英国の市場調査会社であるIHS Markitは11月8日(英国時間)、Appleの最新スマートフォン「iPhone X」を分解してBOM(Bill of Materials:部材コスト)を調べた結果、64GB NANDメモリ搭載モデル「A1865」では370.25ドルと見積もられることを発表した。

販売価格が999ドルから、となっているiPhone Xは、これまで最も高額だったiPhone 8 Plusの256GB版に比べても50ドル以上高い値段設定となっている。ちなみにiPhoneと競合するSamsung ElectronicsのGalaxy S8(64GB品)のBOMコストは302ドルで、販売価格は720ドル前後となっている。

(半導体部品が搭載されているプリント基板の写真を図3、4に示す。プリント基板の詳細な部品コスト分析結果の一覧表をこの記事の最後に添付)

図1 iPnone X 外観 (提供:IHS Markit)

図2 iPhone Xの分解写真。有機ELディスプレイ(最上部)から裏面筐体(最下部)とその間に詰め込まれているプリント基板や部品群 (提供:IHS Markit)

図3 Appleが設計しTSMCが製造したA11プロセッサと周辺回路が搭載されたメインボードの表面 (提供:IHS Markit)

図4 Appleが設計しTSMCが製造したA11プロセッサと周辺回路が搭載されたメインボードの裏面 (提供:IHS Markit)

図5 RFおよび周辺回路基板。Qualcommの文字が3個の大型LSIパッケージ上に見え、RFモジュールはQualcommに強く依存していることがうかがえる。今年、Appleは同社と特許侵害やライセンス料支払いに関して裁判を起こしており、Appleは2018年以降、Qualcommチップの搭載をやめるという噂も出ている (提供:IHS Markit)

ベゼルレス有機ELパネルとTrueDepthが差別化要因

図6 IHSのコスト・ベンチマーキング担当シニアディレクターであるAndrew Rassweiler氏(提供:IHS Markit)

IHS Markitでコスト・ベンチマーク担当のシニアディレクターを務めるAndrew Rassweiler(アンドリュー・ラスワイラー氏)は「iPhone Xは史上最高額のiPhone機種であり、他社の主要モデルと比較しても小売価格が最も高い。スマートフォン業界にまったく新しい価格帯をもたらしたと言える」と述べている。

また、同氏は「iPhone Xは2007年のiPhoneデビュー以来、最も大きく進化したデザインを示しているが、その根底にあるアーキテクチャはiPhone 8 Plusに類似したものだ。両モデルのプラットフォーム部品は共通だが、iPhone Xは、より高性能な有機EL画面とTrueDepthセンシング機能を搭載しており、コストの高さにもつながっている」とも解説している。

iPhone XはApple創業者Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏による2007年の最初のiPhone発売から10周年を記念するとともに、次世代のiPhoneデザインを示すものとなっている。iPhone Xは価格戦略もユニークで、そのスタート価格はこれまで最も高額だったiPhone 8 Plusとも明らかな開きがある。

図7 IHSのモバイルデバイス/ネットワーク担当主席アナリストであるWayne Lam氏 (提供:IHS Markit)

IHS Markitでモバイルデバイス/ネットワーク担当の主席アナリストを務めるWayne Lam(ウェイン・ラム)氏は「Appleは通常、さまざまなモデルの間で差を付ける価格戦略を採用しており、画面の大小やストレージの容量などをもとに消費者が妥協点を見いだせるようにしている。しかしiPhone XではAppleはかなり野心的な価格を設定しており、スマートフォンのなかでも最高級クラスのプレミアム製品であることを示す意図があるようだ」と述べている。

また同氏は、「BOMコストと販売価格から判断して、AppleはiPhone Xでもこれまで同様のハードウェアの利益率を維持しようとしているように見える。今後、習熟曲線に乗って製造の歩留まりが向上すれば、この利益率はさらに上昇していく可能性がある」との見方を示す。