ヒューマンアカデミー 全日制教育事業部 児童教育事業本部 神野佳彦チーフマネージャー

子どもに取り組ませた方がいいのかなと思いつつも、ちょっととっつきにくい「知育」の世界。知育玩具や教材を使って家庭で実践することもできますが、習い事としてはどのようなものがトレンドになっているのでしょうか。

ヒューマンアカデミーで児童教育の分野に携わっている神野佳彦さん(全日制教育事業部 児童教育事業本部 チーフマネージャー)に聞きました。

人気は英語とプログラミング

――現在人気の知育系の習い事にはどんなものがありますか?

やはり英語、それにプログラミング系の習い事にはニーズがあると感じています。

2020年には学習指導要領の改訂により、小学5・6年生が1つの教科として英語を学ぶことになります。1年間で70時間です。

しかし、1年間に175時間を割く国語や算数と比べると、少ない時間ですよね。語学を身に付けるためには、生活の中でどれだけその言葉に浸っているかというのが大事な要素だと考えると、民間でより英語力を鍛えようと考える親御さんはますます増えていくはずです。

またプログラミングも同様に、2020年の学習指導要領の改訂に伴って小学校で必須化されます。授業で習う前に学習環境を整えておきたいと考える、教育意識の高い層の方に支持されている印象です。また、今後は小学校のプログラミングの授業以上の内容を希望する方々が、民間の教育機関を利用していかれるのではないかと思います。

集中力や思考力を養わせたいと考える親は増えている

――幼児期からこのような習い事に取り組むご家庭は増えているように感じるのですが

小さいうちからの習い事としては、能力開発的なプログラムが多いですね。"育脳"ですとか、想像力、思考力を養えるような習い事に興味を持たれる方は増えているような気がします。

例えばキューブ型のブロックを重ねてピラミッドを作らせ、「このピラミッドを作るのにブロックは何個必要かな?」と問いかけるような内容です。学年が進むと計算式になっていきますが、小さいうちは自分でやってみて気づいていくという過程を通して、想像力や思考力を養うという方法になります。

――実際にこういった教室は増えているのでしょうか?

その分野の第一人者の方のメソッドを取り入れた習い事教室も多数ありますが、低年齢向けの新しい習い事もこれから増えていくでしょう。

今後AIが進化していけば、今ある職業がAIに取って代わられて無くなってしまったり、今までなかった職業が出てきたりしますよね。そこで、小さいうちからどういうことをやっていったらいいのかなって考える親御さんは、必ずいると思います。

また子どもが成長すると、いつかどこかで国語や算数など、得点を取るための勉強にシフトしなければならない時期が来ます。ある程度、教育意識の高い層のケースになりますが、勉強の時期が来る前に、集中力や思考力、クリエイティブマインドなど、"器(うつわ)的"なところを養っておきたいと考えられる親御さんは多いですね。

「幼児向けの知育教室は増えている」と神野さん

習い事は「楽しいこと」と「検証する場があること」が大事

――習い事は何歳から始めたほうがいい、というのはあるのでしょうか?

何歳からというよりも、まずはその習い事が想定している対象年齢を参考にされるといいと思います。実際に体験させてみてお子さんが取り組めるようであれば、チャレンジさせてみてはいかがでしょうか。

例えば弊社では、5・6歳児から始められるロボット教室を展開しているのですが、プログラムはこの年齢のお子さんが理解できる内容をかなり丁寧に検証して作っています。一方で能力には個人差がありますので、例えば4歳児が体験にいらして、明らかにうまく取り組めるようであれば入会をお認めすることもあります。

習い事をいつまでに始めないといけないとか、いつまでにやりきらなければいけないっていう制限はなくて、その子の能力を伸ばせるのであれば、いつでもやらせてあげたらいいと思います。

――どれくらい続けたらいいんでしょうか?

良いか悪いかは別として、半年スパンで習い事を続けるかやめるか考える親御さんは多い傾向です。4月から新しい習い事を始めて、その後動きが出やすいのは10、11月。半年やってみて、子どもが習い事を休みがちだったり、行きたがらなかったりということがあり、再考しようかなっていう動きが出てくる印象です。

――習い事を始めさせたいと思っても、どの習い事をさせるか悩む親御さんも多いと思います

進学塾などは目的がはっきりしていますが、習い事はさまざまな目的や種類があるので、悩んでしまいますよね。そんな中で今の親御さんは、いろんな体験会に参加されて、その中で一番子どもに合うものを選ぶ傾向にあります。サマースクールなど、短期のプログラムでお試ししてみるのもいいかもしれませんね。

そして一つ大切な要素としては、"楽しくなければ"というところがあると思います。子どもが"やらされている"とか、"無理に通わされている"などと考えていると、長続きしません。楽しいことであれば自分から率先して習い事へ通いますし、楽しいからこそ長続きする、長く続けないと身に付かない能力がたくさんあると思いますので。

そこで、親御さんが期待する能力が付いていけば一番いいと思います。

――親御さんの気持ちを考えるとそういう考えになりますよね

多くのお母様方は、習い事によって子どもに"何らかの能力"を身に付けさせたいと考えられている印象です。体験会などでも、「どういう力が身に付くんですか?」と質問されることは多いです。

例えば語学の場合、英検などで結果が出れば親御さんとしては「通わせてよかった」となります。また子どもも「さらに上に挑戦したい」という気持ちになってきます。ロボット教室でも年に1回全国大会を開催しているのですが、目標があったり、そこで表彰されたりすることで、子どもたちのモチベーションは向上します。

習い事が楽しいことに加え、能力を検証する場があることは必要かなと思いますね。

国語力を養う習い事にニーズのきざし

――2018年以降、流行しそうだと考えている習い事はありますか?

どこかで絶対にくると思っているのですが、国語力を身に付けるような習い事が出てくれば、教育意識の高い方からのニーズがあると思います。

今は、英語とかプログラミングなどがこれからの時代に必要なものとして注目されていますが、子どもたちの国語力とか読解力とか、そこからくる表現力などを題材にしている習い事って、実はあまりないんです。

中でも表現力が一番必要とされる"ライティング"の能力を身に付けられるような習い事は、求められていくと思います。例えば文章を書くときに、「あの子はかわいそうだった」ではなくて「どういうことでその子がかわいそうだったのか」を表現できるなどといったことです。

弊社ではこれから、日本の伝統文化についての講座を展開する予定なのですが、これも必ずニーズがあると思います。日本人として、日本のマナーとか季節の風物詩を子どもたちに知ってもらう内容です。

――どうしてこのような習い事にニーズがあると感じていらっしゃるのですか?

親御さんは、例えば英語をやらせることで子どもたちを外国人にしたいわけではありません。日本人として外国語が使えるようになってほしいと考えていらっしゃいます。

一方で、国際化社会が進む将来、外国人が日本に来たときに「日本の文化って何ですか?」と聞かれて答えられる日本人は、何人いるでしょうか。国語や日本の文化などは今後、「知りたい」「学ばせたい」という人自体が増えていくと思います。