請求側のメリットとしては、請求書作成や印刷、送付、入金確認、催促などの作業が不要になるため、決済にかかる事務コストが大幅に削減されるほか、振込による代金回収よりも入金サイクルが早まることが挙げられる。クレジットカード決済であるため、回収のリスクが大幅に減り、与信管理が軽減されるというのもポイントだ。

「約400万社あると言われている国内中小企業のキャッシュフローを改善したいという思いでやっている。取引先からの入金がなく従業員に給料を支払えなかったなど、キャッシュフローに関して問題を抱えているという声を中小企業の方からいただくことがある。クラウドサインペイメントで、早期入金を実現し、かつ債権回収を100%行えるようになることで、企業間のキャッシュの流動性を高めたい」(橘氏)

クラウドサイン事業部長 橘大地氏

支払い側にとっても振り込み作業が不要になるため、決済にかかる事務コストを削減でき、振込み手数料を支払う必要がなくなるメリットがある。クレジットカード払いであるため、分割支払いも可能となる。

想定される利用シーンや用途も幅広い。たとえばB2C分野ではセミナーや資格試験の申し込み、B2B分野では売買契約やフランチャイズ加盟契約、業務委託契約、さらにはC2C分野においても自宅でのキッチン教室やピアノレッスンの月謝の徴収、といったように、各分野に可能性を持つサービスであるといえる。

当面は、請求書発行から支払いまでを行うために利用するケースを想定しているという。「請求書発行のフローをなくす」ことが理念であるものの、原理的には請求書をクラウドサインペイメントで送付・決済が可能だ。橘氏は「しばらくは請求書としての利用シーンも多いのでは」と話していた。将来的には、家賃、駐車場代、税理士・会計士への報酬など月額決済への対応や、従量課金といった「金額が変動する決済」についても対応していく予定だ。

B2B市場でもフィンテックの波を

国内の法人決済市場は約920兆円と言われている。現在の決済手段は銀行振込や小切手など旧来からある支払方法が大半を占めており、クレジットカード決済額は市場の0.3%程度に過ぎない。クラウドサインペイメントはこの比率を、まず米国と並ぶ3%台へと押し上げるべくサービスを展開していく考えだ。普及が進めば、リーガルテックのみならず、フィンテック領域に与える影響も大きい。

特に現在の日本におけるフィンテック領域のビジネスは、B2CやC2C分野を対象としたサービスを中心に発展してきた流れがあり、B2Bを主な領域として想定しているクラウドサインペイメントは、国内フィンテックの新たな潮流を生み出すポテンシャルがあるといえる。

また、弁護士ドットコムでは、AIを用いた契約書の自動作成やブロックチェーン技術を用いた契約の自動執行といった研究開発も進めており、リーガルテックという視点で見ても、やるべきことはまだ多く残されている。従来の書面による契約締結実務をどこまで効率化できるのか、弁護士ドットコムの取り組みは緒に就いたばかりだ。