ヴイエムウェアは10月31日に年次イベント「vFORUM 2017 TOKYOで、AWSのクラウド基盤にVMware環境を構築して提供する「VMware Cloud on AWS」の国内提供を2018年第四半期から始めると発表した。

VMware Cloud on AWSにより、利用者は、VMware vSphereベースのプライベート/パブリック/ハイブリッドクラウドの環境で、Amazon Web Services(AWS)のサービスを利用しながらアプリケーションを利用することが可能になる。また、VMwareのツールを用いて、オンプレミスのリソースに加えて、AWS上のVMware環境を管理することもできる。

企業において、VMwareベースの環境とAWSのクラウドサービスを利用している場合、双方の環境は分断されており、リソースの利用も管理もバラバラの状態だ。

そこで、VMware Cloud on AWSを使えば、VMwareベースの環境とAWSサービス上のVMware環境にまたがってワークロードの移動が可能になり、管理も一元的に行えるようになる

今回、VMwareのCEOを務めるパット・ゲルシンガー氏をはじめ、同社幹部に「VMware Cloud on AWS」について聞く機会を得たので、その最新情報をまとめてみたい。

日本での正式リリース時はフルスタックで利用可能に

「vFORUM」の開催に伴い来日したゲルシンガー氏は、プレス向けのラウンドテーブルに登壇した。同氏は、「われわれがハイブリッドクラウドを提唱した当初、真剣に聞いてもらえなかった。しかし、今は違う。今年10月には、Googleとシスコシステムズがハイブリッドクラウドで提携を発表した。VMware Cloud on AWSは、われわれのマルチクラウド戦略の展開に大きな役割を果たす」と語った。

VMware CEO パット・ゲルシンガー氏

「VMware Cloud on AWS」は昨年10月に発表され、今年8月にAWSの米国西部(オレゴン)リージョンで「イニシャルアベイラビリティ」の提供が始まったが、ゲルシンガー氏は「大きなワークロードを移動するにあたっては、やるべきことがたくさんある」と述べた。

日本での提供については、「来年、VMware Cloud on AWSは日本のアベイラビリティーゾーンで利用できるようになるが、その際は、フルスタックの機能を使うことができる」とした。VMware Cloud on AWSについては、ユーザーのフィードバックを加味しつつ、四半期ごとに機能を改善していくという。

ちなみに、「イニシャルアベイラビリティ」が50のユーザーに提供され、日本では、野村総合研究所(NRI)とリコーがVMware Cloud on AWSを利用している。両社の担当者は「vForum」に登壇し、利用状況を紹介した。その際、「既存の資産を生かすことができる」「vCenterでVMware環境とAWSのサービスを管理できるのは魅力」と話した一方、今後の機能改善と日本のデータセンターからの提供に対する期待を示した。

日本における状況について、ヴイエムウェアの代表取締役社長を務めるジョン・ロバートソン氏は「日本においてはPoCが重要なので、もっと多くの企業に広げたい。実のところ、正式リリースからPoCをやっているようでは、間に合わない」と説明した。

ヴイエムウェア 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏

Direct Connectは来月ごろに提供か

さて、リコーとNRIからも話があったように、「イニシャルアベイラビリティ」では、VMware環境をフルスタックで利用できないなど、機能がすべてそろっているわけではない。

VMware プロダクトマネジメント担当シニア・ディレクターのナラヤン・バラワジ氏が、拡張が予定されている機能について説明した。

VMware プロダクトマネジメント担当シニア・ディレクター ナラヤン・バラワジ氏

バラワジ氏は初めに、AWSのリージョンとアベイラビリティーゾーンについ説明した。リージョンについては、現在はオレゴンのみでの提供となっているが、来月にはバージニアがローンチされるという。また、1つのリージョンで複数提供されているアベイラビリティーゾーンについては「将来、複数のアベイラビリティーゾーン間でクラスタの拡張をサポートする」と述べた。

加えて、「VMware Cloud on AWS」において利用が期待されるサービスに「AWS Direct Connect」(専用線接続サービス)がある。バラワジ氏は同サービスを「優先度が高い」としたうえで、バージニア・リージョンのローンチと同じくらいの時期にリリースを予定していると語った。

また、料金体系については、現状、時間単位での課金となっている。バラワジ氏は、「1時間単位の1ホスト当たりの料金は8.37ドルだが、ユーザーはこの価格に満足しているようだ」と話す。ただしAWSは今年9月、EC2インスタンスとEBSボリュームで1秒当たりによる課金に対応したことを発表しているが、「VMware Cloud on AWS」については「検討していく」という。

バラワジ氏は、「イニシャルアベイラビリティ」について、「50のユーザーに提供したが、成功したと言える」と述べ、米国のユーザーは既に本番稼働に近い状況であることを明かした。

ちなみに、新たなチャットサポートのモデルが導入されており、深い内容の質問もVMware グローバル サポートサービスの専門部隊が5分以内に回答してくれるそうだ。

なお、クレジットカードの利用は「技術的には難しくない」そうだが、具体的な利用開始時期は未定とのことだ。

VMwareユーザーおよびAWSの企業ユーザーの期待を担っている「VMware Cloud on AWS」。「イニシャルアベイラビリティ」のユーザーは既に利用するメリットを感じているとのことなので、今後の機能改善に期待したい。