2017年11月1日に行われた記者会見において、小田急電鉄は2018年3月(期日未定)に実施するダイヤ改正の詳細を発表した。代々木上原・登戸間の複々線化工事が全面的に完成し、現時点では複線のまま残っている下北沢駅付近のネックが解消されることによって、大幅な輸送力増強が実現する大規模な改正だ。

この改正にはさまざまな見どころがあるが、3月までの間、そのうちいくつかを何回かに分けて紹介し、小田急電鉄が今回の大変革を機に狙っているところを解説していこう。

山本利三郎が描いた夢

今回のダイヤ改正は、激しい混雑が繰り返されている、ラッシュアワーの輸送改善が主眼であるが、小田急電鉄の象徴的な目標が達成されたことにも注目したい。小田急史上初めて、新宿・小田原間が1時間を切り、59分で走り抜く特急ロマンスカー(「スーパーはこね」)が、土休日に下り4本、設定されるのである。

左:記者会見にて挨拶する、星野晃司小田急電鉄取締役社長。右:現在の小田急ロマンスカーのフラッグシップである50000形「VSE」

この意義を説明するには、山本利三郎という人をまず紹介しなければなるまい。

山本利三郎は鉄道技術者であり、1948年に6月1日に、小田急電鉄が戦時合併させられていた東京急行電鉄から分離独立した際、取締役運輸担当兼運輸課長に就いた人物である。

山本は電車の高速化にはとりわけ熱心で、スピードアップにこそ鉄道の将来があると確信していた。その理想を実現するため、就任直後の1948年10月16日には、早くも新宿・小田原間ノンストップの特急を復活させた。まだ戦後の荒廃が続き、窓ガラスが割れたまま走る電車など当たり前だった時期に、まず集中的に整備した車両を特急に投入。続いて、他社に先駆けて専用車両を新製したのである。