めるのでできるだけ管理のよい物件を見つけたい……。引っ越しビギナーにとって、部屋探しに不安はつきものです。
そこで、大阪市中央区で「女性の安全な一人暮らし」をテーマに活躍する不動産アドバイザー・穂積啓子氏にアドバイスをお願いしました。
■共用部分を見れば管理状態が分かる
「管理が行き届いた物件を見抜くポイント」について、穂積さんは、
「建物の内側と外側の両面をチェックする視点を持つようにしてください。すると、家主や管理会社の姿勢が透けて見えることがあります」と話します。
仲介をする不動産屋さんに新しい部屋を案内してもらうときには、営業の人と部屋に直行することになりますが、その際に、
「部屋ばかりに気を取られる人が多いようですが、実は外観やその周囲をぬかりなくチェックすると、その物件の管理状態を感じ取ることができます」と穂積さん。
なぜなら、
「部屋に到達するまでには、玄関や集合ポスト、エレベーター、廊下などの共用部分を通りますから、意識を高く持ってそのあたりからチェックをしていきます」と穂積さん。
また、
「共用部分のありかたは共益費に反映されるということを知っておいてください」とも。
一般的に、賃貸マンションやアパートでの毎月の住居費は、「家賃+共益費」を支払うことになります。共益費は、ごみ処理、清掃、エレベーターの保守点検、照明のつけかえなど、共用部分の管理代に適用されます。
「不動産屋さんに仲介してもらうにあたっては、家賃、共益費、所在地、広さ、階数、間取りなど、部屋の概要について明記された書類が手渡されます。そこに家賃だけの表示がある場合は、共益費は家賃に含まれているということです。
不明な場合は、『共益費はどうなっていますか?』と不動産屋さんに確認しておくとよいでしょう」と穂積さん。
■最大ポイントは、きちんと清掃されているかどうか
マンションやアパートなどの共同住宅にとって、「共用部分」とは、次の場所を指します。
・建物の玄関とその周囲
・集合ポスト
・エレベーターホール
・エレベーター
・廊下
・階段
・壁や天井
・ごみ置き場
・自転車置き場
・植え込みや庭
など
さらに、
・部屋の玄関扉
・ベランダ
も共用部分になります。
「共用部分をチェックする最大のポイントは、『きちんと清掃されているかどうか』です。築年数が新しい古いにかかわらず、管理状態というのは、共用部分の清潔感に反映されることが多々あります。
例えば、集合ポストが壊れている、チラシが散乱している、落書きがある、タバコの吸い殻のポイ捨てがある、掲示板に期間切れ告知の張り紙がある、廊下がほこりだらけ、天井や壁に雨漏りのしみ、自転車置き場やごみ置き場が乱雑、電球が切れている、エレベーターの押しボタンが破損しているなど、清潔感に乏しいと感じる場合は、きちんと管理されていない、入居者もルーズな人が多いと想定することができます」(穂積さん)
また、
「管理がずさんそうである場合は、入居後に、家主や管理会社、近隣とのトラブルが発生する確率が高いと判断したほうが無難でしょう」とアドバイスをします。
■共用部分からは、家主の防犯意識も見てとれる
もう一つの視点として、「共用部分には、家主や管理会社の防犯意識が反映される」とか。「外から人が立ち入りやすい、階段の踊り場や廊下に人が隠れやすい、自分の部屋の玄関が外から見て死角になっている、ベランダから侵入されやすい、道路に面していて外からのぞかれやすい、そんなことはないか、建物のつくりをチェックしてください。
仲介のためにお客さまを現地へ案内するとき、特に部屋探しのビギナーさんの場合は、これら防犯への意識が低いことが多いんです」と穂積さんは注意を促します。
■道路や線路に面していないか
さらに、騒音についてもチェックが必要だと言います。
「ベランダが大きな道路や線路に面している場合は、必ず、車や電車の騒音が響くと考えてください。同時に、部屋を内見するときにはベランダを開け放って、どの程度の音がするのかを十分に確認してください。入居後に、『あんなに車の音が響くとは知らなかった!』という不快な思いをする場合がありますから。
もっと言うと、大型車や電車が通るたびに振動で部屋が揺れたり、自動車や電車が放つ電波でパソコンや携帯電話に弊害をもたらすことがあります。必ずその部屋から、携帯電話や無線LANが正しく使えるかどうかを確認してください。
そういう立地で優良な物件の場合は、二重窓になっています。窓を開けると音は響きますが、閉めるとほぼ音がしないというパターンも多くあります。それで許容範囲かどうか、自分で確かめるようにしましょう」と穂積さんは念を押します。
■1階がコンビニ、飲食店などの場合は防犯に注意
1階が飲食店、コンビニ、何かのショップ、という物件には、
「どのような業種で、営業時間は何時(いつ)までで、お客さんはどういう人たちなのかをチェックしてください。
コンビニは便利だと考えがちですが、24時間、電気が明々とついていて窓越しの光で不眠に陥る、深夜に人の出入りが多くてかえって物騒だということがあります。
店の前や駐車場に車やバイクが集まるので頻繁にエンジン音がしたり、大声で話をされて騒々しいことも。特に深夜の物音、話し声は階上によく響くんです。それらが自分の生活にどう影響しそうなのかを想像してみることが大切です」(穂積さん)
飲食店が入居する物件は、ゴキブリなどの害虫が排水管を通って階上の部屋に侵入することがあります。また、店に出入りするお客さんの様子などを知るために、あらかじめ店を利用してみるなど、「なにごとも入念な下見が重要」だと言います。
また、不動産屋さんに案内される際には、店から物件まで車で移動することが多いものですが、
「街の様子は、昼と夜ではまったく違い、昼には気付かなかった風俗店が夜から明け方まで開店しているということもあります。
入居を決める前には物件から駅まで歩き、周囲を散策してください。昼だけでなく、自分の通勤時間帯、特に遅く帰るときなどを想定し、必ず夜も歩いてください。時間によって変化する街の様子が分かります。
自転車での移動が多い人は、後日に自転車で走ってみてください。また、できるだけ、引っ越し後の生活をシミュレーションしておくと意外なメリット、デメリットを発見できる」と穂積さんは強調します。
お話を聞くうちに、共用部分には、家主や管理会社がその建物を大事にしているかどうかが反映され、そのことは自分の生活に直接的な影響を受けるのだと気付きました。次の部屋探しのときには、間取りや設備など見た目だけではなく、心豊かな生活が送れるかどうかを想像しながらチェックしようと思います。
監修:穂積啓子氏。その活躍ぶりは、コミックエッセイ『不動産屋は見た! ~部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子 東京書籍 1,155円)に描かれました。同書の主人公「善良なる大阪の不動産屋さん」は、穂積氏がモデルです。
(海野愛子/ユンブル)
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