ドルビーとファーウェイは11月9日、メディア向けの共同セミナーを開催した。セミナーでは、特にPCとしてMatebook Xが世界で初めて搭載した(ファーウェイ調べ)「ドルビーアトモスサウンドシステム」に注目。「PCは音質が悪い」というイメージを払拭するドルビーアトモスサウンドシステムの仕組みなどを披露した。

HUAWEI Matebook X

音の三次元的な動きをPCのスピーカーで再現

先立つ10月25日、ファーウェイの13型ノートPC「HUAWEI Matebook X」(以下、Matebook X)と10.1型タブレット「HUAWEI MediaPad M3 Lite 10」(以下、M3 Lite)が、オーディオビジュアルアワード「VGP 2018」にてPC部門金賞とタブレット部門賞を受賞した。このうち、Matebook Xのサウンド機能に大きく貢献したのが、ドルビーアトモスサウンドシステムだ。

Matebook Xのスピーカーはドルビーがデザインした(左)。ドルビージャパンの大沢幸弘代表取締役社長は「ファーウェイからMatebook Xが発売された2017年7月4日は、ノートパソコンがオーディオになった記念すべき日だ」と語った(右)

ドルビーアトモスサウンドシステムを説明するには、まず「ドルビーアトモス」について語らなければならない。ドルビーアトモスは、5.1chや7.1chといったチャンネルの概念を持たず、各物体の音(PCM)と位置座標を記録する「オブジェクトベースオーディオ」という新しい方式を採用した音声再生技術だ。

天井や足元にもスピーカーを配置することで、前後左右だけでなく、上下方向の三次元的な音の動きを再現できる。例えば、前方斜め上から足元を抜けて後方に過ぎ去っていく音などがリアルに聞こえてくる。

ドルビーアトモスサウンドシステムは、このドルビーアトモスの技術を、ノートPCのような小さなスピーカーで再現しようという技術。天井、足元、背後に物理的なスピーカーを設置していなくても、天井や足元、背後などで音が鳴っているように聞こえる。

音の三次元的な動きだけでなく、音量を上げても音が歪まず、Matebook Xがビビらない、音がこもらない、セリフが聞き取りやすい。コンテンツによる音量の差を一定に保つといった特徴がある。しかも、コンテンツがドルビーアトモスに対応していなくても、ハードウェア側が対応していれば、内蔵スピーカーとヘッドホンの両方で、コンテンツの視聴体験が向上するように作られている。

ドルビーアトモス対応のホームシアターでは、フロアに24スピーカーと1サブウーファー、天井に10スピーカーの最大34.1スピーカーまで使用できる(左)。ドルビーアトモスサウンドシステムは、ドルビーアトモスのサウンドシステムをPCで再現しようというものだ(右)

今回、ファーウェイがMatebook Xにドルビーアトモスサウンドシステムを実装するにあたり、ドルビーは開発段階から参加し、パーツの基本設計を決める際にも協力した。ファーウェイによれば、PCにはサウンド以外にも留意すべきところが多く、他の機能を犠牲にすることなく最良のサウンド環境を構築するために、いくつかの工夫を盛り込んだという。

例えば、ファンのノイズをなくすファンレスは、航空業界で使われている放熱効率の高い「ファンレス・スペースクリーニング技術」の採用で実現。また、大音量での再生時に音がぶれないようにするため、制振板を装備したりしている。

Matebook Xでは、音だけよくするのではなく、液晶画面の性能にもこだわった。1,000:1のハイコントラスト比や色再現率(sRGB 100%)によって、引き締まる黒と鮮やかな色彩を堪能できる。さらに、没入感を高める幅4.4mmの狭額ベゼルも採用した。こうした工夫の積み重ねによって、映画館のドルビーアトモスがパーソナル空間で体験できる環境を整えたのだ。

Matebook Xの基板

スピーカー(左)。ヘッドホンのドライバに当たる音を鳴らすためのモーターも1つのスピーカーに2基搭載している(右)

ファンレス・スペースクリーニング技術のスライド(左)。基板を覆う大きなヒートシンクの実物(右)