――今回の映画で特に注目すべきポイントは、Skan Srisuwanさんによるシルバー仮面、レッドバロンのリニューアルデザインだと思われます。岡部さんからはどのようなアイデアを出されましたか。

まずシルバー仮面は「シルバースーツ」という強化服に設定変更し、初期型のR1、改良型のR2へと劇中でバージョンアップさせようと考えました。R1はリブートということを意識してシルバー仮面の要素を残し、生身の口元が見えるようになっています。R1は未完成ということで悲壮感を出したいと思い、包帯を巻いているようなデザインになったんです。強化型であるR2はフルフェイスマスクで、シルバー仮面の面影がぜんぜんないようなデザインですけれど、ボディに入っている赤いラインはどことなく『シルバー仮面ジャイアント』のイメージも入っていますね(笑)。

――シルバースーツが動く際の鈍い「動作音」が非常に印象的でした。

シルバーの動作をはじめとする「効果音」は特にこだわって、アメリカのスタジオで録音する際にもかなり侃々諤々と意見を出しました。自分自身が映画を観ていて「ここおかしいんじゃないの」みたいに疑問を抱きそうなところはちゃんと直しておきたい、という感覚で作っていましたね。

――レッドバロンは昔のイメージが残っているのは頭部だけで、全体のプロポーションを含めて大胆なアレンジが施されました。

レッドバロンは周囲にビルなどを置かなくても、単体の画だけで"巨大"に見えるようにしたかったんです。だから頭が小さく、手足のパーツが大きいんです。Skanに言ったのは、レッドバロンの外装は最低限に留めて、中のギミックが見えるようにしよう。積層しているパーツの駆動するところが見えるというのを売りにしよう、ってことです。

――シルバーR1、R2やレッドバロンは、フィギュア商品化しても見栄えがするように……といった考えはありましたか。

逆に、玩具にしようという発想は一切なしでやっていました。現在の特撮キャラクター作品は玩具展開と切っても切れない関係にあるのが現状ですが、今回はまず映像ありきで作品作りをやろうという考えでしたね。

――クライマックスでレッドバロンとブラックバロンが決戦する銀座のシーンをはじめ、本作ではCGによる緻密な映像表現が際立っていました。メイキング映像を拝見しますと、シルバー(R2)が敵基地を駆けまわる場面では、グリーンバックにベルトコンベアーを置いて合成素材を作るなど「このシーンはこんな風にして撮っていたのか!」という新鮮な驚きがありました。

銀座の決戦シーンでは、もうちょっと予算があれば足元をもっと映したかったですね。足元を映すとお金がかかるんです。ベルトコンベアーのカットにしても、こういう機材があるから何か作ろうってことじゃなく、まず「こういう画を撮りたい」と発想し、そこから「どんな技術をチョイスするか」が大事なんです。とにかくCGでやらなきゃ……みたいに、道具の選択から入るのはよくない。キルギス星人なんて全身が造形物ですからね。実物ならではの気持ち悪さというものもありますから。

――音楽については、どういったところにこだわりましたか。

音楽のMike Vertaは、『ウルトラ銀河伝説』でも素晴らしい仕事をしてくれました。優れた音楽があると、情緒的なシーンの効果も倍増できるでしょう。今回の映画では編集の段階から音楽が入ることを意識して、音を入れやすいような場面作りに努めました。テレビだとスケジュールの問題もあって、音楽と映像の制作が同時進行だったりするのですが、今回はそうではなく、まず映像のほうを作り上げて、その情景に合わせて音楽を入れてもらうという、映画音楽のあるべき形でやりたかったんです。

――『シルバー仮面』『レッドバロン』というビッグタイトルを用いる関係で、どうしてもオリジナル作品をよく知る特撮マニアに響きそうな映画になると思いますが、岡部さんとしては『ブレイブストーム』をどのような層に観てもらいたいか、あるいは狙うべきターゲットなどは想定されていますか?

同じヒーローものでもアメリカの『アベンジャーズ』とかは観るのに、日本の特撮ヒーローは観ないって大人の層がいますよね。そういう人たちにこそ観ていただきたい映画になっているんじゃないかと思います。かつて『シルバー仮面』『レッドバロン』を観ていた人も大事ですけど、特撮から離れてしまった年頃の人たちにも楽しんでいただけたらうれしいですね。おかげさまで試写をご覧になった方からの評判も上々で、今まで我々のやってきたことが報われる思いです。とにかく観終わって「ああ面白かった」と誰もが思える映画ですので、ぜひ多くの方々に劇場へ足を運んでいただけたらと願っています。

映画『ブレイブストーム』は11月10日より全国劇場にてロードショー公開。

秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載

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