2017年度の中間決算では、売上高、各種利益、四輪世界販売の全てで過去最高の業績を叩き出したスズキ。しかし、決算会見の席上で同社の鈴木俊宏社長は、好決算でも安心していないと胸の内を明かした。心配の種は得意とするインド市場で進むクルマの電動化だ。そんな中、スズキはトヨタと共同で、インド市場向け電気自動車(EV)を投入すべく検討を開始すると発表した。

インドの自動車市場が電動化するとスズキはどうなるか

スズキとトヨタは2016年10月に業務提携の検討開始を発表し、その方向で2017年2月に覚書を結んでいた。その後、両社の業務提携について具体的な進捗はあまり聞こえてこなかったが、ここへきて両社は、「2020年頃にインド市場向けにEVを投入するための協力関係構築に向け検討を進めることで合意」したと発表した。

業務提携の検討開始を発表する会見に登壇したトヨタ自動車の豊田章男社長(左)とスズキの鈴木修会長(2016年10月に撮影)

スズキはインド市場を得意とし、2016年度には過去最高となる144.5万台の自動車を販売した。2017年度は上期だけで82.6万台を販売し、過去最高ペースの好調をキープしている。

ただし、スズキにとって心配の種になっているのは、インドの自動車市場で急速に電動化が進みそうなことだ。先日の決算発表会で同社の鈴木俊宏氏は、「インドはあまりにボリュームが大きいので、そちら(電動化の路線)で一気に進むと、足元をすくわれる」と発言。販売のボリュームが大きい分、その車種を電動化していくには大きな投資が必要になる一方で、スズキは小さなクルマを中心とするメーカーであるため、莫大な投資が生じても、なかなか販売価格に転嫁できないという事情があるようだ。

2017年度の中間決算説明会に登壇したスズキの鈴木俊宏社長(2017年11月2日の決算説明会にて撮影)

スズキとトヨタの協業では、インド市場向けにスズキが生産するEVに、トヨタが技術的支援を行う。スズキは生産する車両をトヨタに供給する。また両社は、充電ステーションの整備、販売網におけるサービス技術者の教育を含めた人材育成、使用済み電池の適切な処理体制の整備、インドにおけるEVの普及・定着に向けた活動などで協力の可能性を探っていくようだ。トヨタの支援も活用し、うまくEVを商品にラインアップすることで、スズキが今後も、インドでのシェアを維持していけるかどうかに注目したい。