MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)が、来春の提供に向けて取り組んでいる「フルMVNO」。加入者管理機能を持ち、自身でSIMを発行できるようになることで、さまざまなメリットが生まれるというが、一方で「IIJmio」などの個人向けサービスにはほとんど影響を与えないとも言及している。なのであれば一体なぜ、IIJはフルMVNOに力を入れているのだろうか。

来年3月開始予定の「フルMVNO」とは

インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月8日、同社のMVNOに関する説明会を実施し、IIJのMVNO事業の現状などについて説明がなされた。その中で大きなテーマの1つとして触れられていたのが、「フルMVNO」についてである。

フルMVNOについて改めて簡単に説明すると、HLR(Home Location Register)やHSS(Home Subscriber Server)といった、加入者情報を管理するデータベースを、自ら保有して管理しているMVNO、ということになる。HLRやHSSはSIMの番号なども管理していることから、SIMを発行・管理する上で非常に重要な存在でもある。

これらの設備は大手キャリアが保有しているため、SIMの発行や管理は大手キャリアにしかできなかった。そのためMVNOは大手キャリアが発行したSIMを借りてサービスを提供し、キャリアが用意する範囲の中でしかサービスを提供できないなど、キャリアの枠組みに縛られてしまい自由なサービス設計をするのが難しかったのだ。

だがMVNOがそれらの設備を保有してフルMVNOになると、自社でSIMを発行できるようになるため、サービス設計の自由度が大幅に高まる。そこでIIJは昨年8月、NTTドコモにHLR/HSSの相互接続を申し入れ、2017年の下期にフルMVNOとしてのサービスを提供すると発表。国内初のフルMVNOとしてサービス提供に向けた準備を進めているのだ。

従来のMVNOとフルMVNOの違い。SIMを発行できるようになるなど、よりサービスの自由度が高まるのが大きな特徴だ

そして今回の説明会で、IIJは11月に大きな試験が終了するなど準備が順調に進んでいることを公表。当初の計画通り17年度末、つまり来年の3月頃には第1弾のサービスを提供する予定だとしている。会場でも実際にIIJが提供するSIMと、それが実際に動作する様子を公開しており、確実に準備が進んでいる様子を見て取ることができた。

IIJがフルMVNOとして作成したSIM。現在はまだ試験的に作られたものだというが、IIJ独自のSIMとして認識、利用できるようになっている