説明を行ったBlackBerry Technology Solutions セールス&マーケティング担当 上級副社長 Kaivan Karimi氏

BlackBerry QNXは11月21日、カナダ大使館において事業戦略説明会を開催した。さらに、QNXプラットフォームによる組み込みハイパーバイザー(仮想化技術)を実現したジャガーのコンセプトカーが公開された。

「BlackBerry」といえば、モバイル・メール端末の印象が強いが、同社は2010年、組み込み向けソフトウェアのQNXを買収し、自動車・産業・ネットワーキング・軍事・鉄道・医療などの分野において、業界に特化したミッションクリティカル・セーフティクリティカルなシステムを提供している。中でも、自動車の車載システム提供事業においては、現在販売されている6000万台以上の自動車にQNXテクノロジーが利用されており、車載テレマティクス・アプリケーション向けOSで第1位、インフォテイメント分野の車載ソフトウェアで第1位を獲得している。

自動車製造業者から、汎用組み込みの分野まで、顧客の幅は広い

BlackBerry QNXは自動車市場において存在感を放っている

自動運転車のビジネスチャンスは「ソフトウェア分野」

BlackBerry上級副社長(兼BlackBerry QNXジェネラルマネージャー)のJohn Wall氏

「自動車業界のトレンドは、その複雑さにある」とBlackBerry上級副社長(兼BlackBerry QNXジェネラルマネージャー)のJohn Wall氏は説明する。

自動運転技術の進化に伴い、ECUの主役化が進むと、複数のECUを単一のドメインコントローラーに統合するドメインコントロールが重要となり、ECUには、「安全性」と「リアルタイム性」が求められるようになる。さらに、単一のドメインコントローラーに隣接する異なる機能およびOSが統合される場合、選別・分離・フルセキュリティが必要となる。同社ではこのトレンドに対応するため、自動車の機能安全規格「ISO26262」に対応したハイパーバイザーやOSおよびミドルウェアを提供する。

加えて同氏は「将来的に、自動車コストの50% 以上を、ECU・電子部品・ソフトウェアなどが占めるようになる。そのうちの大部分がソフトウェアであり、これは大きなビジネスチャンスだ」とコメント。BlackBerry QNXの脆弱性診断の結果から他社のOSとの優位性を示し、今後の成長性を期待している様子を見せた。

自動運転技術の進化に伴い、ECUに求められる機能は増加する。それに伴い、ソフトウェアのサイズは大きくなっていく

自動運転自動車におけるソフトウェアのビジネスチャンスは急速に拡大することが予想される

他社OSとの脆弱性の比較。BlackBerry QNXは、AndroidやLinuxと比べ、脆弱点の数が少ない

さらに、日本向けの戦略についても発表。同社は今後、国内の顧客およびパートナー企業と連携し、ミッションクリティカルなアプリケーションの安全性とセキュリティを実現するためのエコシステムを構築していくことで、日本で開発されるすべての製品の設計・生産にセキュリティを導入していく考えだ。そのために、自動運転機能に特化してルネサスと協力し、オタワにて自動運転車の試作品を研究していくとしている。

ドライバーは振り返らずに後部座席と会話できるように

事業戦略説明会ののちには、QNXプラットフォームによる組み込みハイパーバイザーを実現したジャガーのコンセプトカーを公開。各座席に設置されたマイク・スピーカによって、車内での会話をサポートするICC(In Car Communication)機能などの紹介が行われた。これによりドライバーは、後部座席の人と、振り返ることなく、かつ大声を出さずに、会話ができるようになる。

展示の様子。画像左下が「ICC(In Car Communication)機能」のデモンストレーション画面