大手キャリアから顧客を奪って契約を急拡大させてきたMVNOだが、ここ最近その伸びに急ブレーキがかかっている。主な理由はキャリアがMVNOへの流出を防止する策を大幅に強化したからなのだが、現在のMVNOを巡る3キャリアと、MVNOを推進してきた総務省の思惑、そして今後について考察してみよう。

好調だったMVNOが一転して危機を迎える

昨年まで、大手キャリアより圧倒的に安い通信料金を武器として、急成長を遂げてきたMVNO。だが今年、そのMVNOの伸びに大ブレーキがかかっているようだ。

実際、9割以上のMVNOに回線を貸し出しているNTTドコモは、MVNOの伸び悩みなどが影響し、今年度の純増数を220万から130万へと大幅に下方修正している。

またMVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)も、前年度まではコンシューマー向けサービスの「IIJmioモバイル」の純増数が、四半期毎に数万単位で伸びていたにもかかわらず、今四半期からはその伸びが急減。第2四半期にはついに、1万を切るに至っている。

IIJの2018年3月期第2四半期決算説明会資料より。今年に入ってから個人向けの「IIJmioモバイル」の純増数の伸びが急減し、四半期ベースでついに1万を切るに至っている

なぜこれほど急速に、MVNOの伸びが落ちているのだろうか。MVNO自体の数が700社近くにまで増たことで、それらが一斉に限られたパイを食い合い、競争を激化させたという市場環境も影響しているだろうが、より大きく影響しているのが大手キャリアである。

これまでMVNOは、格安な料金を武器に、大手キャリアからユーザーを奪うことで契約数を増やしてきた。だがそのキャリア側が、MVNOに顧客が大量に流出していることに危機感を覚え、流出防止に向けた対策を大幅に強化してきたからだ。

顧客流出防止の効果が表れたKDDI

中でもここ最近、MVNOへの顧客流出対策に最も力を入れてきたのがKDDIである。KDDIは低価格を求めるユーザー向けサービスの提供に最も消極的であったことが仇となり、MVNOの急伸によって低価格を求めるauブランドのユーザー流出が続いていた。

そのことに危機感を覚えたKDDIは、ここ数年のうちに低価格のサービスを大幅に強化。2015年にはauのMVNOとしてサービスを提供する子会社をUQコミュニケーションズと合併させ、「UQ mobile」ブランドによる低価格サービスへのテコ入れを図った。さらに今年1月には、MVNOの大手の一角を占めるビッグローブを買収。ケーブルテレビ大手のジュピターテレコムが展開する「J:COM MOBILE」と合わせ、3つのMVNOを活用して低価格を求める顧客を獲得する戦略に打って出たのだ。