iDeCo(個人型確定拠出年金)は、法改正に伴い、2017年1月から加入対象者が大幅に拡大した。専業主婦や公務員が加入できるようになったことでも話題になっている。簡単に言うと、20歳から60歳未満であれば原則誰でも加入できる制度になった。

「iDeCo」の認知拡大を目指して

iDeCoには大きく3つの税制メリットがある。1つ目は掛金が全額所得控除となり、所得税・住民税が軽減されること。2つ目は利息・運用益が非課税となること。3つ目は60歳以降での受取時に一括でも分割でも税金が控除されること。

投資信託などで運用運用する場合は価格変動リスクはゼロではないが、加入者にとってポジティブな側面の多い制度である。一方で、「今から15年前の平成14年に導入された個人型確定拠出年金ですが、ほとんどの方が存在すら知らないのが実情」と語るのは、りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員 谷内陽一氏だ。

りそな銀行 りそな年金研究所 統括主席研究員 谷内陽一氏

昨秋、制度を親しみやすい印象にするため、厚生労働省が中心となって「iDeCo」(イデコ)という愛称が付けられたが、それでも広く知られるようになったとは言い難い。大手金融会社、ネット証券会社など、各社が金融商品として展開するなか、りそなもiDeCoの認知拡大を進めるため、店頭のみならず、インターネットでの施策に積極的に取り組んできた。

定番のリスティング広告やリターゲティング広告のほか、オウンドメディア「確定拠出年金スタートクラブ」でコラムを毎月10本配信するなど、力を入れている。そんななか、今夏新たに取り組んだのが、女性インフルエンサーを活用したInstagram施策だ。

「確定拠出年金スタートクラブ」

具体的には、女性インフルエンサーにマネーの勉強会に参加してもらい、20代後半~30代の女性をメインターゲットに、その様子を各自のInstagramで発信してもらうとともに、勉強会の模様を記事化・拡散する取り組みだ。谷内氏と同施策を進めたビルコム 第 2 IMC プランニング局 局長 竹下知宏氏は、その狙いを次のように説明した。

「大きく3つの理由があります。1つ目は、iDeCoの加入対象拡大によって、第2号被保険者に扶養されている専業主婦である第3号被保険者も対象になったこと。一度会社を辞めて専業主婦になったり、専業主婦から勤めに戻ったり……転職や結婚といった人生の転機があっても積み立てを続けることができるようになりました。

2つ目は、女性の方が男性よりも長生きであることです。平均寿命が90歳近くになり、平均寿命を上回る長寿の方も多くいらっしゃいます。iDeCoの主な加入層は40代以降の方ですが、iDeCoは長期の積み立てが原則です。早いうちに加入していただく方が、税のメリットを長く享受できますし、今後公的年金の給付額は確実に減ることが考えられます。また、月5000円からの積み立てで始められる点で、他の投資と比べて負担感は少ないです。そのため、私たちとしても、20~30代の若いうちに加入し、積み立てをスタートしていただきたいと強く願っています。

3つ目はインフルエンサーの大半が女性であることです」

ビルコム 第2 IMC プランニング局 局長 竹下知宏氏

確かに、ネット上では女性インフルエンサーが目立ち、彼女たちを起用した施策もトレンドだ。では、多くのインフルエンサーから、今回の5名をどのような基準で選んだのだろうか?

これについて竹下氏は、「インフルエンサーの属性や影響力、彼女たちが投稿しているコンテンツとブランドとの相性を見て選定しました。属性については、ターゲット世代に影響力がある方から、一人暮らしの方やママ、フリーランスの方や主婦など、さまざまなライフスタイル・ワークスタイルの方にご協力をいただきました。どの属性の方のフォロワーに反響が大きいか、テストする目的もありました」と回答した。

影響力については、平均3万フォロワー以上を基準に、過去の仕事実績を参考にしたという。また、ブランドとの相性については、日頃からライフスタイル、生活全般寄りの投稿をしているかどうかを重視。例えば、コスメや化粧品に特化した投稿のみだと、りそなのブランドを上手く伝えるのが難しいので、インフルエンサー、りそな双方に良い影響が出るような選定をしたという。